表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
思い立ったが淡雪  作者: Ehrenfest Chan
第4話:天衣無縫サマー
67/212

くるくるー

 私は自分が軽音楽部なんだぞ、ということを周囲に知らしめながら嘉琳を探した。今朝は海面を10 cm上昇させられるぐらい泣きたいことに、孤独に登校させられたから、カーディガンを返せなかったのだ。早歩きで廊下を歩いていると、割とすぐに見つかった。


「はい、ゆきから託されたので」

「まっまさか、私が……」

「それにしても全く、最近の若いもんは、日本語の使い方がなってない。敷居が高いの敷居はハードルとは別物だし、確信犯は正義を信じる犯人って意味だし、敬意は空回りするし、IT用語は外来語とアルファベットスープだし。はーあ、何より老婆心に、耳を傾けようともしない。これじゃあ、私たちが大人になる頃には、日本が滅んで当然さぁー」

「えっ、そこまで来て、年齢据え置きなのかよ」


 どうせ「体育の時間に私の服を、ひっそりこっそりどっさりかっさらったんじゃないでしょうね!」とか言うんだろうと思って、きちんと用意しておいた。やはりこの名君たるわたくし時雨、三国志の世界に転生しても生きていける気がする。


「でも私は不安だよ?道中、我慢できなくなって、鼻水とよだれを垂らしながら、鼻をこすりつけてるんじゃないかーって」

「本気でそう思ってるの?」


 嘉琳はカーディガンに軽く鼻をうずめた。


「こんなにいいにおいがするし、二倍増しでふわふわだし、そりゃあ、そういう欲に負けても、 “時雨なら” おかしくないなーって」

「ずっとリュックに入れてたから、わざわざ取り出すほどかと言われたら……」

「ふふーん、莞日夏ちゃんとか吸ってそうなのにねぇ」


 嘉琳は自力でボスの攻略法がわかった時の顔をしている。私は嘉琳の周りを回りまわった。


「まっさかぁー、そーんなわけないでしょーっ」

「何となく、そういう愛情表現をしてそうだと思ったんだけど……。というか、後ろにカブトムシ背負ってるの、わかっててやってる!?」

「カブトムシじゃないーっ!」

「じゃあ何だ、スレッジハンマーか?」

「私のスラップベースに震えて踊れ!いいな!」


 これ以上、見知らぬ人に障害物扱いされるのも申し訳ないので、さっさとこれだけ言い放って部活に向かうことにした。


「あっそうだ、部活終わったら、校舎の入口のところで待っててよ」

「また辛気臭い話でもするのー?もう散々だよー」

「いや、何か食べて帰らない?私、やっぱりそういうのに憧憬があって」

「何か今更じゃね」

「目的がないのがいいんじゃーん。待ってなかったら、絶交だからね」

「おっっっっも、マジか……」


 いくら傍若無人な私でも、友達を一人失うのは惜しいと学んだので、適当に爪弾いたら校門の前で嘉琳を待ってあげた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