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第78話 イギリス攻防戦 その2

よろしくお願いします!

<side エリザード>


 城内に朝日が差し込む。

 昨日の段階で城内にいる全ての騎士及び戦える者たちの配置は済んでいる。


「エリザード女王陛下、敵の影が見えました」


 騎士団長のウィリアムが呼びに来る。


「ありがとう。すぐに準備を整えるわ。あなたも早く配置に付きなさい」


 ウィリアムが部屋を出ていく。それを確かめてから私は着替え始めた。



~・~・~・~・


 王城の最上階、王城のある街を一望できる部屋のベランダに私は来ていた。この位置からでも既にこちらにゆっくりと近づいてくる国民の姿が見える。


 あわよくば国民と戦わなくて済む未来を期待したが、そう上手くはいかないらしい。


「エリザード女王陛下、準備は整いました」


 騎士の一人が私の前にマイクを持ってくる。


『敵はリバーシ、そしてイギリスの国民たちです。私たちにとっては苦しい戦いになるでしょう。それでも、負けるわけにはいかない。イギリス国民がもし自分たちがこの国を落としたと知れば、彼らは悲しみ嘆き自らの行動を恨むでしょう。ですが、彼らは悪くない。だからこそ、彼らの感じる罪悪感を減らすためにも、この国を守るためにも私たちは負けられない!気持ちを強く持ちなさい!!自らの目的を胸に刻み込みなさい!!女王として命令します!この国を、国民をリバーシという脅威から守り抜きなさい!!』


