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血銀の十字架 ~神をも弑する刃となれ~  作者: 疾風 颯
第一部 第二章 辺境の街モーナトと迷宮
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19 神盾と吸血姫

 光の檻が収束し、全てが無に帰った。

 リーレは恐れ慄いた。あれ程の祝福を身に宿した者がいるのかと。今の状態でリーレが挑んだとして、触れることはおろか、近づくことすらろくにできないままでその存在を抹消されることだろう。

 この状況で、彼女にできることはなく、ただ相手の反応を待つばかりであった。

 聖騎士の証である神盾が刻み込まれた純白の鎧を身に着けた人物は、結局抜くことすらなかった剣を口惜しそうに抑えながら振り返った。身体は細く、女にも誤解されそうな容姿をしている彼は、しかし圧倒的なまでの覇気を纏っていた。

「さて、と。紅い瞳(イレギュラー)は倒したけど……、君は誰だ?」

 その目に浮かぶのは、明らかな警戒心。少なくとも、紅い瞳というのはおかしなもので、それを相手取っていたリーレは只者ではないと考えているらしかった。

「私は、数時間ほど前にこの街にやってきたリーレと言います、騎士様。何者かと訊かれると一言では表し難いのですが、強いて言うならば冒険者(ハンター)のようなもの、ですね」

 しかしセイルとの初対面での態度の通り、彼女はそれなりに肝が据わっていた。ここまで流暢かつ冷静に話せたのはリーレ自身も驚きではあったが、今は余計なことは考えるべきではないと思い、すぐにその驚愕を頭の隅に追いやった。なぜなら、相手は規格外の聖騎士。何か一つでも間違えようものなら、簡単に消されてしまう、そんな存在が目の前にいるのだ。他事を考えている余裕などなかった。

「ようなもの、というと、正規ではない、もしくは登録をしていないとか?」

「ええ、そのようなものです。先ほど街を散策していたところ、アイツに襲われまして」

「こんな夜更けに散歩?まあ、この街には昼も夜もあったものじゃないけどね……。ただ、あんな怪物とやり合えるなんて、どうして正規じゃないのかな?」

「それを言うならば騎士様は私なんかよりもずっとお強いじゃないですか。まあ、私は事情があったもので、機会がなかっただけですよ」

 二人は笑顔で会話をしているものの、場の空気は穏やかではない。戦闘直後に探り合いとは、見事な切り替えの早さと胆力だ。

「ふーん、そう……。まあいいけど、仮にも淑女が一人で出歩くもんじゃないよ。ここはモーナト、一寸先は闇なんだからね。いくら僕みたいなのがいるとしても、ね」

 騎士の方はあまりリーレに興味もないのか、あっさりと引き下がり、そのまま路地の奥へと消えていった。

「た、助かった……」

 一気に緊張の解けたリーレは、近くの壁に倒れこむようにしてもたれ掛かり、腰を落とした。心なしか膝が笑っている。

「私って、こんなにできましたっけ……?」

 口元も少し、弧を描いていた。


§


「全く……手がかりもなし、手ごたえもなし。だというのに、厄介ごとばかり起きる……。勘弁してくれないかなあ、ほんとに」

 暗い路地裏、そう言って苦笑するのは、先ほどリーレと対話していた青年。

「あの赤い瞳は最近のようだったし、まだ元凶が近くにいる可能性も高いんだろうなあ、ほんとやになるよ。本当に……」

 おもむろに剣を抜き、振り向くことすらせず後ろに剣を振る。どさり、と音を立てて崩れたのは三体の吸血鬼だった。

 呪われた血は滴ることすらせず、輝く刀身の上で塵となる。波打つ抜身の刀は、白銀の輝きを持ち、炎のように揺らめいている。

「吸血鬼ってのは気に入らない」

 神盾聖騎士団(アイギス)第三聖隊長、フランベルク・クライバー。若くして隊長に選ばれるほどの実力と、吸血鬼に対する執念、扱う武器から、【炎】と呼ばれる人物であった。

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