第2話.とりあえず、妹の配信に参加
心遥が配信を切り忘れた、次の日の夜。
心遥は、1つを除いていつもと同じように配信の準備を進めていた。
いつもと違うこと、それはもちろん部屋の中に俺もいることだ。
いつもなら、心遥が配信してる時は課題等を進めているのだが、今日俺は配信に出ることになってる。
昨日の配信切り忘れ。妹はほんの少し人気があるので登録者が数千人いるとはいえ、本来ならここまで話題にはならなかっただろう。
ネットが荒れてるのは、心遥に対して「配信やめろ」とかが多いからではなく、「兄様の歌声ヤバくない!?」的なもので溢れているからだ。
つまり、この勢いを止めるには俺が配信に参加するしか無いってわけだ。
めんどくさすぎr……コホン。
「ん、お兄ちゃ〜ん! 準備できたよ〜!」
心遥は、いつも以上に嬉しそうにしている。
どうやら、いつか俺と一緒に配信してみたかったらしい。可愛いかよ。
「いい、お兄ちゃん? 配信始まったらわたしのことは、こはって呼ぶんだよ?」
「はいはい、もう10回目くらいだけどわかったよ」
「うんっ! ならおっけー!」
配信待機人数は心遥のチャンネル登録者数の10倍近い人が集まっていた。
心遥もそれを横目に確認しながら、配信を開始した。
「みんな〜! こんこん! こはだよ〜! わっ、すごい人数集まってるね……。なんで?」
:きちゃ!
:こんこん!
:こんこん!
:初見です
:こんこん!
:初見です
:初見! こんこん!
:なんで?じゃないんだよなぁ
:こんなにも嘘ってわかるなんで?は初めて
:そのなんで?も可愛いんだよな
:どうせ兄様も既にそこにいるんだろう?
「あはは、バレてたか〜! ということで、本日のスペシャルゲストだっ! じゃじゃん!」
「……はい、兄です」
「ちょっと〜! ちゃんとしてよね、お兄ちゃん!」
:じゃじゃん、かわよ
:じゃじゃん助かる
:効果音言うだけで可愛い
:こんなにもめんどくさいってわかる挨拶は初めて
:あからさますぎるだろw
:それでもやっぱイケボだわ
:こはのお兄ちゃん……ふぅ
:お兄ちゃん呼び助かる
:カワボとイケボの兄妹って最強じゃん
切り忘れ後の配信で、こんなに好意的なコメントしかないことある?
:そういえば、兄様のイケボの歌も最高でしたけど、もしかしてこはちゃんも歌上手なんですか?
「……最高って言われても、ただの鼻歌なんだけどな。逆になんであれで話題になってるか、こっちが聞きたいレベルなんだわ」
「歌〜? 上手か分からないけど一応歌ってみようか?」
そう言って、心遥は今流行りの歌の音源を見つけて歌ってみせる。
:は? かわいすぎるんだが?
:なんでそんな喧嘩腰なんだよw
:それはそうと、高音でうまいなぁ
:即興で兄妹デュエットっていけますか?
「あ〜、どうだろう? こは、いけるか?」
「お兄ちゃんとならいけるんじゃない?」
「じゃ、ためしにやってみるか」
:ワクワク
:高音カワボと低音イケボで兄妹デュエットとか最高に決まってるんだよなぁ
:これは切り忘れ関係なしでまた騒がれる予感……
「「♪〜〜──」」
:あ〜、良くないです
:混ぜたら(俺らの耳が)危険
:ぐふぅ…
:1名尊死
:こんなん聞かされたら尊死も納得
お読みいただきありがとうございます!
よければ感想と評価、ブクマをしてくれると嬉しいです!