第一話【急募】聞き耳能力!!〜早く異世界を堪能したいです〜
みなさまごきげんよう、エミリア・クローリーです。
現在、かわいい盛りの5歳。金髪美幼女です。
父は金髪の美丈夫エドワード・クローリー。母は亜麻色の美女マリアンネ・クローリー。私の両親は、クローリー侯爵家の現当主とその正妻です。そう、お貴族様なのです。
私は、元々日本という国のしがないOLでしたが、寝て起きたら何故かクローリー侯爵家の長女、エミリアになってました。
私も意味がわからないので、質問はしないでください。
最初は夢かと思って、もう一度寝てみたりしましたが全然だめでした。最初の一年くらいで諦めました。
というか、正直に言うと貴族赤ちゃんライフが快適すぎて、もういっかなこのままでってなりました。すみません。
だってだって聞いてください。前世(?)で社会人だったので、寝るのが仕事の赤ん坊最高か?ってなっちゃったんです。しかも貴族の長女なので、すっごく対応が良いんですよ。何でもお世話してもらえちゃいますし、色々と素敵なものをプレゼントしてもらえちゃいます。加えて父と母は揃って美形で、私自身もめちゃくちゃ可愛いので、ぶっちゃけ人生勝ち組?ってなるんです。二度目の人生薔薇色だ〜なんて浮かれてました。すみません。
そんな私ですが、現在とっても困ったことになっています。
「お嬢様!!危険です!離れてください!!」
「誰かすぐに兵士を!!」
つい先程までは、中庭で優雅にお茶とお菓子を樂しんで、お花を愛でていた。
だというのに、なぜか。
なぜか、眼前にどデカいオオトカゲ。ほんとにどデカい。どのくらいどデカいかというと、私のお気に入りの天蓋付きベッド級のデカさ。
あ、天蓋ベッドほんとに素敵なんですよ。フリフリのレースで覆われてるんです。乙女の夢でしょ?まあでも、目の前のトカゲは何故か全身炎で覆われているんですが。
オオトカゲは私のはるか頭上からギラギラ(メラメラ?)とした目でこちらを見据えている。
逃げないといけないことは、分かっているのに何故か足が動かない。段々と頭もボーッとしてくる。
あ、これ死んだな。
意識がなくなる直前、他人事のようにそう思った。
「…リアっ!!エミ…ぁ!!!エミリア!!!」
「ん、ぅ、おと、さま?」
自分を必死に呼ぶ父と声で目を開くと、そこは自室のベッドの上だった。
あれ、私さっきまで中庭にいなかったっけ?お昼寝してたんだっけ?ボーッとそんなことを考えていると、ひどく慌てた様子の父が、大声で医者を呼ぶ。
ん?医者?何で?
「エミリア様、お目覚めになられたのですね。ご加減はいかがでしょうか。」
ボーッとしている間に、我が家のお抱え医である、アドルフがやってきた。アドルフは、父の幼少期からクローリー家に使えている熟練の医者で、いつも温和な笑顔を浮かべている素敵なご老人だ。
「アドルフ、早くエミリアを診てくれ!目が覚めたというのに、どこか虚ろなんだ!あの化け物の呪いかもしれないっ!」
化け物…?あ!そうだ!私火まみれのオオトカゲに襲われそうになったんだ!…ん?でも体はどこも痛くなさそう。お父様が助けてくれたのだろうか。
「おとうさま、わたくし、だいじょうぶですわ」
「エミリア!良かった、心配したんだ!大丈夫かい、どこも痛いところはないかい?」
「ええ、だいじょうぶですよ、ほら、このとおりですわ。…?」
心配する父に、起き上がった姿を見せて安心させようとして異変に気づいた。まずい、大丈夫だと言おうと思ったのに。
「?エミリア、どうしたんだい?」
「おとうさま、もうしわけありません。あの、」
「やはりどこか痛むのかい?!」
「いえ、どこもいたくはないのです。ただ、」
「ただ?」
「からだにちからがはいらないのです。まったく。」
「!!!!!」
そこからの父はすごかった。どのくらいすごいかというと、うん。言葉きできないくらいすごかった。とにかく取り乱した。いつもは威厳のある父なのに、溺愛する一人娘のこととなるとダメなのだ。侯爵という高貴な貴族が、泣きわめくという異様な空間に、なんとも言えない空気が流れる。一言で言えばカオス。まあ、慣れ親しんだ者しか部屋には居ないだろうから、問題はないけれど。
そのカオスを断ち切ったのは、私のことをじっと観察していた様子のアドルフだった。
「エドワード様。エミリア様は恐らく、呪われてなどおりませんよ。」
「ほ、ほんとうか?!アドルフ!」
アドルフの言葉を聞き、父が泣きながら、私に押し付けていた頭を上げる。うーん、服が冷たい…。
「ええ、恐らくエミリア様はMP切れでしょう。」
「MP?!!!?!」
アドルフの言葉に驚いたのは私だ。何?MPって!ここ、ファンタジー異世界だったの?!?!
「MP…。だがアドルフ、エミリアはまだたったの5歳だ!スキルが発言するには早すぎる!」
「ええ、その通りでございます。確かにエミリア様ほど、お若くしてスキルを発言される方は、滅多におりません。ですが、全くいないというわけではございません。王族の方などの中には極稀にいらっしゃると聞いたことがございます。」
「そうなのか、それでは、突然現れた化け物というのも…。」
「ええ、恐らく間違いないかと。」
納得して冷静さを取り戻した様子の父と、アドルフは二人だけで話しをどんどんと進めていってしまうため、よくはわからないが、どうやら私がただの美幼女ではなく、スキル持ち美幼女だということが分かった。
「とにかく、早急にスキルの内容の調査分析とMP量の測定を行うべきかと存じます。」
「ああ、そうだな。内容については、これから調査をしていくとして、MPの方はマリアンネを待つのが一番早いな。」
「エミリア様、大丈夫でございますよ。マリアンネ様がご帰宅なさるまで、暖かくして、お休みくださいませ。」
私が二人の話を理解したくてじっと見ていたら、アドルフは、不安がっているのだろうと判断したようで、声をかけてくれた。
そのアドルフの声に、父はハッとした様な顔をして、「そうだよ、エミリア。寝ていないと。」と私に優しく声をかけ、頭を撫でた後、アドルフを連れて部屋を出ていってしまった。
くうう、優しい気持ちは嬉しいけれど、私はスキルが気になる!!もうちょっと私にも説明してほしかった!!!
体は動かないけれど、頭は冴えているというのが実にもどかしい。体が動けばすぐに二人を追いかけるのに、出来ないから大人しくここで目をつぶるしかない。
スキルってどんなのだろう。ファイアーボール?それともビール?うふふ、なんだか楽しくなってきた。あ、もしかして、あのオオトカゲ、私が何かスキルで倒したとかかな?すごいじゃん私。天才じゃん。
ああーー!!!さっきの二人の会話か気になるー!!!
【急募】聞き耳能力!!〜早く異世界を堪能したいです〜
スキルの説明はお父様におあずけされてしまいました。
次回、スキル説明とスキル内容が明らかに!