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3:聖獣様の名前

「………」

「………」

「……説明してください」

今回は珍しく俺が優位です。




仕方がないので聖獣を連れて聖研に来た。

ここまで小一時間掛かるのだから面倒極まりない。

しかしこのままにしておくのもどうかと思うのだ。


この前と同様、聖研のおじいちゃんが俺の向かいに座っている。

おじいちゃんはおもむろに深い深ーいため息を落とした。

ってえぇ!?

おじいちゃんがため息すんの!?

なんで俺じゃなくてアンタがすんだ!?

逆だろ逆!


「いやぁ。やっぱ親って大切ですねぇ」

「はい?」

なんだかその裏に隠れてる意味がよく分かるんだけど。

分かりたくないけどよく分かる。

「聖獣でもなんでも親が側にいるべきなんですよねぇ」

なんちゅう今更な…。

聖研って頭いい人の集まりって聞いてたんだけど、なんだかそうでもないらしい。

なんだかなー…。

「そこでです、ケリア殿」

お?

「ようこそ国立クーパー聖獣専門研究所へ」

「………は?」

こうなると思ったんだ。

この聖獣が羽化した時から。


「名前が決まったぞ」

これは俺の指導役、もとい世話役に任命されたカスティーダ。

カスティーダは研究者なくせに体格がいい。

背高いし。

肉付きいいし。

なんか濃い顔で男らしいし。

カスティーダを見た後に鏡を見たらショック間違いなし。

だからまだそれはしていない。


そんな体格にも関わらずカスティーダは俺の世話役だ。

カスティーダが俺の世話をし、その俺は聖獣を世話する。

なんだかおかしな構図になった。


「名前って?」

「ぼっけぇかましてんじゃねぇよ。聖獣様だよ、聖獣様!膝の上ですやすや気楽に寝息たててるそいつだよ!」

「…わざわざ説明ありがとう…」

嫌味にしか聞こえない。

てか、嫌味なんだろうな。

俺に向けてなのか聖獣に向けてなのかは考えないことにするが。

しかもぼっけぇってなんだ。

これは俺が間違ってなければただの悪口だと思うけど。

まぁ…、うん。

流しておこう。


「で、その聖獣様の名前なんだけど」

うんうんうん。

「フェニアースとピースを掛けてピースアース」

………。

「あー…。その……、一言いいかな」

「あん?」

言いにくいが。

すごく言いにくいが…。

でもこの聖獣の未来を考えたら言うべきだ。

そうだろ?

「その名前…、うーんと…、どうなんだろう?」

「どうなんだろうって?なんだよ。はっきり言えよ」

うー…。

少しは察してもいいだろうに。

「分かった。はっきり言うよ」

「言えよ早く」

「……変」

「あぁ!?」

うわぁ!

そんな怖い顔するなよ!

大きい体なんだから余計に怖いって!


「お前な、変はないだろ変は!いくらなんでもはっきり言い過ぎ!俺だって名付けグループの一員なんだぞ!?」

「な、名付けグループ…?」

そんなのが設立されたのか…?

恐るべし、千年に一度の聖獣誕生。


「あぁそうさ!聖研の上位がこぞって集まってやっとこさ絞りだした完璧な名前だ。それを“変”って…」

「は、はっきり言えって言ったのはカスティーダだろっ?それならまだ俺が考えた…」

「“ソラ”か?」

うんうん。

てか絶対その方がいいって。

「ケリアの考えた奴の方がダサい」

「ださっ……!」

今のはグサッときた。

致命的だ…。

ナイスなネーミングだと思ったのは勘違いか?

それって俺痛くない?


「ぐぅ…」

あ、やっと起きた。

寝る子は育つというが、これはいくらなんでも寝すぎな気がする。

「聖獣様はピースアースの方がいいよなぁ?」

そこでカスティーダが聖獣に顔を近付けたため、たぶん驚いたのだろう。

聖獣はカスティーダを引っ掻いた。

「いってぇ!」

カスティーダの顔に3本の引っ掻き傷ができた。


狼みたいだもんなぁ、聖獣の体。

痛いだろうに。

くぷぷっ。

「笑ってんじゃねぇよ!ってて…」

そんなこと言われても簡単にはおさまらない。

「お前も“ソラ”の方がいいんだよねー」

「ぐぅぐぅ」

聖獣は嬉しそうに俺の腹に頭を擦り付けた。

なんか可愛い。

よしよし。

「俺は知らないからなっ!“ソラ”とかだっさい名前付けやがって!」

あーあー。

「負け犬の遠吠えが聞こえるー」

「黙っとけ!」

カスティーダをからかうのはなかなかに面白い。

研究者と聞けば堅いイメージだけど、それはカスティーダからは程遠い言葉だ。

これで頭がいいんだからなんだか不思議。


俺は聖獣のことを“ソラ”と呼ぶことにした。

聖獣自身もその名前が気に入っているようだし。

やはり親が子の名前を付けるのが一番うまくいく(と思う)。

しかし名付けた後に大誤算が生まれた。


知りたい?


知ったらたぶん

「マヌケ」

って言いたくなると思うよ?


それは………。



この聖獣、めちゃめちゃデカくなるらしい。

“ソラ”なんて可愛らしい名前なくせに、将来はごつごつになる。


………。


ごめん、カスティーダ。

そしてごめん、“ソラ”。

最後までありがとうございました。

ご意見ご要望お待ちしています。

あとあわよくば評価なんかも…笑

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