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33:聖獣様を奪還せよ‐2

「ソラに会いたいか?」

カスティーダの問い掛けに俺は頷いた。

「暴走してても会いたい?」

ピーナの問い掛けに俺は頷いた。

それだけで2人は俺のために、ソラのために決心してくれた。

本当は止めるべきなのかもしれない。

危険な道を歩ませようとしているよね、拳銃がふところから出てくるぐらいには。

でも俺は止めなかった。

自分のために、ソラのために、2人のために。





想像通りの光景であるのに、俺は一度腰を抜かしそうになった。

上から下から聖獣たちの攻撃、その反撃として屋上から窓から地面からひっきりなしの拳銃音。

でも形勢は一目で分かるぐらい、シュバート一家の劣勢だった。

本家は半壊している。

燃え上がっている。

戦争って、こんなに血生臭いものなのか…?

森のような木々の生い茂る林を抜けた瞬間から、あちこちに人が地面に転がっていた。

当たり前にそれはシュバート一家の男たちだ。

一番近くで仰向けに倒れている男は腹からも腕からも足からも血を流していた。

あれは誰だろう…?

「カーン!?」

俺は駆け寄り、カーンの傍で身を屈めた。

全身血だらけで、どこに触れていいか分からない。

「カーン!カーン起きて!」

ぴくりとも動かないし、たぶんもう動くことはない。

カーンは俺と歳が近くて、それだけで仲良くなれたシュバート一家の大切な仲間。

まだまだこれからだろ?

なんで、こんな…!

「お前、ケリアか…?」

声の方に顔を上げると、ライフルを手にしたシュバート一家の男がいた。

俺やカーンよりも少し歳上の古株、確か名は…。

「タスラ…」

俺がタスラの名を呼ぶなり、タスラはずいずいと俺に近付き、次の瞬間には胸ぐらを捕まれていた。

カスティーダぐらいに体格がいいタスラ。

苦しいに決まっている。

「裏切りやがって!」

えっ?

タスラの顔は真剣で、俺に真っ直ぐに憎しみのこもったものをぶつけた。

でも俺は裏切ったりしていない。

そんなことできるわけない!

そう叫びたかったが、苦しかったのとタスラの激しさで言うことはできなかった。

そのせいでか、タスラの怒りはどんどん増しているように見えた。

「ずっと俺たちを騙してたのかテメェ!それとも俺たちシュバート一家を潰すための回し者だったって訳か!?」

ま、回し者?

違う違うと俺が必死に首を振っていると、カスティーダが俺とタスラの間に割って入った。

しかしタスラは俺の胸ぐらから手を離さなかった。

「ケリアはあんたたちのこと仲間と思ってここまで来たんだ!裏切りでも回し者でもない!」

「部外者は黙ってろ!裏切りじゃなかったら!なんで!」

あ。

やだ。

聞きたくないかも。

どうしよう。

やだやだやだやだ。


「ソラが本家を襲わなきゃなんねぇんだ!」


ほら、いつもソラは俺の期待を裏切っていく。

一見親に従順そうなくせに、俺の懇願には応えてくれないんだね。

ねぇソラ。

お前は今、何を思って何を感じて何をしてる?

ねぇソラ。

俺の声はお前に届く?


「許さないからな!たとえボスがテメェを許したとしても、俺だけはテメェを許さねぇ!!」

カスティーダの必死の抵抗をよそに、タスラはぐわんぐわんと俺を振り回した。

俺このまま死ぬんじゃないかと、本気で思った。

しかしその時近くで銃声がして、胸ぐらを掴んでいたタスラが膝からガクンと床にひれ伏した。

俺とカスティーダが驚きと衝撃でぽかんとタスラの倒れた姿を見ていると、背中から少しだけ出血しているのが分かった。

「ちんたらしてんじゃないわよ。先を急ぐわよ」

その呆れた声はピーナのもので、ピーナの右手には先にカスティーダからもらった小型の拳銃が握られている。

しかも今まさに使いましたと言わんばかりに構えられた状態で。

「ってえぇ!?撃ったの!?」

「撃ったわ」

「人に向けるなって言ったそばから人に撃つな!」

「どうせ殺傷力はないんでしょ。それに、ケリアの道を阻むやつは聖獣だろうが人だろうが関係ないの」

躊躇ないな、ほんと!

でどこまでも冷静か!

つうかピーナかっこいいよ!!

全部いいとこどりしてる…。

「行くわよ。そいつの誤解、解くために来てるんだから」

そうしてやはり躊躇なしに本家へと歩き出したピーナ。

心の中でピーナにありがとうと呟いておいた。

口に出したらキリがないと思ったから、あえて心の中で。


タスラの体をまたいで、俺たち3人は更に本家へと近付いた。

近付けば近付くほど熱気がすごくて、俺は自然と拳銃を右手に掴んでいた。

使えないとか言ってる場合じゃないというのを体で感じた。

「どこに向かう?」

カスティーダが本家から目を離さずに俺に言った。

ソラがどこにいるのか、手掛かりはこのどこかにいるということだけ。

一番手っ取り早いのは…。

そう考えてまず頭に浮かぶのはある人物。

そいつの私室なら知ってる。

そこにいるかは分からないが、大抵はそこにいるのだ。

作戦をたてる時、「1人で集中したいからねぇ」と言っていた。

だから私室にいる可能性は高いはずだ。

「一家の家長、クリストファーの私室を目指す」

本心を言えば、少しだけ心配っていうのもある訳だけど。

2人には言わなくてもいいよね。

まぁ、たぶんクリストファーなら大丈夫だろう。


やっと次は本家に入れますね。

長いですね、ソラに会うまでのくだりが…。

頑張りますので暖かい目でお願いします。

次こそはソラ登場か!?


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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