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11:聖獣様は狼

久しぶりに山の我が家に帰ってきた。

まだ置きっぱなしだった物もたくさんある。

せめて爺ちゃん婆ちゃん父さん母さんの形見ぐらい持ち帰らねば。

そう思って家の玄関を開けた。

「死ね消えろ殺す」

こんな暴言中の暴言を吐かれ、ただ今失神1分前。





ソラはでかい図体で飛び回らせておいた。

それを玄関先から並んで見上げる。

隣の黒髪ロングヘアーの町娘は、無言無表情でソラを見上げているが、その内心は怒りで満ち溢れているに違いない。


八百屋の一人娘のピーナ。

爺ちゃん婆ちゃんに変わって小さい頃から買い物に行っていた俺は、言うなればピーナとは幼なじみになると思う。

しかし幼なじみという言葉が正しいかは分からない。

だって、ピーナとは決して決して仲が良かったとは言えないから。


「…今までどこにいたの」

すでに問い掛けてないソレ。

昔の恐怖を思い出して背筋がゾクリとする。

こ、怖い…。

普通に怖い…。

「せ、聖研に…」

「聖研?」

「国立クーパー聖獣専門研究所」

「バカにしてんの?」

し、してませんっ!

滅相もありませんっ!

そんな自殺行為とも分かるようなことを今さら俺がやる訳ないでしょ!

「アレのせい?」

ピーナが顎で指し示したのは空に黒い点を作っているソラ。

ソラを防衛したいのかなんなのか、とにかく俺の頭は真っ白で、何か言わなきゃという本能で口が動き始めた。

「えっと…、ソラは千年に一度しか産まれないありがたーい聖獣様で…って、聖獣って言うのは神の使いのアレのことなんだけど、そんでもって…」

「アレのせいなの?」

「い、いや…、なんていうか……」

「違うの?」

「その………」

俺は胸ぐらを掴まれた。

女子であるピーナに。

そりゃもうがっつりと。

「違うの、そうなの。はっきり言わないとこのまま地上に埋めて一生太陽を拝めなくするわよ」

これが冗談じゃないから笑えない。

むしろピーナは本気だから恐怖の何物でもない。

そういえばと、いつぞや俺のことを「草食系男子」て言ったのもピーナだったことを思い出す。

今思い出すとか俺しょーもなっ。

恐怖のせいで頭がおかしなことになってるらしい。

自分で言うのもなんか悲しいけど…。

でも怖いものは怖い。


俺はピーナに今までのことを余すことなくすべてを話した。

ちょいちょい恐怖でちびりそうにはなったのは秘密にしておく。

「女子にお前…」

とか言うのはせめて今はやめて。

気持ちは分かるけど、せめて本気で今だけはやめて。

ショックこの上ない感じになるから。


「ねぇケリア」

「はい!」

思わず敬礼したくなるような返事をするのは当たり前。

しないとぶっ飛ばされるから。

まぁしないけどね、敬礼なんて。

軍隊でもあるまいし。

…って昔ピーナに言われたことだけど。

「つまりアンタは、今、貴族な訳ね」

「えっ?あぁ、まぁ…、うん…」

そこに突っ掛かるんだ?

もしかして

「ケリアよりも下の立場はイヤだ!」

とか言いだすんじゃないだろうな…。

あ、でもなんかありえそう…。

身震いが…。

「あのあそこで羽バタバタさせてる狼のおかげで?」

言っちゃったよ。

狼ってとうとう言っちゃったよ…。

誰も言わなかったのに…。

親やってるこの俺でさえ言わなかったのに…。

しかも羽バタバタってのはひどいな。

みんなが「聖獣様、聖獣様」呼んでる千年に一度の聖獣様が飛んでる姿を見て、羽バタバタはないだろ。

聖研の輩に聞かれてたら殴られるよ?

特にあのおじいちゃんには気を付けた方がいいよ。

俺も殴られたし…。

「ケリアはもう…」

「えっ?」


なんだか不思議な光景だった。

実は、ピーナとこうやって落ち着いて並んで話すのは何年かぶりだし、店以外で話すのももっと何年かぶり。

その何年かの間は結構大きいのかもしれない。

だってこんなピーナは初めて見る。


俯いてる。

思い悩んでる。

なんか哀しそう。


こんなピーナおかしい。

いつものクールで冷酷で冷淡で厳しいピーナじゃない。

……いや、それがいいって訳じゃ断じてないんだけどね?

アレだよアレ!

調子狂うの!


「ここには帰って来ないのね」

………。

「ピーナ」

「………」

「…顔、にやけてるよ?」

さっきまでのアレ何?

哀愁漂わせてたアレはなんだったの?

幻?陽炎?

恐怖のあまり頭いっちゃったのかな俺…。

「この家はもらう。もう必要ないでしょうし。それから、私を聖研に入れるように根回ししといて」

「なんで!?」

はい、殴られましたー。

やっぱり殴られましたー。

ピーナに会って殴られなかった時がなかったから、まぁいつもの光景。

…痛いけどね。


それよりも。

「ピーナって、聖研入りたかったんだ…?」

「別に」

いやいや、…は?

話が読めないぞ?

「聖獣とか興味ないし。所詮動物の類でしょ」

…返す言葉もありません。

いろんな意味で。

「じゃあなんで聖研に…?」

「決まってるじゃない。ケリアに会う口実」

「………」

なんでそこ直球ストレートなの?

俺ばっかりたじたじか。

いっつもそのパターンなのか。

そんでピーナの狙いが分からん。

「ピーナって俺のこと…」

「ケリアって殺されたいの」

「いいえ、全っ然。これっっっぽっっっちも」

分からん。

女って分からん!

女心って分からん!


アンケートを(若干)参考にした人物、ピーナちゃん登場。

もともと口が悪いキャラが書きたかったのです。基本自由な登場人物ばっかりな話だし。

それにクーデレを加えたかった。しかし加わり切らずにこの状態。

すいませんとしか言い様がありません。すいません。

誰かクーデレを教えてください。まぁぴーちゃんはこのままいきますけど。


引き続きアンケートを募集しています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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