新しい日常その2
やっぱり朝は、嘉琳と同じ電車に乗ってしまう。おあつらえ向きに、私の前には誰も立たない。
「今日は身体測定らしいね。いやー、身長伸びてるといいんだけどー」
「あっそっかー。だからジャージ持ってけって、親がうるさかったのか」
「本当に、なーんにも考えてないんだな……。何がそんなに、その天才的な脳漿を圧迫していると言うのさ」
「いーすーかー?」
「ほー、そいつか、そうかそうか」
昨晩の夢があまりにも濃厚だったので、つい口走っていた。語るに落ちるとはこういうことかとも思ったが、隠していたことでもないか。
「まあまあ、私は恩情クリスタルみたいなところあるし、そんなに深刻な顔しないで……って言わせろよ!なんで表情どころか、姿勢も変えないんだよ。まずそんな横に寄りかからないで、背筋を伸ばし、それから目をキラッキラに輝かせろ!」
「一体私にどうなってほしいの……」
「え?そりゃあ、まあ、元気になってほしいよ。その、だって、黄色いちょうちょを、ひとんちの畑に入ってまで追いかけたり、そういう姿だってあったはずでしょ」
「何歳の頃の話よ、それ。待って、そんな時期、あるわけないよ!?」
「え?黄色いちょうちょは貴重だから、追いかけたくなるものじゃーん」
「そうかな」
「だってキチョウだからな!はっはっは!」
まだあと二駅あるけど降りようかな……。