第七話 吸血伯爵と饒舌
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「吸血伯爵?」
リーレは訊き返す。
「そう、吸血伯爵だ。まあ、知らないだろうな」
その言い草にリーレは少しムッとしたのだが、知らないものは仕方がないので続きを促すことにした。
「リーレも一般的な吸血鬼の分類は知っているだろう?ただ、そこには含まれていない種が幾つかある。それが、喰人者と吸血伯爵だ。この二種も一応れっきとした種なんだが、その存在への昇化が禁忌に触れるとして種として認められていない。万が一出現したときは、悪魔付きだったとか言って誤魔化す気なんだろう」
「……で?それの何が問題なの?というかそもそも吸血鬼の存在は禁忌に触れていないの?」
「後の質問だが、俺は知らない。普通に考えたらそうなんだろうが、大方教会が権威を振りかざす前からその存在が認知されていたから、抹消するのは無理だったってことだと思う。まあそれを抜きにしても、その二種はあまり面白くない話だ」
「……それで?」
「そいつらは、吸血鬼というよりかは半吸血鬼に近いんだが、半吸血鬼と異なる最大の点は、吸血衝動があり、人族より魔物に近いという部分だ」
半吸血鬼は、一応人族・亜人として認められている。吸血鬼の吸血鬼たる所以、吸血衝動がないため、魔物ではないとされている。しかし、喰人者と吸血伯爵は違う。
「その二種の昇化は少し特殊でな、人族が吸血鬼を喰らうと昇化するようになっている。力の弱い眷属種を喰らったのなら喰人者に、純種を喰らったのなら吸血伯爵に昇化する」
「なるほど……ね。確かに気分のいい話じゃない」
「その力は、吸血鬼と同等かそれ以上だ。半吸血鬼を上位互換にして、吸血鬼特化能力を引いて、弱点を付け足した感じだ。ただ、それを抜きにしてもその力は強い。今のお前では倒せないだろう」
「……そう」
いつの間にか呼び方がお前に戻っているのだが、どちらも気づいていない。
吸血伯爵は吸血鬼の能力をそのまま引き継いでいる、生きた吸血鬼と言ったものなので、セイルの説明は少し回りくどくなっている。
吸血鬼は命を代償にしているのに対し、吸血伯爵は一応生命ではあるのでそのままでは呪いの力を宿すことはできない。そのため、弱点を増やすよう呪いを改変してある。
「ちなみにその弱点は、十字架を見ると気分が悪くなる、銀に弱い、吸血鬼としての弱点にさらに弱い等だ。それらの弱点を全て的確に突けばお前にも勝てないこともないが、やめた方がいいだろう。
そして、俺が見抜けたのは、そいつが変なスティレットを持っていたという点からだ。吸血伯爵は刺突武器を好むという点と、スティレットは十字架に近い形をしているから鍔の部分を変えたのだろうという点からわかった。見かけたら注意しておけ」
「………そう」
吸血鬼は十字架を嫌うとも言われるが、それは間違いである。それは吸血伯爵の弱点であり、昔はそれらが混同されていたからだろうと推測できる。
「吸血伯爵は吸血鬼でいえば上級クラスの実力を持つ。単純な難易度でいえば半吸血鬼よりは高い。頑張れよ」
セイルは協力してやると言ったものの、半ば他人事のような態度である。
「あと、神盾聖騎士団がお前のことを調べている。危険ならばなりふり構わず逃げろ。お前では手に負えん。
要件はそれだけだ」
そう言ってセイルはリビングの照明を消した。
「………はあ」
リーレはセイルに聞こえないよう、小さく溜息を吐いた。
セイルさんは語りたい。いつになく饒舌ですね。リーレさんは少々辟易していた模様。どうやってもラブコメ展開にはならなさそうです。
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