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血銀の十字架 ~神をも弑する刃となれ~  作者: 疾風 颯
第一部 第一章 リュックザイテの街からの脱出
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第五話 帰還と魔法

 お待たせしました。

 今更ですが、タイトルにある『血銀』とは、血液銀行の略称じゃないです。そのうち出すと思いますが、ブラッド・ミスリルです。

こっちのほうが書きやすかったので、これからは第三者視点で書いていきます。

(……疲れた。あまり俺に腹芸は向いていないな。次の魔導具屋に行くのは諦めて、宿に戻ることにしよう)


 セイルは先ほどよりまた薄暗くなった裏通りを歩いていく。宿に戻った時にはもう日没していた。まだそこまで暗くはないが、少し遅くなってしまった。リーレは大人しくしているだろうか。そう考えながらセイルは廊下を歩く。

 日が沈んだからか、少し肌寒く感じたセイルは上着の前を閉める。


(ん……?)


(流石に気温が低くなりすぎだろう⁉)


 嫌な予感がしたセイルは足早に廊下を進んでいく。廊下の奥へ進めば進むほど、気温が下がっていく。

 そして、部屋の前に着く。案の定、冷気はリーレがいるはずのこの部屋から漏れてきている。


(あれほど言っておいたのに……)


 セイルは思わず溜息を吐いた。その溜息は、周りの空気に冷やされ、白く染まる。

 立ち尽くしていても仕方がないので、ひんやりとしたドアノブを握る。しかし、ドアノブは動かない。力を込めて捻るとバキッという音がしてドアノブが回る。内側が凍り付いているようだ。今のでドアノブの機構の中にも氷の破片が入ったようで、ドアノブが固定された。そして、押しても引いてもドアは開かない。少し乱暴になるが、セイルはドアを蹴破ることにした。


「――っせい!」


 氷が崩れ落ちる音とともにドアが開く。驚いたことに、かなり力を込めて蹴ったドアは壊れなかった。

 凍てついた部屋の中には、気を失い、氷の中に囚われているリーレがいた。

 部屋の中の様子を確認しながらセイルは慎重に部屋の中へ進む。融け始めている様子がないことから、魔法はついさっき発動されたことが窺がえる。


(しかし、これだけ規模の大きい魔法が発動されたというのに、気配どころか、大気中の魔素の僅かな揺らぎすら感知できなかったぞ?これもこの宿の効果か?さっきのドアといいこの魔法の隠蔽といい、どうなっているんだこの宿は……)


 驚くポイントが少しズレている(普通ならばこの幻想的な風景や魔法の威力に驚くものだろう)セイルは、滑らないように気を付けながら、リーレの元へとたどり着く。

 どうやらリーレは魔力切れで気を失っているだけのようで、命に別状はなさそうである。


(さて、どうしたものか……)


 このようなものを放置しておけば、部屋中水浸しになるだろう。そんなことになれば、セイル達は泊まることができなくなる。そもそも、部屋の外まで冷気が漏れていたのだ。気付かれるのも時間の問題だろう。見つかれば、泊まれなくなるどころか弁償させられてしまう。

 早々になんとかしなければならないが、通常の方法で除去しようなど到底無理な話である。つまり、通常でない方法で除去する必要がある。


(はあ。面倒だ……)


 心の中で悪態を吐きながらセイルは己の魔力を練り上げる。そして手のひらをリーレの囚われている氷へ向け、魔力を開放する。ただそれだけで部屋を包んでいた氷塊は、凄まじい閃光を伴って消え去った。冷やされた空気はそのままだが、少し時間が経てば戻るだろう。

 セイルが行ったのは、魔法への介入・改ざんである。リーレが魔法で生み出した氷を、閃光の魔法に変換したのだ。

 魔法で生み出された物質は魔法性物質といい、完全な物質ではなく、半分魔法、半分物質のようなものである。そのため、魔法的構造には介入できる余地がある、という欠点が存在する。そこで、セイルはその弱点を突き、魔法性物質の氷を閃光の魔法に書き換えたのである。一度の魔法で同時に生み出されたものならば魔法的な繋がりが強いので全て一気に変換できる。

 簡単に思えるが、恐ろしく精密な技術である。そもそも、介入できる余地がある、というだけで、それを実行できる存在はこの世に一握りしかいない。それを実行し、ましてや方向性の異なる魔法に変換するなど、以ての外である。セイルもこれをやるのはそれなりの集中力が必要で、そうポンポンと出せる技ではない。これを教えたのはセイルの師匠だが、セイルは自分のほかにこの技術を体得している者をその師匠しか知らない。


 氷の支えを失ったリーレは、気絶しているので倒れ込む。床に激突する前にセイルが抱え上げ、ベッドに寝かせる。


「おい、起きろ」


 揺さぶって声をかけるも、反応する気配は無い。

 仕方がないのでセイルは夕飯を作って待つことにした。

 第六話、未定!

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