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18:聖獣様のさだめ

こんなにショックを受けたのは久しぶりかもしれない。

これを絶望と呼ぶのかなぁと、頭のどこかで冷静に考えていた。

たぶん、俺は不幸の枠には入ってないんだ。

本当の不幸っていうのは、自分が不幸ってことに気付いてない奴のことを言うんだと思う。

不幸とか幸せの基準を知らずに生きて、そして死ぬこと。

そう、例えばソラみたいな。





ソラは自分の話というのを理解していないらしく、うとうとし始めていた。

その頭をよしよしと撫でてやると、気持ち良さそうに喉を鳴らした。

かわいいなぁ。

従順だよなぁ、俺に対して。

ただもっと小さい時の方がかわいらしかったけど。

なんて、絶対口にはすまい。

「話はまだ終わってないぞ」

「え?」

ソラから顔を上げると、カスティーダはまだ真面目な顔をしていた。

てっきり終わりかと思っていた。

この表情を伺うに、話はここからが本番だと言うような…。

これ以上俺にどんな驚くことをしたいんだよ。


カスティーダは一度深く深ーく深呼吸をした。

「千年に一度の聖獣様には、他の聖獣とは違い、生まれたその瞬間から使命が決まっている」

「えっ、じゃあもう分かってるってこと?」

カスティーダはこくりと頷いた。

その表情が真面目を通り越して深刻そうな、それでいて苦しそうな雰囲気を醸し出していたから、俺は「聞きたくない」と言いたくなってしまった。

もちろん言わなかったけれど…。

たぶん言ったらカスティーダは一生この話を俺にしてくれなくなるんだろうと思ったから。

それではきっとダメなんだ。

ソラの親になろうって覚悟を決めたんだ。

逃げちゃダメだ。

と思いつつも手汗は半端がない状態である。


「ここは、この世界には千年に一度、世界を脅かすような災厄が訪れる」

あぁ、分かったよ。

それだけで分かっちゃったよ。

そういうことなんだ。

「それは俺たち人間じゃあどうすることも出来ないような、大きな災厄だ」

なんで分かるんだよ?と、口にはしなかった。

今さら否定する気にはなれなかったし、何より声を出したらきっと震えたものが出てしまいそうだったから。

聞きたくないと思っていることがばれたくなかった。

たぶんそれはソラにだろう。

「その災厄から世界を救うために産まれたのが、千年に一度の聖獣様、ソラだ」

やっぱりそういう展開になるんだ。

けど話はまだ終わらない。

だって、カスティーダの顔がとうとうくしゃりと歪んだから。

泣くと思った。

そんな歪み方だった。

「その災厄を止めることはソラしか出来ないし、ソラも本能でそれを分かっているはずだ。それで…」

あぁ、やっぱり聞きたくないって言うべきだった。

はっきりそう述べるべきだったんだ。

「災厄を止めるのと引き換えにソラは、



…死ぬ」





カスティーダは最後まで泣かずに俺に説明してくれた。

さすが男らしい奴だよな。

やっぱ見た目通りの中身だよ、お前は。

ただ俺はカスティーダみたいに格好良くはなれないみたいだ。

それどころか格好良くなんてなりたくないとさえ思った。


「どういう…、なんだよそれ…。なんで…、なんでソラが死ななきゃなんないんだよ!」

ダメだなぁ、俺。

ほら、カスティーダが傷付いた顔してるじゃん。

カスティーダは悪いことなんて何もしてないのに。

むしろ何も知らない俺に教えてくれた、俺のためを思ってくれた優しい男なのに。

分かっているのに止まらなかった。

自分で自分を止めることが出来なかった。

目からなんか水分が流れてくるし、目だけに止まらず鼻からも出てきた。

それでも構わなかった。

構う余裕がなかった。

「そんなのあんまりじゃないか!だって、それは!自分のためじゃなくて!世界のために産まれて死ぬみたいな、そんな言い方…!」

カスティーダは何も言わなかった。

それが肯定のように感じる。

余計に俺を逆撫ですることだとか気付かないのかな。

「世界が平和ならソラ一匹死んでもいいのかよっ!」

「それ以外に道がないから仕方ないだろ!」

まさか怒鳴り返されるとは思わなかった。

だだ漏れな水分もそのままに、俺は放心した状態でカスティーダを見上げた。

同じように立ち上がった姿勢だと、身長差でカスティーダに負けるのだからしょうがない状態だ。

驚いたようなソラが目の端に止まった。

しかし、キレたと思ったカスティーダはしゅるしゅると怒りを納め、頼りなく肩を落としてソファーに沈んだ。

「そう、前はそう言い聞かせてた。仕方ないと思うしかなかった。それで世界が救えるなら、仕方ないんだってな…。でも…」

カスティーダは左手で両面を覆った。

そして弱々しい声で続けた。

「まさか親ができるなんて思ってなかったんだ。誰も、誰も知らなかった」

ソラの「ぐぅ?」という不思議そうな鳴き方を最後に、誰も何も言わなくなった。

俺だけじゃない。

悔しくて悲しくてもどかしい絶望を感じているのは、俺だけじゃなかった。

それが今は嬉しかった。


ごめんね、みんな。

私は決してみんなを悲しませるつもりじゃなかったの。

特に聖獣様と主人公ごめん!


少し重たかったですよね。

次は軌道修正します。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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