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第81話 イギリス攻防戦 その5

少し間が空きましたが、よろしくお願いします!

 二日目の戦いの始まりは静かなものだった。


 リバーシを率いる邪鬼、淫鬼は操っているイギリス国民たちに王城の門が開けば突入するように伝えるだけで、他には何も指示を出していなかった。


 一方、エリザード女王も敵の大人しさに怪しさを感じていたものの王城から飛び出る危険性を考えた結果、一旦、敵の様子を見ることを選択していた。


 そんな時、イギリス王城の裏口に近づく影が一つあった。


「ウィリアム騎士団長!……よかった。ご無事だったんですね。エリザード女王陛下も心配しておられます。どうぞ、早く王城に入ってください」


 裏口を見張っていた騎士たちは影の正体が騎士団長だと分かると、警戒を解き騎士団長に近づいて行く。


「すまないが俺が帰ってきたことはエリザード様に伝えないようにしてくれ」

「え……何故ですか?」

「頼む」

「……分かりました!」


 ウィリアムのただならぬ雰囲気に何かあることを察した騎士はウィリアムの願いを了承した。

 ウィリアムは騎士たちに短く感謝の言葉を伝えると、王城の中に向け歩き出した。



 王城の正門の開閉を管理している部屋にウィリアムが入る。


「ウィリアム騎士団長、どうしたのですか?」


 次の瞬間、ウィリアムは部屋の中にいる人たちを威圧した。

 圧倒的格上の相手からの威圧により部屋の中にいる人は全員動けずにいた。


「騎士団長……な、なぜこんなことを……?」


 かろうじて放った騎士たちの問いに答えることなく、ウィリアムは王城の正門の開閉を制御する機械の前に立つ。そして、ウィリアムは正門を開くボタンを押した。


 部屋の中にいる人々の動揺と困惑を他所にウィリアムは目の前の機械を壊した。


「これで、門がもう閉じることは無いな」


 モニターには、開いた門に押し寄せるイギリス国民やリバーシの人々を食い止めようとしている騎士たちの姿が映っていた。


「もう一押しする必要があるか……」


 そう呟くと、ウィリアムは部屋から出て行った。



 ウィリアムが部屋から出てから少しして、威圧から解放された騎士たちが焦った様子で動き出した。


「……っ!!は、速く!女王陛下にこのことを!それと、手が空いているものはウィリアム騎士団長を捕らえに行くぞ!」


***


 彼らがウィリアムを追いかけだした時には、ウィリアムは正門で戦う騎士たちの背後に迫っていた。


「ウィリアム騎士団長!援護に来てくれたんですか!?」

「よし!騎士団長もいれば何とかなる!何故門が開いたかは分からないが踏ん張るぞ!!」


 ウィリアムの姿を見て士気が上がる騎士たち。しかし、その騎士たちに対してウィリアムは『威圧の異能』を使用した。


「なっ……!」

「しまっ……ぐああ!?」


 一瞬だった。

 ウィリアムが使用した『威圧の異能』は広範囲で戦う騎士たちの動きを一瞬止めた。その一瞬で騎士たちの戦線は崩壊した。


「ま、まずい!!急いで立て直せ!」

「こ、こっちに援護を……ぐあああ!!」


 ここぞとばかりに一気に押し寄せてくるイギリス国民とリバーシの人々。一度、崩れてしまえばそこから立て直すことは至難の業だった。

 結果として、とうとうイギリス王城の中に敵が入り込んでいった。


***

<side 聖園優理>


 王城の中にどんどん敵が入り込んでくる。


 このままじゃまずい……。一番まずいのはイギリス国民が敵に回っていることだ。

 昨日の夜、美月さんは私にこんな言葉を言った。


『あなたの治癒の異能は何を基準に、治癒しているの?もし仮にあなたの異能が相手を正常な状態に治癒するという異能なら、今回の戦いのキーマンは貴方になるわ』


