第四話 神盾と情報
ギルドを出たセイルは、脱出用の魔導具を手に入れるため、とりあえず最寄りの魔導具屋へ向かった。
街中を歩くこと十数分。一件目の魔導具屋に到着した。この街で最大の魔導具屋らしいその店は、なかなかデカい。
探すのは面倒なので、セイルは店員に訊いたところ、この店には目的の魔導具はないらしい。ただ、他にも興味深いものがたくさんあったので見て回っていたら、一時間も経過していた。
これはマズいと思い、セイルは次の店へと向かう。しかし、そこにも目的の魔導具はなかった。
そして、その次の店にもその魔導具は置かれていなかった。
次の一件で終わりにしよう、と思いながら店のある裏通りを歩く。日は西に傾き、建物の隙間にある裏通りは既に暗くなり始めている。しかし隙間から射す日光が思いの外厳しく、目元を隠すためにセイルはフードを被る。少し足を速めて進んでいると、後ろから声をかけられた。
「ねえ、そこのあなた、少し時間はある?」
セイルは気配と声で察する。
(神盾聖騎士団だ……。どうする?不信感は持たれたくない。顔もできるならば見せたくはない。しかし、情報を得るには絶好の機会だ。)
少し考えて、セイルはフードを被ったまま応対することにした。
「どうしましたか?」
ここで話したことで自身やリーレの存在にたどり着かれると面倒なので、セイルは敬語を使い、『冒険者セイル』ではなく『見知らぬ誰か』として接することにした。
「こんにちは。あたしは神盾聖騎士団のアリサ。少し訊きたいことがあるんだけど、いい?」
「おお、聖騎士様でしたか。フード越しで申し訳ありませんが、どうぞどうぞ、何でも訊いてください」
「……あたしはそれでもいいけど、なぜフードを被ったままなの?ここは西日も届いていないけれど」
「私は冒険者をやっておりましてね、なんとか食いつないできたのですが、昨日の狩りでヘマをしてしまったのですよ。顔に巨大芋虫の溶解液を食らってしまって、上半分が悲惨な有様になっているのです。人、それに聖騎士様ともなれば、お見苦しくてとてもお見せできる状態ではないのです」
バレてはマズいので、具体的な嘘でごまかす。同じような状況になる冒険者は珍しくないので信憑性はある。
「それは気の毒ね、治してあげてもいいわよ?」
「いえいえそんな!畏れ多いです!明日になれば教会で治してもらえるので、それまでの辛抱ですから、大丈夫です。
それより、私に訊きたいことというのはよろしいのでしょうか?」
(危ない……聖術使いであることをうっかり忘れていた)
できるだけ不自然にならないよう、セイル話を戻す。
「ああ、そうだったわ。
昨日、私達神盾聖騎士団は、一つの吸血鬼の部署を潰してきたんだけど、何体か逃げちゃってね……」
「存じ上げております。ギルドでも情報が回っていましたので。確か、協力者がいて、急を要する状況だったので夜の戦闘になったとか」
「協力者?……ああ、変なスティレットもった坊ちゃんか。そう、そのせいで吸血鬼どもが手ごわくてね……。署長は討伐したけど、隊長格を一体、下っ端を何体か逃がしちゃった。それで情報を集めているんだけど、何か知っていることはない?」
(変なスティレットだと?スティレットは短めの刺突武器で、常用や護身用には向かないはずだが……。ああ、そういうことか)
セイルは一人合点する。
「残念ながら、私ではあなた方のお力にはなれないようです。すみません」
「そう、私達は今後一週間ほど調査を続けるから、何か分かれば教えて頂戴」
「はい。
ところで聖騎士様、なぜ私に声をかけられたのですか?いえ、私が怪しいのは承知しておりますが、他にも人はいるでしょう?」
声をかけられたときは一瞬、バレたかと思ってヒヤッとしたセイルである。
「……少しだけ、覚えのある気配がしたの。勘違いだったみたいだけれど」
「吸血鬼ですか?そういう化け物が身近にいるなんてゾッとしますね」
「いえ、あたしの勘違いだから、気にすることはないわ。時間をとってすまなかったわね。協力、感謝するわ」
そう言って聖騎士アリサは去っていった。
(いい情報は手に入ったが………。聖騎士の勘も侮れないな……)
短編書きました。コメディーです。
『神サマ達に八百万回殺された俺はきっと嫌われている。』
https://ncode.syosetu.com/n7904gf/