『ウオオオオ!!』


 騎士たちの雄たけびが響き渡る。

 士気は十分だ。これならきっと二日間乗り切ることができる。いや、絶対に乗り切って見せる。


 私が睨みつける先には王城のすぐそこまで迫ったイギリス国民とリバーシの姿があった。



***


<side ギリアム>


 おかしい……。


 戦いの幕が開けて数時間が経った。だが、未だに私たちは王城を落とすどころか、王城内に入ることさえできていなかった。


「どうなっているのですか!さっさと門を開きなさい!」

「先ほどから様々な武器を用いてイギリスの一般市民共に門を開けさせようとしているのですが、門を壊してもすぐに金属製の門が現れるらしく、きりがないとか……」

「壊れた門がまた出てくる?そんなわけがないでしょう!!さっさと門を壊して王城内に入りますよ!王城内に侵入できればこっちの勝ちはほぼ確定なのですから!」


 部下に怒鳴りつけ、早く門を開けるように指示を出す。

 邪鬼によって今や私の指揮下にあるイギリス国民も、リバーシの構成員たちも大した力はない。だからこそ、様々な武器を持たせたというのに全く役に立たない。


 もう昼は過ぎて、徐々に太陽が西に傾いてきている。

 時間が無くなってきた。このままでは役立たずのせいで私の計画が台無しだ。

 何か策はないか?あの門を簡単に開けられるようなそんな作戦……。


「……くくく。最高の作戦を思いつきましたよ。おい!誰でもいいからイギリス国民を数十人連れて来なさい!」

「は、はい!」



 部下に声を掛けてから暫くすると、私の下に数十人のイギリス国民がやって来た。


「よく来てくれましたね。今から皆さんに名誉ある重要な役目を任せたいと思います」


 黙って私の話を聞くイギリス国民たち。


「今から皆さんには一人一人爆弾を持ってあの王城に特攻してもらいます」


 私の言葉に顔を歪める国民たち。


「そ、それはつまり私たちに死ねということですか?」

「ええ。そうですよ。憎きイギリスを討ち、リバーシという素晴らしい組織のためであればそれくらい出来るでしょう?」


 私の言葉に対する国民たちの反応は多種多様であった。

 命を懸けてまで戦いたくはないというもの。喜んでやらせてほしいというもの。逃げ出そうとするものまでいた。


 部下たちに命令し、国民共を逃げられないように包囲する。


「やるという方はこちらに来てください。やりたくないという方はリバーシに逆らうということですよね?なら、ここで死んでいただきましょうか」


 私の言葉にさっきまで乗り気ではなかった者たちが慌てだす。


「そ、そんな!私たちはリバーシに逆らうつもりなどありません!」

「それなら、特攻していただきますか?」

「う……そ、それは……そもそもそこまでしなければならないのでしょうか?時間を掛ければ絶対にイギリスを落とすことはできます!」


「黙りなさい」


 殺気を放ちながら口答えをした男の前に行く。


「リバーシのボスは一刻も早く世界を支配することを求めています。こんなところで無駄な時間をかけてる暇はないのですよ。分かったらさっさと特攻してきてください」


 私の殺気を前にして、国民共は皆顔を青くしていた。


「まあ、安心してください。私の異能を使えばあなた方の命を救うことが出来ます。私だって大切な仲間を死なせたくはありませんから」


 顔を青くしている国民共に安心させるような笑顔を向ける。その笑顔と私の言葉に特攻を嫌がっていた国民たちも特攻をすることを決断してくれたようだった。


「では、皆さん後は私の部下の指示に従ってください」


 こうして数十人のイギリス国民たちは人間爆弾となるべく、私の部下について行った。


 その場からイギリス国民がいなくなった後、一人の部下が私のもとにやって来た。


「ギリアムさんの変身の異能にあいつらを助ける能力なんてあるんですね。驚きましたよ」

「あーそれですか。あるわけないでしょ」

「え……」


 呆然とした表情で私を見つめる部下。


「ああ言えば、馬鹿な彼らは大人しく人間爆弾になってくれますからね。それに、これから死ぬ予定の彼らに嘘を言ったところで彼らはそれに気付けませんからね」


 本当に馬鹿な国民共だ。自分たちの愛している国を自ら落とすために努力し、更には、特攻までしようとするとは。


「本当、馬鹿ですよねぇ」

「そ、そうですね」


 暫くして、別の部下から準備が整ったという報告を受けた私は作戦を開始するために準備を始めるのであった。


***

<side エリザード>


 戦闘が始まってから数時間、金の異能力者である金富美月を初めとした仲間たちの活躍により私たちは依然として王城内に侵入者を許していなかった。


 門は金富美月の異能で金属製のものが何度でも作れるから問題ない。壁を越えようとしてくる敵に関しては配置した騎士たちが抑えているようだ。


 この調子でいけば初日は何とか乗り切れるはず……でも、あの淫鬼や邪鬼がこの程度の攻撃で止まるはずがない。


 そう思っていた時、門の前から敵が急に離れていった。

 何か仕掛けてくると警戒心を高めると、門に一人の男が近づいてきた。


 その男の格好はまさしく一般人のそれだった。だが、よく見ると腕を縛られており、胸元には四角い黒い箱のようなものがあった。

 その男は門の前まで来ると叫びだした。


「助けてくれ!!この黒い箱は爆弾なんだ!このままじゃ、死んでしまう!頼むから誰か中に入れてこの爆弾を取り外してくれ!!」


 明らかな罠だ。そもそも爆弾が本物かどうかも分からない。この程度の罠で門を開けるわけにはいかない。


「た、頼む!!このままじゃ死んでしまうんだ!お願いだ!」


「……門を開けてそこの男の人を助けなさい!!」

「な、何故ですか女王陛下!門を開けてしまえばその隙に敵に侵入されてしまうかもしれないのですよ!!」

「分かっています!それでも、この国の国民を守ると決めた!なら、そこの一人の国民も見捨てるわけにはいきません!!」



 これから戦いは更に私たちにとって不利なものになる。そう分かっていても

私には目の前の死ぬ可能性を持った国民を見捨てることはできなかった。


 こうしてイギリス王城の門は開かれる。

 そして、戦いは更に激化していくのだった。


***

<side エリザード>

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