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27:聖獣様と思い出

久しぶり、じいちゃんばあちゃん父さん母さん。

元気してた?って、死んだ人間に元気も何もないか。

今まで来なくてごめん。

ずっと逃げてたんだ。

弱虫とか言わないでよ、特にじいちゃん。

俺だっていろいろ悩んだんだ。

悩んだけど分かんなかった。

だから考えるのをやめたんだ。

怒るかな、こんなこと言ったら。





改めてこの4つの墓を並んで見ると、やはり随分と簡素だ。

家には余裕のある生活ができるほど裕福ではなかったし、むしろいつもギリギリの生活を強いられていた。

それが別に苦じゃなかったんだよなぁ。

貧乏だったり一流貴族だったり盗賊だったり、いろいろ経験してみたけど、実は貧乏が一番性にあってると思う。

クリストファーに笑われそうだな、こんなこと言ったら。

これからどうなるんだろうなぁ。

「ソラ、これからどうしたい?」

俺的にはこのまま行方を眩ますのもアリだと思うんだけど。

「………」

「シカトかい…」

冷たい奴だ。

昔はあんなに可愛らしかったくせに。

今じゃ俺に背を向けてじっと座っている。

子供だ子供だと思っていたのに、いつの間にか心も成長を始めたソラを俺は寂しく感じていた。

聖獣になっている気がした。

1年何も変わらないのは俺だけなのかもしれない。


「そうだ。思い出巡りでもしてみるか?」

そう言ってぽんぽんとソラの横腹を叩くと、ソラは目をぱちくりさせて俺を見返した。

ここは俺が住んでいた山、いわば庭のような場所だった。

木々が生い茂る雰囲気は変わったが、そんなのは大した変化とは言えない。

俺はこの山で卵のソラを拾った。

全てはそこから始まったんだ。

「初心に帰るって、大切だろ?」

言うと、ソラは幾分か低くなった声で「ぐぅ」と鳴いた。


草木を掻き分けて、少しだけ開けた場所がある。

墓と山小屋のちょうど中間地点あたり、そこに白い卵があった。

「ソラ、ここにお前の卵があったんだ」

不思議とそこは雑草が生えていなかった。

あの時はなんとも思わなかったけど、どうしてなんだろう?

つうか、なんで卵だけで親がいなかったんだ?

卵ってことは産んだ動物か聖獣かなんか、いるはずだけど…。

そこは聖獣だから深く考えるべきじゃないのかな…。

まったく。

ソラのことを考えると謎ばっかりだ。

「ぐぅぐぅ」

「ん?どうしたソラ?」

何を思ったのか、ソラは自分が卵として置いてあった場所を掘り始めた。

土がかかるんですけど!

つうかこうやって見ると、狼よか犬っぽいよな…。

体は半端なくでかい訳だけど。

いやいや、そんなことより、なんでいきなり掘り始めるんだ?

骨でも見つけたか?

って犬じゃあるまいし…。

「なんかあるのか?」

とりあえずソラのやりたいようにやらせてみる。

帰ったらまず足拭いてやらないと、家中土だらけだな…。

どこで掘ることを覚えたのか、ソラはずんずん掘り進めていった。

ある程度掘ったところで、ソラはぴたりと動かなくなった。

深さは俺の腰ぐらい。

その時「もしかして」と思った。

どこかに世界の災厄の鍵となる洞窟がある。

それはここなんじゃないか?

始まりの場所で終わりを迎える、みたいなの結構ありそうだし…。

ここに、その洞窟が…?

俺はソラによって作られた穴をおそるおそる覗き込んだ。

「………」

うわー…。

デジャブだ…。

なんてこった…。

「卵だ……」

小さな小さな白い卵。

土に埋もれていたので土色に見えなくもないが、たぶん白だと思う。

鶏の卵ほどの大きさを、よく傷付けずに掘り進めれたものだと感心する。

食料、とは考えないべきだよな…。


ピシッ


「ってえぇ!?」

もう羽化するのかよ!?

やばいやばいやばいやばい!!

また親認知されたら適わんって!

「ソラ、逃げないとまずいことに…!」

しかしソラは動かない。

生命の誕生を今か今かと待ちわびているような、そんな頑なな雰囲気が感じられた。

心なしかそのソラの瞳がキラキラしてる気がするんだけど…。

生命の誕生はソラにしたら初めて見る光景だから見たい気持ちは分かるが、親認知されたらそれどころじゃない。

これ以上面倒事を増やしたくない。

「ソラ!動けこら!」

やはりソラは動かない。

それでも生命の誕生はそれを待ってはくれないようだ。


ピシピシッ


うあー!!

もう産まれるよー!!

「くそぅ…!もうなるようになれー!」

やけくそだよ、この際。

と思いつつも、俺は親認知されないようにソラの影に隠れた。

しかし気にはなるのでちょいっと覗き見程度に卵を見つめる。


ピキッ


産まれた!

と思うと同時に卵からビヨーンと何かが飛び出した。

「うわっ!?」

「ぐぁ!?」

ソラと俺の驚きの声が重なる。

飛び出した何かは頭上高くまで飛び上がり、ゆっくりと下降してきた。

いったいあれはなんだ…?

生物っぽいけど…。

太陽の光を浴びたソレはキラキラと輝きを反射した。

輝く生物なんか聞いたことない。

これで普通の生き物とかだったりしたら、本当に怒るからな。

卵から飛び出たそれは、俺とソラの目線のちょうど間あたりで下降をやめた。

と、鳥…?

には見えそうもないが、鳥っぽい羽が生えている。

胴体が…。

「はぁ、やっと産まれられました」

へっ?

つうかぎょっ?

胴体がハツカネズミみたいな翼が生えちゃったなんちゃって動物って、まさかまさか…。

「掘ってくれてありがとうございます、フェニアース」

「しゃべってるよー!!?」

たぶん聖獣なんだと思うけど、しゃべる聖獣なんて聞いたことないし!

しかも今産まれたばっかだぞ!

しかも丁寧語だー!!


波乱な予感がします。

そりゃもうプンプンに。


ハツカネズミに鳥みたいな羽です。

ピンとこない方ば汚いところに行ってみましょう(ゴミ処理場とか)。

きっとハツカネズミくんに会えると思いますよ^^


ちなみにちなみに、某巨大テーマパークのメインのネズミさんはシロハツカネズミだとか。

本当かどうかは分かりません。


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