13:聖獣様の作戦
なんだか置いてきぼり食らわされた気分。
もう訳がわかんらん。
なんでお前らバトルってんだよ。
別に俺も戦いたいとかじゃないんだけど。
だけどなんなんだ、この気持ち。
俺は俺は?
俺の存在どこいった?
「ぐぁ!」
「かかってこいやぁ!」
「ぐぁー!」
俺の存在消さないで!
俺を空気と化させないでよ!
ソラは火を吹いたり引っ掻いたりしての戦法。
対してシュバート一家は剣を振り回している。
俺がこれに加わったら確実に死ぬ状況なんだよね。
実際ソラにやられて2人ほど伸びてるし。
だから俺がこの戦闘に加わらないのは当たり前だし、願ったり叶ったりな状況ではある。
「ぐぁおー!」
ブァー!!
あっつ!
加減しろ少しは!
死んだらどうすんだ!
で俺を巻き添えにすんな!
「うおりゃー!」
また懲りもせずに飛び掛かるシュバート一家のお兄さん方。
やっぱりソラはシュバート一家のお兄さんの剣さばきをさらりと交わし、引っ掻きを食らわす。
結局痛みの声を上げるのはシュバート一家のお兄さん方となっている。
今更なんだけど、ソラって強いらしい。
強大かどうかは分からないが、それでも強いというのは素人目にも理解できた。
お兄さん方は決して弱くはないと思う。
あの有名なシュバート一家な訳だし、たぶんそれなりの危機を乗り切ってきたはず。
故に弱くはない。
故にソラが強い。
単純すぎる思考回路だけど間違いではないと思う。
千年に一度の聖獣様、か…。
申し訳ないけど初めて思ったかもしれない。
きっとまだまだ強くなっていくのだろうが、俺的にはもう充分である。
「く、くそ…!なんでこんな強いんだ!」
知らないよ。
貴族の暮らしでいいモン食べてるからじゃない?
プラスおやつも付いてる訳だし。
贅沢って言ってやって。
親である俺が許す。
「こうなったら…奥の手!」
お、奥の手!?
何何何何!?
って俺動揺しすぎ。
バン!バン!
拳銃持ってるー!!
これは本気でまずいぞ!
「ダメだソラ!避けろ!」
拳銃の弾はいくら聖獣様でも無理というもの。
ソラも本能的に気付いたようで、一定の距離を縮めずに唸っている。
ここまで来て逃げるぞ!とはなんとなく言いにくが、しかし拳銃は反則でしょ。
まぁシュバート一家に反則も何もないかもしれないけど…。
でも拳銃はないわ。
それはひどい。
フェアじゃない。
と、やっぱり口にはできないんだけど…。
いきなり窮地に立たされたソラだが(自分でなんだけど少し他人事)、果たして拳銃とどう戦うのか。
研究者じゃないけど、ちょっとした好奇心が芽生えた。
「かかってきやがれ!」
シュバート一家の拳銃お兄さんがそう声を上げると、ソラは「ぐぁ!」と叫びながら突進した。
単純明快、ただ突っ込んでってるだけ。
うん。
まぁ、そんなもんだよね。
図体ばっかり大きくなっちゃった中身お子様な訳だし。
ソラらしいっちゃソラらしい。
でもそれは的になりやすいんじゃ…。
バン!バンバン!
「ソラ!」
ソラは倒れなければ、立ち止まりもしなかった。
たぶん当たった。
赤い飛沫を微かに見た。
でもソラは突進し続け、結果、シュバート一家の拳銃お兄さんが悲痛の叫び声を上げて、このバトルは終息となった。
シュバート一家のお兄さん方は散り散りにのびている。
たぶん皆生きていると思う。
少量の流血こそあるものの、それは本当に微々たるもの。
それよりもソラだ。
「ソラ、大丈夫か!?」
俺が駆け寄ると、ソラは甘えるようにお腹に鼻を擦り付けてきた。
その頭を撫でてやると、ソラは嬉しそうに「ぐぅ」と鳴いた。
あぁ、なんだろ。
なんかホッとした。
何かがストンと胸に落ち着いた感じ。
良かったって、心の底から言いたい気分。
「弾、当たらなかったか?」
ふと思い出してソラから体を離すと同時に、あの至福の気分は消し飛ばされた。
「え?」
ドサッ
ソラは腹から血を流していた。
それはこの場にいる誰よりも大量の血だった。
頭は真っ白。
思考回路は完全に停止状態。
昔爺ちゃんに救急法とかなんか教わった気がしたけど、その時はそんな記憶はチラリとも思い出さなかった。
いざという時に使えないとなると、それは全く意味のないこと。
聖獣様の血も赤なんですね。
青とか緑を創造した方すいませんね^^
最後まで読んでいただきありがとうございました。