34:聖獣様の居場所
「ねぇケリア」
「うん?」
走っているのになんで息切れ一つもしていないんだ、ピーナよ。
やっぱり無表情。
こんな状況で走ってるのに無表情。
「いろいろあったわよね」
「うん」
「でももうすぐ終わるわよね」
「うん」
「全部終わったら」
「うん」
「私と結婚するわよ」
「うん」
………。
うん?
「はぁあ!?!?」
すぐに歩いてる場合じゃないということに気付いて、俺たちは走り始めた。
歩いていると聖獣たちの標的にされやすいのだ。
しかし走っていても何してもそこは戦場で、拳銃を片手に持っていなければ走ることさえままならない状態である。
その中でもやっぱり躊躇なしに撃ちまくってるのはピーナだけで、意外とカスティーダは拳銃を使っていなかった。
まぁ、考えてみればそれは当然のことで。
聖研の人間が躊躇なしに聖獣を撃ちまくれるのって、そんなことあるわけないんだ。
それなのにここに拳銃を持ってきて、俺たちに渡して「撃て」と言ったカスティーダの気持ちは、いったいどんなものなんだろう?
気になったけど、すぐに考えるのをやめた。
考えてももう引き返せないところまで来てしまったのだから。
引き返すつもりもないんだけど。
「早く行こう」
少しでも早く、全部終わらせよう。
みんなで終わろう。
「お前がもう少し速く走ればすぐにたどり着くんだけどな」「………」
持久走って苦手なんだよね。
根性とかの前に体力そんなにないから。
つうかお前のために言ってやったのに皮肉たっぷりに言いやがって…。
それよりカスティーダとピーナのその超人的体力はどこから来る訳!?
クリストファーの部屋まであともう少しというところで、窓から聖獣が前に立ちはだかった。
廊下をずっと突っ切って走っていて、窓という窓からは全てシュバート一家の男たちが張り付いていたので、その窓にいた人たちを薙ぎ倒しての侵入だったらしい。
「で、でか…!」
たぶんソラと同じぐらいの大きさだと思う。
ただソラは狼っぽいけど、これは…、鳥…?
くちばしで突かれでもしたら痛いだろうなぁ…。
「ケリア行け!この聖獣は俺がなんとかする!」
といきなりカスティーダがそう叫んで俺の前に立った。
もちろんそのカスティーダの手にも拳銃は握られている。
「な、何言ってんだよ!1人で勝てる相手じゃないだろ!」
「約束したのをもう忘れたのか!?」
約束?
約束ってソラを見つけたら全力疾走しろっていう、あれのこと?
「まだソラを見つけてなんか…」
「お前がソラを止めればこれは治まる!早く行け!」
ソラを止めれば治まるってなんだよ!
そんなの初めて聞いたけど!?
しかし鳥の聖獣はそんな俺たちを待ってはくれなくて、グルルル唸っていたと思ったら、白い鋭いくちばしを俺たちに振り下ろしてきた。
なんとかよろけながらも避けると、なぜか身軽なピーナが鳥の聖獣に2発弾を撃ちこんだ。
しかしその2発とも腹に命中したにも関わらず、ぴっと赤い血が少し噴き出しただけで、鳥の聖獣は倒れる素振りさえ見せない。
「即効性の睡眠薬じゃなかったのかよ!」
「デカイから生半可じゃ足りないんだ!分かったらさっさと行け!」
カスティーダがイラついたように俺に向かって叫ぶ。
そのカスティーダに俺はイラついた。
格好つけてんじゃねぇよ!
言いたかったけど、ピーナに後ろ襟を掴まれて首がしまったため言えなかった。
「残らしてやるのが優しさよ、ケリア」
「ぐえっ…ごほっ!優しさって…、何が!」
「聖研の人間としての誇りを守らせてやりなさい」
その時のピーナの言葉はよく分からなかったけど、後々理解はできた。
カスティーダの拳銃の弾は睡眠薬、シュバート一家は普通の弾で、殺傷力は抜群な訳だ。
一匹でも助けたかったんだろう、こんな状況であったとしても。
それが聖研の人間としての誇り。
「追い付けよ、カスティーダ!」
「ケリアはのろいからすぐに追い付くっての!」
減らず口のなくならない奴だな…。
これで最後なんていやだからね。
ピーナは俺の襟から手を離し、「行くわよ」と言って俺を促した。
カスティーダの言葉を信じるならば、早くソラを止めなければならないらしい。
そうならそうと言えよっての、水臭い。
俺へのプレッシャーを少しでも減らそうとでも思ったのかもしれない。
その時だった。
全体に響き渡るような聖獣の鳴き声がしたのは。
もしかしなくてもその発信源がなんなのか分かってしまうのは、俺が親だからなのかもしれない。
俺が聞いたことがあるのは「ぐぅ」とか「ぐぁ」だったのに、今の鳴き声は一度も聞いたことがなかったが、その鳴き声はソラだということに確信を持っていた。
何があったのかとか、どうしたんだろうとか思う前に俺の体は動いていた。
鳴き声はクリストファーの部屋からだ。
あぁ!
なんでこうも上手くいかないかな!
これでソラとクリストファーが戦ってたらどうするんだよ!
考えたら背中がゾッとして、更に足は速まった。
ソラがどんな鳴き声だったのか、そこはご想像におまかせします。
しかしきっと良い鳴き声ではなかったのでしょう。
やっと次はソラ&クリストファーの登場です!
最後まで読んでいただきありがとうございました。