表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/42

5:聖獣様の親

「ぐぅぐぁ!」

ソラは怒ると「ぐぁ」と鳴く。




「まったく…、またですか…」

す、すいません…。

ってこれ俺が悪いのか?

ソラが悪いことすると、責任は全部俺な訳?

これが親というものなのか…。

親ってすごいな。


聖研にいる限り、ソラは研究材料だ。

仕方がないと分かっているだけに、とても心苦しい。

ソラは研究を嫌がる。

前のあの脱走も、どうやら研究の時だったらしいし。

研究には俺も立ち合っているので脱走こそないものの、ソラは実験室ではジタバタしっ放しだ。

これでもか、というぐらいに暴れ回る。

幸か不幸か、この時初めてソラが飛ぶ姿を見た。


研究事態はなんてことはない。

聖獣の知能を測るものだったり、食の好き嫌いだったり。

少し「これは…」ていうので採血ぐらいかな。


やっぱり子供なんだろうな。

外駆け回ったりしたいのかも。

やんちゃな盛りなはずなのに、遊ぶこともできないなんてあんまりだよな。

聖獣でもなんでも、遊びたいものは遊びたいんだよな。


そして俺は直談判した。

「千年に一度の聖獣様ですぞ!!」

…同じことの繰り返しだよ、これじゃぁ…。

俺が聖研に来たから「おじいちゃんの寿命が縮まった」とか言われたらどうしよう?

また怒鳴られてるよ、俺。

「あなたは何回同じことを言わせるのですか!これじゃ馬鹿の一つ覚えですよ!」

ば、馬鹿の一つ覚えって…。

そんなつもり全然ないんだけど…。

つか俺の意見って、親なくせに案外通らないよね。

だって聖研の奴らって俺のこと全否定だもん。

もうなんなんだ。

俺ってなんなんだ。

俺にだって立派な感情というものがあるんですが。

そこんとこ、聖研の輩は気付いてるんだろうか?

……たぶん気付いてないような…。

あー…。

これって無性に虚しい気がする。


「このままじゃソラにストレス蓄まっちゃって、暴走起こすかもしれません」

こうでも言わなきゃ、俺の話なんて聞いてもらえない。

聖獣にストレスがあるのかなんて知らない。

暴走するかなんて予知能力なんてないんだから分からない。

でもこのままじゃソラがあまりにもかわいそう。

遊ぶ楽しさを知らないままなんてあんまりだ。

親として。

いや、感情があるものとして言う。

「あなたたちはソラをなんだと思ってるんですか?」

おじいちゃんは目を見開いて俺を見つめていた。





「いやぁ、すげぇ。あの研究長を説得するなんて…」

カスティーダは関心するように言いながら空を見上げた。

俺も同じように空を見上げる。


そう。

これが俺が見たかった光景。

俺が思う、ソラの本来あるべき姿。

「青い空に黒い体はよく映えるねぇ…」

しみじみそう思う。

随分と上の方を飛んでいるソラは、遠くで「ぐぅぐぅ」鳴いている。

やっぱり気持ちいいんだ。


「ケリア、お前意外と凄い奴だな」

「…それ褒めてる?」

「さぁな」

はっはっはー。

って笑うとこじゃないよ、カスティーダ。


さて、そろそろ呼び戻さないと。

「ソラー!戻っておいでー!」

これから、ソラはどうなるんだろう?

研究に研究を重ねて、いつかめちゃくちゃでかくなって。

いつか親離れとかマジであるのかな?

研究って終わるのかな?



ソラがずっと研究材料のままだったらどうしよう?


俺は、どうする…?



「ねぇ、カスティーダ」

「あ?」

ソラは俺の胸に飛び込んできた。

ちょっと咳き込んだのは、ソラの勢いが相変わらず強いからだ。

この強さも追々教えていくとしよう。


「もしもの話、だけど…」

「俺、もしも話嫌いなんだ」

う?えっ!?

俺今めっさシリアスな気分で言おうとしてたんだけど…?

それも一蹴されちゃう?

俺の話っていつまでたっても聞いてもらえないの?

誰にも?

………泣きそう。

俺が女だったら確実に泣いてるよ?


「まぁ、聞いてやらんこともない」

「なんで上から…?」

俺の立場ってなんなの?

カスティーダの中の俺の立場ってどんだけ低いの?

なんか、もう…。

心折れそう…。


「もしも、もしもだけど…」

「早く言えよ」

あ、はい、すいません。

なんかもうごめんなさい。

俺が俺でごめんなさい。

「もしもこのままソラの研究が終わらなかったら…」

「………」

「俺……」

「………」


「………」

「………」


「………」

「……早く言えよっ!」


パッコーン!

聖研に来て殴られたのは本日二度目まして。


「もしもこのままソラの研究が終わらなかったら、俺、ソラ連れてここ出るかもしれない」


カスティーダはあまり反応を示さなかった。

「ふーん」みたいな、「それで?」みたいな、そんな軽ーい反応。

俺に興味がないのかも。

でも聖研にいるぐらいだから、聖獣には興味あると思うんだけど…。


「なんか、反応薄くない?」

カスティーダはポリポリと後頭部を掻いた。

なんでいきなりそんなお決まりの仕草…?

「なんつーか、したら俺も着いてこーかなって」

「えっ?」

なんかよく分かんないけど、それってそんな軽く言うことじゃないような…。

だってソラを連れてここを出るってことは、聖研を敵に回すってことも同義語だと思うんだけど。

それをカスティーダも加担するって?

なんのメリットがあって?


「まぁ、そうならないことを祈っとくわ」

カスティーダは手をヒラヒラさせてこの場を去った。

あれかな。

俺のこと気に入ってくれてるんだと思う。

嬉しいような、複雑なような…。

「どうする?ソラ」

「ぐぅ?」

って、聞いたって分かんないか。


あれっ?なんか真面目?

けど主人公のせいで真面目になりきってないような…。

なんなんだ?

なんなんだ!?


最後まで読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