第73話 VSサイズ兄弟
今回若干短めです。
ブックマークしてくださった方々ありがとうございます!
サイズ兄弟が勝負を仕掛けてくると同時に雪鬼が真っ先に動いた。
全長三メートル程度の巨大な氷柱がサイズ兄弟に襲い掛かる。
「弟よ!」
「任せろ、兄者」
サイズ兄弟の青い方が前に出てきて、氷柱をその両手で受け止めにいった。
本来であれば受け止めきれるはずがないほどの巨大な氷柱が、青い方の手に触れた瞬間、手のひらにおさまるほど小さくなっていった。
「今だ!行け兄者!!」
「任せろ弟よ!!」
次の瞬間、青い方の背後からサッカーボール大の鉄球が投げ込まれる。
確か、兄貴の方は拡大の異能力者だったはず……ということは……。
「拡大!!」
咄嗟に隣にいた雪鬼を抱え、その場から全力で離れる。次の瞬間、僕らがいた場所には直径五メートルはありそうな鉄球が落ちてきていた。
「……なるほど。これが拡大の異能と縮小の異能か」
「いかにも!」
「我らサイズ兄弟は触れたもののサイズを操ることができる!」
「拡大を操るのは我、ビガー!!」
「縮小を操るのは我、スモー!!」
「二人」
「合わせて」
「サイズ兄弟!!」
再びポーズを決め自己紹介を始めるサイズ兄弟。ふざけた連中だが、敵の攻撃を弟のスモーが縮小、そして、兄のビガーが拡大の異能で攻撃という戦闘スタイルは中々厄介だ。
「兄者!敵には雪鬼嬢もいる。ここはあれでいこう」
「確かにそうだな。あれでいくか弟よ」
あれってなんだ?と考えていると、兄の方が弟の身体に触れた。次の瞬間、サイズ兄弟の身体は通常時の三倍ほどになっていた。
「流石に大きいな……雪鬼、あれ氷で覆えるか?」
「……いける。でも、少し時間が欲しい」
「分かった。なら、準備ができたら教えてくれ」
雪鬼が頷いたところを確認してから、僕はサイズ兄弟のもとに走っていった。
「ほお……この姿の我らに向かってくるとは、面白い!」
兄の方が鉄球を投げてくる。
最小限の動きで躱し、直後の弟の方が放ってくる蹴りを躱す。
体格差から考えて蹴り一つ当たっただけで致命傷になりかねない。極限まで集中力を高めて、行動しなくては。
鉄球を躱す、踏み付けようとする兄弟の足を躱し続ける。反撃したいが、絶え間ない攻撃のせいで中々攻撃するほどの余裕がない。
てか、雪鬼はまだなのか?
雪鬼の方を見るが、目を閉じて何やら集中しているようだった。
仕方ない……もう少し粘るか。
「ふんぬ!!」
六球目になる鉄球を躱す。
「ふははは!!さあ!もう逃げ場はないぞ!」
気付けば僕の周りを鉄球が覆っていた。
サイズ兄弟は恐らく初めからこれを狙って鉄球を投げこみ、攻撃をしてきたのだろう。
だが、こうなることは分かっていた。
「これで終わりだ!!」
僕の頭上に鉄球が投げ込まれる。
その瞬間、僕はある方向に走り出した。
ズン!!
「ははは!!まずは一人だ」
「流石は兄者!この調子でいきましょうぞ」
僕の生存確認すらちゃんとせずに雪鬼の方に歩み寄っていくサイズ兄弟。
だが、雪鬼には焦った様子はなかった。
「さあさあ!雪鬼嬢!仲間はいなくなったぞ」
「悪いが、大人しく倒されていただこう!!」
「……うん。準備できた。いつでもいいよ」
どうやら雪鬼の準備も出来たようだし、僕も動くとしよう。
「ん?準備?何のことだ?」
「兄者、早いところ倒してしまおう」
「おお。そうだ―――うお!?」
「あ、兄者―――!?」
呑気に会話しているサイズ兄弟の兄の背後に近づき、膝の裏側を刀の峰で強く叩く。
突然の行動に反応できなかった兄は片膝を付いていた。
片膝を付く兄に気を取られた弟の膝の裏も叩く。
いわゆる膝カックンというやつだが、自分よりでかいやつにきめるのは中々気持ちがいい。
そして、膝を付き頭を軽く垂れている状態であれば全長五メートル近い大男であっても頭に刀が届く。
「ぐっ!?な、何が―――!?」
無防備な兄の方の頭に刀をフルスイングする。勿論刀の峰でだ。
兄の方は白目を向き、その場に倒れこむ。
「あ、兄者をよくも!!」
片膝を付いた状態の弟の方がすぐに立ち上がり、僕に拳を振るおうとする。
だが、その弟の後ろには雪鬼が近づいていた。
「……氷の牢獄」
「あ……」
氷が弟の方の身体を一瞬で包み込む。そして、五メートルほどの氷像が出来上がった。
「……ん。中々いい出来」
出来上がった氷像を見て雪鬼が満足げな笑みを浮かべる。
よく見ると氷像には所々氷の華が散りばめられているし、見る人を魅了する美しさがあった。
「なあ。もしかして、このやけに芸術的な像を作るために時間を稼いでほしいって言ったんじゃないだろうな?」
「……?それ以外に何かあるの?」
僕が必死に稼いだ時間はこの少女の遊びのために使われたらしい。
「はあ……さっさと行くぞ」
「ちょっと待って。こっちもやる」
そう言うと雪鬼は兄の方も氷漬けにした。
雪鬼の様子を眺めていると、不意に嫌な予感がした。
「雪鬼!悪いが氷像作りは終わりだ」
雪鬼の身体を抱え、その場を離れる。直後に、壁から僕らを覆うように岩の壁が迫ってくる。
「……あの男やられたんだ」
雪鬼がポツリと呟く。
岩の壁が迫ってきているということは雪鬼の言う通り、戦鬼が岩石の異能力者を抑えきれなくなったということだろう。
「雪鬼、僕は岩石の異能力者がいる場所へ向かう。雪鬼はジャンヌさんと合流して捕らわれている人たちの解放を手伝ってやってくれ」
「……岩石の異能力者のガンジョウは看守長室にいるはずだから、そこを目指して」
「分かった」
迫りくる岩の壁を躱しつつ、僕は看守長室を目指した。
また次回もよろしければ見てください!




