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第79話 イギリス攻防戦 その3

よろしくお願いします!

<side エリザード>


 イギリス王城の門を開き、外にいた男を王城内に入れる。

 王城の外には更に、最初に来た男と同じ格好の人々が数人迫ってきていた。


「爆弾を付けられている人間から爆弾を外して速やかに処理しなさい!それと、爆弾を付けられていない人間を王城内に入れないよう、門の周りの警備を強化しなさい!!」


 私の指示に従い、王城内の全ての人が駆け回る。


「ウィリアム、爆弾を付けられていた人を一人連れてきなさい」

「はい」


 部屋からウィリアムが出て行く。

 王城の外を見れば、まだ爆弾を付けられた人は門の方に向かっていた。更に、後ろの方で待機していた爆弾を付けられていない敵も門の方に向かってきていた。


 爆弾を付けられている人々を何とかしないときりがない。それに、人の命を軽んじているこんな作戦をいつまでも成立させるわけにはいかない。


『全員聞きなさい!爆弾を付けられた人々に関しては私と騎士団長で何とかします!だから、一時間だけ持ちこたえなさい!』


 スピーカーで門に近づいてくる敵を足止めしている騎士たちに声をかける。

 騎士たちは私の声で士気を再び高め、戦っていた。


「女王陛下、連れてきました」


 部屋の中に拘束された男とウィリアムが入ってきた。


「あなたたちに特攻を指示したのは誰なのですか?」

「だ、誰がお前らに話すか!さっさと俺たちの国をリバーシの皆様に明け渡せ!!」


 男の目には強い敵意が宿っていた。


「覚悟はしていましたが、意外ときついものですね……。どうしても言う気はないんですね?」

「当たり前だ!!」


 残念ながら目の前の男は口を割る気はないようだった。


「ウィリアム」

「はい」


 ウィリアムが男の首筋に剣を当てる。


「ひっ……」

「エリザード女王に忠誠を誓うと言いなさい」


 私の発言とともにウィリアムが殺気を放つ。


「い、いやだ……」

「言いなさい!!」

「い、いやだ!!」


 男は意地でも口を割るつもりは無いようだった。


 このままじゃ、まずい。でも、私には国民を傷つけることはできない……。


 その時、男の腕が斬り落とされた。


「ぎゃあああ!!」

「次は脚だ。最後に首を落とす。嫌なら、早く言え」


 男の腕を斬り落としたのはウィリアムだった。


「ウィリアム!あなた何を……「エリザード様は黙っていてください」


 ウィリアムの迫力に押され、私は黙ってしまった。


「さあ。どうする?」


 腕を落とされ、顔を青ざめている男に剣の切っ先を向けるウィリアム。その気迫に男の心は折れた。


「い、言います!エリザード女王に忠誠を誓います!だから、命だけは……!」


 男の言葉を聞くとウィリアムは剣を鞘に納めた。


「エリザード様。早くやるべきことを済ませてください」

「ま、待ちなさい!それよりも早くこの人の手当てを!」


 私が目の前の男に近づこうとした時、部屋に聖園優理が入ってきた。


『私がやります!』


 日本語で何か言うと、聖園優理は男に異能を使い始めた。すると、斬り落とされた男の腕が徐々にくっついていった。


「さあ、エリザード様。早く」

「あなたにはまだ聞きたいことがあるけど、分かったわ」


 ウィリアムに言われ、私は自らの異能を目の前の男に使った。


「私に忠誠を誓った従者よ。主人であるエリザードが命令します。あなたたちを特攻させた人物を教えなさい」


 私の持つ『主従の異能』はあらゆる人と主従関係を結べるというものだ。条件は相手に私への忠誠を何らかの形で示させること。そして、その忠誠を私が受け入れること。

 主従関係を結べる相手は十人という上限はあるが、主従関係を結んだ相手を意のままに操れるという強力な能力だ。


「はい……。それはギリアム様です」

「ギリアム……!彼はどこにいるのですか?」

「王城から少し離れた場所にある教会の中にいます」

「そうですか。ありがとうございます。あなたは少し眠っていなさい」


 私がそう言うと、男は静かに目を閉じて眠りだした。


「ウィリアム。ギリアムを倒して、可能ならば私の下に連れてきなさい」

「はい」


 私に背を向けるウィリアムにもう一つの疑問をぶつける。


「何故、この男の腕を斬り落としたの?」

「……優しさだけでは人の上に立つことはできないのですよ。エリザード様」


 そう呟いたウィリアムの表情はどこか悲しそうだった。



 ウィリアムが部屋から出て行き、部屋の中には私と眠っている男、そして男の腕を治療し終えた聖園優理が残った。


『聖園さん。感謝するわ。この人を助けてくれてありがとう』


 日本語で聖園さんにお礼を伝える。


『日本語、喋られるんですね。私にはこれくらいしかできませんから。それでは、私はまた下に向かいます!』


 聖園さんはそう言うと、私から背を向けて部屋から出て行こうとした。


『待って!……その、女王として、門を開けるという私の選択をあなたは間違っていると思うかしら?』


 気付けば私はそんなことを問いかけていた。

 まだ高校生の女の子に私は何を聞いているのだろうか。こんなことを聞かれても聖園さんも困るだけだと思い、直ぐになかったことにしようとした。だが、その前に聖園さんが口を開いた。


