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19:聖獣様に光あり

逃げよう。

ソラを連れて国外に出よう。

どうせならソラの背中なんかに乗せてもらって、飛びながら旅でもしようかな。

行きたいって言ったらカスティーダも連れて行こう。

それでひっそり暮らすんだ。

田舎暮らしなら慣れてるし、落ち着いたら仕事を始めて、そしていつか災厄が起きるんだ。

そしたらソラと一緒にひっそりこの世界と共に無くなろう。

思うだけで口に出来なかったのは、心の底から願っていることじゃなかったからだ。

ソラソラ言っているが、最後は結局自分がかわいいんだよな、所詮俺も。





「災厄を止めることが出来る。それはつまり強大な力を持つことに他ならない、ということです。それを知るのは国家と聖研だけにございます」

カスティーダが黙り込んでしまったので、その後を引き継いだのがスルダニアルさんだった。

そのスルダニアルさんの言葉が右から左へすっと抜けていった。

放心状態だからということもあるが、心に留めておく必要がないと感じたからだ。

だからなんなんだ。

「ここまでお話したのです。最後までお教え致しましょう」

最後まで?

まだなんかあるのかよ…。

そろそろ絶望も飽きたんだけど…。

出来ることならいっそ黙っていてくれ。

やっぱり口には出来ない俺。

弱虫な俺。

…………。

……ちくしょう。


「シュバート一家を覚えていらっしゃいますか?」

ここで出てくるとは露ほども思わなかったので、俺は顔を上げ、背後に立つスルダニアルさんを見上げた。

なぜにシュバート一家?

なぜに苦ーい思い出のシュバート一家?

あんなことがあったのだから、もちろん忘れる訳もない。

「その家長はそれを知っているようなのです。いやはや、いったいどこから漏れたのやら…」

そう言って頭を抱えたスルダニアルさん。

お前の悩みはそんなもんなのか。

別にケチつけたくはないけど、なんとちっぽけな悩みなんだ。

少しは俺とカスティーダの気持ちを察しろよ!

「いつか私どもがシュバート一家を片付けようと思っていたのですが…。いっそこの際です」

どの際だ。

「シュバート一家の片付けをケリア殿と聖獣様にお任せしてもよろしいですかな?」

「えぇえ!?」

どこをどうやってそんな結果になっちゃったの!?

絶対なんかいろいろおかしい方向に向かってると思うんですけど!

つうかさっきまでのシリアス気分返せっ!

今の一言でことごとく壊したよね。

その言葉のチョイスがある意味凄いと思うよ。


そもそもだ。

何のためにアンタら騎士団が護衛に付いたと思ってるんだ。

きっかけはシュバート一家に襲われたことなのに、なんでそのシュバート一家を俺とソラ(大半ソラ)が片付けなきゃならない?

おかしい。

おかしいというより、話の発端からすべて間違ってると思う。

ちょっと考え直さない?

つか考え直せやコラ。

「作戦をご説明しましょう」

作戦とかすでに立ってたんじゃん!

どうせ絶望の話がなかったとしてもやらせるつもりだったんじゃないの!?

絶対そうだよね!

てか俺の表情見て分かんない?

「ありえなくない?」って気持ち読み取れない?

すっごい引きつってるはずだけど。


「シュバート一家の舎弟の拠点が数軒あるのですが、そこは私ども国家の軍が押さえまする。その折にケリア殿と聖獣様にはシュバート一家の本拠地、本家へと乗り込んで頂きとうございます」

待て待て待てーい!

それ一番危険じゃん!

一番大変で危険で重要な所じゃん!

なんであえてのそこチョイス?

「なんか理由があるんですか?俺とソラが本家を攻めることに」

うあー…。

流れで話に乗っかってるし…。

また面倒事が…。


スルダニアルさんは「もちろん」と言って頷いた。

もちろんと言うぐらいなら先に言えよ、先に!

「シュバート一家の家長の男は、なぜか聖獣について精通している部分があるようなのです」

まぁマニアに高く売れることを知ってるんだしね。

そう言われてもおかしいとこはないよね。

さっきの今で、簡単なことじゃ驚かないよ?

「そして、千年に一度の世界の災厄についても情報を持っているとか」

「ぇ」

驚きすぎて小さな声しか出なかった。

人間本気の驚きには声は出ないらしい。

その時、俺の向かいのソファーで頭を抱えていたカスティーダが顔を上げた。

その表情は驚きいっぱい。

「お前…、国家の奴らは…」

意味不明な言葉でスルダニアルさんを見つめるカスティーダ。

俺とソラは一緒になって首をひねった。

スルダニアルさんは一瞬だけカスティーダに視線を走らせたが、すぐに俺へと戻した。

「国家は全く持ってシュバート一家の家長に興味はありませんが、恐らくケリア殿に関しては…」

「興味ありますっ」

思わず自分の口から言葉が出たことに、自分で驚いた。


スルダニアルさんが俺に言いたかったこと。

そしてなんでもいいから光が欲しい俺。

ほんの小さな光でもいい。

シュバート一家はキライだけど、今はその家長に賭けてみようじゃないか。

ソラを助ける手掛かりになること。

世界を災厄から救うこと。

諦めるのはまだ早いってか。


ちゃんと希望は与えるんです。

あぁ、なんて優しいの私!

なーんて。

ただ主人公や聖獣様に甘いだけなんですよねー。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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