 今までに一度もやってないから正直、上手くいくかどうかは分からない。でも、もし美月さんの予測が正しいなら私の異能は精神状態も正常な状態に治癒できるはずだ。


『美月さん!試したいことがあるんです!イギリス国民を一か所に集めることはできますか?』

『分かったわ!』


 美月さんが異能を使って門を突破したイギリス国民を捕らえていく。その間に私は集中力を高めていた。


 今までのように一人一人治癒していたら時間的にも人数的にもとても間に合わない。範囲内にいる人たちを同時に治癒するような感じで……。


『優理!準備できたわ!』


 美月さんの準備は出来たみたいだ。ぶっつけ本番だけど、必ず成功させてみせる。


 美月さんが捕らえた五人程度のイギリス国民の方に両手を伸ばし、集中する。


『お願い……!』


 祈る様に呟く。次の瞬間、イギリス国民たちを淡く白い光が包み込んだ。


 その光が収まると、そこにはさっきまでと違い大人しくなったイギリス国民がいた。


 美月さんがイギリス国民たちに近づき何かを話した。すると、美月さんはその五人の拘束を解き、その五人は武器を持って門の方に走っていった。


『優理、彼らはもう正気を取り戻していたわ』

『ほ、本当ですか……!?』

『ええ……。ところで身体の調子はどうかしら?』

『特に問題はありませんよ。それより、早く他のイギリスの方々を正常な状態に戻さないと!』


 心配そうに私を見ていた美月さんだったが、私の反応を見て安心したようだった。


『そうね。騎士団員たちには私から説明するわ。さあ、反撃の時間よ!』



 美月さんと、美月さんから話を聞いた騎士団員の方々からの協力により徐々にイギリス国民の方々は正常な状態に戻っていった。

 それに伴って敵の勢いも弱まっていく。


 この調子でいけばきっと何とかなる。そう思った時、私の身体が蔓の様なもので縛られた。


『キャアアア!』


 周りを見れば何人かの騎士団員の方々も同様に蔓で縛られている。


 これって……誰かの異能?一体、誰が!?


 警戒心を強めていると一人の女性と五人の男たちが近づいてきた。


『折角、上手く行っていたのに邪魔されちゃうなんてねぇ……。それで、どうしてここに治癒の異能力者がいるのかしら?』


 私に近づき、殺気を向けてくる女性は日本語を喋っていた。


『あ、あなたは誰なの……?』


 私が質問を投げかけると、その女性は妖艶な笑みを浮かべて答えた。


『私は淫鬼。リバーシの八鬼神の一人って言えば分かりやすいかしら?』


 八鬼神!?

 八鬼神に会ったら逃げろ。私はそう教えられてきた。でも、今の状況じゃ私に逃げるという選択肢はない。


『こ、この蔓もあなたが?』

『いいえ。これは、私の可愛い下僕の一人の異能よ』


 下僕……?聞いたことがある。八鬼神にはあらゆる男を魅了し操っている魅了の異能力者がいるって……だとしたら後ろの五人の男たちはこの女性に操られていて、この女性は魅了の異能力者ということになる。


 でも、今の私の異能を使えばこの女性の異能を抑えることができるかもしれない。


 私がそんなことを考えていると、私を縛り上げる蔓の締め付けが強くなった。


『くっ……ああ!』

『さて、治癒の異能力者って私にとっては凄く厄介な相手なのよねぇ』


 更に蔓の締め付けが強くなる。


『あ、ああああ!!』

『悪いんだけど、ここで死んでもらえるかしら?』


 だ、だめ……。意識が飛んじゃう……。


 蔓の締め付けに意識が薄れていく。このまま殺されるのかと思った時、私の身体が解放された。

 そのまま倒れこみそうになるところを誰かに支えられる。


『優理、大丈夫かしら?』


 そこには金色に輝く剣のようなものを持った美月さんがいた。


<side end>

***

今更ですが基本的に『』は日本語、「」は英語だと思っていてください。

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