1章‐1:聖獣様の親になりました
「なぜだ!なぜなんだ!!」
うーん…。
いや、そうなんだけどね?
妥当な反応っていうのは分かってるんだけどね?
「信じられん!というより、あり得ないっ!!」
…そこまで言うか?
本人目の前にしてそこまで言うか?普通。
しかも今日初対面な輩なんだけど。
言われても仕方ないのは分かってる。
あぁ、分かってるさ!
分かってるけど酷いだろ!
いくら俺でも傷付く時は傷付きます。
めっちゃ傷付きます!
「どうなる…」
「は…?」
「どうなるんだ、この世界はっ!!」
「………」
そこまで言うんだ…。
そこまで人のこと苔にするんだ…。
「もうやめてあげてください。可哀想ですから」
おぉ!
すごい助け船だ!
この人絶対いい人!
誰がなんと言おうといい人だ!
今の現状を説明しよう。
ここは国立クーパー聖獣専門研究所。
名前がガチガチそうなように、その内容もガチガチだ。
聖獣を専門に扱う研究者がごろごろいる所だ。
聖獣とは何か。
この世界に生きる動物の中で最も高貴なる獣。
簡単に言えば、その辺の動物に毛が生えた、といったところか。
聖獣よりか“神の使い”という呼び方の方が一般には流通していると思う。
実際、今まで俺は聖獣は神の使いということしか知らなかった。
聖獣という呼び方が正式ということを初めて知ったのは最近のことだ。
今回なぜ俺がこの聖研にいるかというと、これまた長い説明になる。
俺は田舎住まいだ。
森にぽつんと建つ木の家が俺の安息の我が家である。
婆ちゃんと爺ちゃんが死んでからは一人でその家と森を切り盛りしてる。
切り盛りしてるっつったって、森は半放置状態な訳だが…。
木の実とか拾いに行く程度なもんだった。
その時に偶然にも卵を見つけたので、
「ラッキー、食料」
程度にしか思わないままそれを持って帰宅。
ちょっとデカイな、とか重いな、とかは気にしなかった。
たぶん赤ん坊ぐらいの大きさだったはずだ。
その卵をさぁ料理しようと思い立った瞬間に、タイミングよくその卵は羽化した。
今日の食料が…、みたいな喪失感が俺を襲ったが、もちろんそれは一瞬の出来事。
生命の誕生とは何にも増して神秘的だと思う。
俺は声援なんかを卵に送りながら、その光景を見続けた。
小一時間。
中から見たこともない生物が現れた。
鳥か、もしくは狼か。
狼だったら翼はないし、そもそもあれは卵だったか?という疑問にぶち当たる。
ならば鳥か?
……鳥だとすれば胴体を見たらおしまいだな。
そして産まれたソレは俺を見た。
俺たちは見つめ合った。
そしてソレは俺に擦り寄ったという訳だ。
懐かれて嫌な気はしない。
しかしそれが大きなミスだったのだ。
いや、連れ帰った時点でまずかったのだけど…。
そいつは聖獣だったらしい。
しかも千年に一度しか産まれないすんばらしい、そしてありがたい聖獣様なんだと。
生態不明。
なんたって前回が千年前だからな。
そして聖研で開発されたなんとかレーダーにその聖獣が引っ掛かり、俺宅まで来た聖研の奴が教えてくれた。
そして流されるままに聖研まで連行されて今に至る。
そもそもこのありがたい聖獣は“フェニアース”とかいう名前の聖獣らしく、強大な力を持っているらしい。
そしてこの聖獣、ありがたいくせに普通の動物のような厄介な特徴がある。
初めて見たものを親と認識するらしい。
つまり俺だ。
千年に一度の聖獣様の親になりました。
始まりましたー!!
少々とんでもな感じではありますが、今後ともよろしくお願いします。
楽しい作品にしていきたいという思いはありますが、少しシリアスが混ざると思います。
シリアスは苦手ですが、まぁ…、頑張ります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。