『私は間違っていないと思いますよ。全ての国民を守りたいと思うエリザードさんの思いは間違っていない。でも、きっとこの戦いで負けてしまえばエリザードさんの判断は間違いだと言われてしまう。だから、皆さん一生懸命戦っているんですよ。エリザードさんが最高の女王だと証明するために』


 聖園さんはそう言うと、部屋から出て行った。


 王城の門の付近を見れば、騎士たちが敵の侵入を妨げようと奮闘していた。数の違いと私たちが国民を殺せないという縛りから私たちの方が圧倒的に不利だ。

 この状況を招いたのは紛れもなく私だ。それでも、この王城にいる人たちは私に付いてきてくれている。

 ウィリアムの言葉は間違いなく正しい。実際にウィリアムがいなければギリアムまで辿り着くことはできなかった。


 それでも、私は私の思いを貫こう。


***

<side ギリアム>


「くくく……。やはりあの女王は国民を見捨てられなかったようですねぇ」


 教会の中から様子を見る限り、王城の門は開き門の前では騎士たちが必死に私たちの攻撃を抑え込んでいるようだった。


「次は人間爆弾が城に入った瞬間に爆破させますか。いや、国民共の体内に爆弾を仕掛けるのも面白そうですね」


 守るべき国民が目の前で爆発すればあの女王はどんな表情になるだろうか?顔を青ざめ、絶望するだろうか?それとも、気丈に振舞うのか?


 どうなろうと確実に王城の中にいる人間たちにはダメージを与えられる。


「さあ!引き続き特攻部隊には仕事をしてもらいますよ!!」


 部下たちに声を掛けた直後、教会の扉が開いた。


「な……!あなたは!?」

「エリザード様の命により、ギリアム。貴様を討つ」


 扉の先にいたのはウィリアム騎士団長だった。


「おやぁ?これはこれはウィリアム騎士団長ではありませんか。久しぶりの出会いだというのに私を討つですか。随分と面白いことを言いますね」


 ウィリアム騎士団長はイギリス国内では最強と呼ばれている。実際にその実力は私では到底敵わないし、リバーシの八鬼神と比較しても見劣りしないレベルだ。

 だが、ウィリアム騎士団長は私には勝てない。


 ウィリアム騎士団長の目の前で私の『変化の異能』を使い、私の姿をエリザード女王に変えた。


「ふふふ。ウィリアム。この私を攻撃できますか?」


 私の言葉にウィリアムは何も言わずにただ立ち尽くしている。


「ウィリアム。主人として命令します。そこで大人しくしていなさい」


 ウィリアム騎士団長はエリザード女王が幼い頃から傍にいて守ってきたと言われている。そんな彼のエリザード女王への思いは特別なものである。

 そのため、彼は偽物とわかっていてもこの姿の人物を傷つけることはできない。


「ふふふ」


 剣を抜き、ウィリアムに斬ってかかる。

 ウィリアムは私の命令に従い、何もしようとしなかった。


「ふふふ。ははは!!あなたは本当に馬鹿ですねぇ!!」


 ウィリアム騎士団長の鎧のせいで致命傷にはならないが、それでも私の一撃を受けるたびにウィリアム騎士団長は苦しそうに顔を歪めていた。


 勝てる。これならこの私がイギリスで最強と言われているウィリアム騎士団長に勝てる!


「くくく。本当にイギリスは馬鹿がたくさんいる国ですよ。今のあなたも、あなたが慕っている女王も!結局、あの女王は愚かなんですよ!力がないくせにイギリス国民全員を幸せにしたいなどという夢物語を語る!切り捨てる覚悟がない!だから、こうして私たちに追い詰められるんですよ!」


 渾身の一撃をウィリアム騎士団長に食らわせる。

 ウィリアム騎士団長は顔を伏せていた。


「まあ、安心してください。今日を持ってイギリスのトップに立つ人は私に変わります。私ならあの愚かな女王よりもこのイギリスを発展させることが出来ます。もしあなたが望むなら私の部下にしてあげても良いですよ?」


 次の瞬間、私の目の前には剣の切っ先があった。


「黙れ。貴様ごときがあの方を超えられるはずがない」


 いつの間にか私の目の前で剣先を向けてきていたウィリアム騎士団長からは強烈な圧を感じた。


 な、何ですかこれは……。身体が動かない?


「あのお方は誰よりも優しく、気高く強いお方だ」


 まさかこれがウィリアム騎士団長の『威圧の異能』なのか?この私がウィリアム騎士団長の威圧を前に動けなくなっているというのか!?


「厳しい現実を知り、自らの無力さを知っても尚、自らの在り方を曲げようとしない強さに人は惹かれていく」


 ウィリアム騎士団長が剣を自らの腰のあたりに持っていく。


「覚えておけ。私は何時だってあの方の一番の剣だ。あの方の邪魔をする者がいるならこの私が剣となり道を切り開く」


 ウィリアム騎士団長から放たれる強烈な圧力を前に私は動けないでいた。


「あ、ああ……あああああ!!!」


 ウィリアム騎士団長が放った突きが私の腹を襲い、私の身体が教会の壁に勢いよくぶつかった。


 最後に私が見たのは蔑んだ目で私を見下ろす邪鬼と淫鬼の姿であった。


<side ギリアム>

***

ギリアム撃破!

次回でイギリス攻防戦初日は終わりです!

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