第1話.妹が配信を切り忘れた
はじめましての方は、はじめまして! 他作品からの人はどうも!
新作小説です!
これからゆっくりと投稿していきますので、よければブクマをしてくれると嬉しいです!
それではどうぞ!
『──今日もわたしの配信を見てくれてありがとね! ばいば〜い!』
俺の妹である【心遥】が、配信を終わるときにいう挨拶が聞こえたのを確認してから、声をかける。
「終わったか〜? 晩ごはんの準備できてるぞ〜」
「うん! すぐ行く!」
その声が聞こえたころには既に扉を開けており、「ありがと〜!」といいながら小走りでこっちに来る。
「ごめんな。今日はいつもより長めだったから、ご飯とお風呂は先に済ませちゃったよ。だからって急いで食べたりはしなくていいからな?」
「も〜、お兄ちゃんはわたしのこと好きすぎるよ〜! でもありがとっ!」
そう言って、満面の笑みを見せる。国宝の登録ってどうやるんだろうな。
1ヶ月前から高2になった俺──【川瀬蓮】は中3の妹と1LDKのマンションで二人暮らしをしている。自室なんてない、二人部屋だ。
いくら家族でも中学生の異性と同居するのはどうなんだ、と思う人もいるかもしれない。
いや、マジでそれな。
俺も親から言われた時は同じ反応をしたんだけど、心遥は「わたしは全然いいよ?」の一点張りだったので、こうして暮らしている。
1年前から一緒に暮らしてるんだが、1ヶ月くらい前から妹が声出しだけのゲーム配信をMyTubeで始めた。
部屋が1つしか無いので、そこが寝室兼配信部屋ってことになるんだが、妹の趣味を潰したくはないのでもちろん即答で許可を出した。
ただ、兄として受験生にそんなことするなって言えと思う人もいるだろう。
それがなんとびっくり、今まで心遥が勉強してるところなんて見たことないのに、5教科平均は490点、9教科だと平均880点という超がつくほど天才なので、その心配もなし。
そこに、容姿端麗という属性もついているので、クラスメイトと普通の友達関係ってのができないらしい。だからこそ、家では自由にさせてあげたいのだ。
ゲームが好きなのに、学校でそんな話はできないなんて可哀想すぎるしな。
食器を洗いながらそんなことに思い耽っていると。
「お兄ちゃ〜ん! ごちそうさま〜! 今日も美味しかったよ〜!」
「ん、お粗末様でした。んじゃ、お風呂いってきな〜」
「は〜い!」
うん、やっぱ天使だわ。
心遥がお風呂に行ってまもなく、俺は食器類を洗い終える。
心遥はたいてい長風呂だし、今日はいつもより配信が終わるのが遅かったこともあって、夜のルーティーンはもう終わってしまった。
……どうせだし、部屋の片付けでもしておくか。
俺はワイヤレスイヤホンをスマホと接続して、音楽を流しながら片付けを始める。
といっても、別に汚いわけでもないからそんなにすることもないんだけどな。
途中、今流行りの音楽が流れたときは心遥に聞こえないだろうとは思いつつも、小さめな声で歌ったりしながら妹が戻ってくるのを待っていた。
そういえば、最近の配信用のマイクってこのくらいの声でも普通に拾ってくれるらしいな。技術の進歩ってすげー。
そんなことを考えていると、足音が聞こえてきた。
「ん、おかえり」
「ただいまぁ! わっ! お兄ちゃん部屋の片付けしてくれたの? ありがと〜! 好き!」
はい、うちの妹可愛すぎます。
「もともとそんなに散らかってたわけでもないだろ」
「まぁね〜。でもありがとっ!」
「ん、どういたしまして」
そう言いながら、俺は部屋を出ていく。
「あれ、お兄ちゃんまだ寝ないの?」
「うん、来週提出の課題、ちょっとだけしておこうかなって」
「は〜い。わたしはかたったーとかRINE見たりしたらもう寝ると思うから〜」
「りょ〜かい。おやすみ」
「おやすみっ!」
そう言ってにっこりとする心遥は、やっぱり国宝級に可愛い。
☆
部屋を出たあと、さっきと同じように音楽を流しながら順調に課題を進めてる。
──まさに、その時だった。
突然部屋の中からガタッ、と椅子が倒れるような音が聞こえたかと思うと、少しのタイピングのあとにいつもよりかなり慌てた様子で部屋から出てきた。
「ど、どうした? めっちゃ慌ててるけど……」
「はぁはぁ……やらかし……ちゃった……」
「一回落ち着いてな……何があったか俺にゆっくりでいいから話してみ」
何があったかはわからないが、一旦心遥を落ち着かせるのが優先。
「はぁはぁ……ん、もう大丈夫……ではないけど。えっとね……落ち着いて聞いてね……?」
「あ、俺が落ち着いて聞いたほうがいいやつ?」
「配信……切り忘れてた……」
「……え?」
配信切り忘れ。配信者が1番恐れていることである。
身バレに直結することなので、心遥もいつもは細心の注意を払っている。
ただ今日は以前はしたことのなかった少しだけ長時間配信。心遥も意識が薄くなっていたのかもしれない。
「……俺たち、本名言ったりしたか……?」
「い、いや。ネットの反応的に言ってないと思う……」
それなら一安心だ。
リビングでの会話はさすがに距離があるから大丈夫だしな。
今回はそこまで被害がなかったか……。
「次からはもっと注意していかな……ん? どうした?」
「いや、その……本名はバレてないんだけど……」
そう言いながら、俺に見せてきたのはネットの掲示板。
そこに書いてあったのは。
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今日のこは(※心遥のネットでの名前)の配信切り忘れについて
176:名無しのこは隊(※こはのリスナーの総称)
悲報、こはは兄と同居
177:名無しのこは隊
いや〜、悲報は悲報なんだけど……
178:名無しのこは隊
こはのお兄ちゃん呼び可愛すぎない?
179:名無しのこは隊
>>178
いや、それな
180:名無しのこは隊
>>178
マジでそれ!
181:名無しのこは隊
おいおい、お前ら。兄様のことを忘れてないか?
182:名無しのこは隊
>>181
忘れるわけないじゃない! ひとりごとだからいくら小声といっても、あのかっこよすぎる歌声……!
兄様にもぜひとも配信者になってほしいものです!
183:名無しのこは隊
>>182
案外すぐにしてくれるかもな
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え〜っと……。
「なんか好意的な意見多くね?」
「ということで、お兄ちゃん!」
……嫌な予感がする。
「一応聞くわ。何だい、妹よ?」
「お兄ちゃん、配信者デビューだっ!」
そうなりますよねえええぇぇぇぇぇ!!!
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