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第72話 殴りこみ

 収容所の裏口に一台のトラックがやってくる。

 この収容所ではゴミと食材の運搬のために一日に一度トラックがやってくる。

 そして、この時が数少ない収容所の裏口が開く時だった。


 トラックに収容所内の人が気を取られているうちに素早く収容所内に侵入する。


「なっ!お前ら、誰……」


 収容所内にいた人に見つかったが、その直後に室内を氷が包み込んだ。

 室内にいた人も監視カメラも氷に包まれている。これで、監視している人が異変には気付くだろうがすぐには対処されないだろう。


「ここからは各自で動こう」

「じゃあ、俺は行ってくるぜ!!」


 待ってましたとばかりに戦鬼は一足早く収容所の奥に行ってしまった。

 それに続くように僕らも収容所の奥に向かっていった。



***


 雪鬼と供に奥に進んでいく。途中で出会った看守たちは全て雪鬼の氷に包まれて倒れていった。

 正直、僕はずっと雪鬼の後ろをついて行っているだけである。

 暇だ。


「……こっち」


 雪鬼の話だと、壁を越えて奥のゾーンに進むには一つだけある扉を通る必要があるらしい。そして、その扉の前には門番がいるらしいのだが……。


「……ついた」


 雪鬼の案内で辿り着いた大きな門の前には誰もいなかった。


 「誰もいないじゃないか」と言おうとしたその時、門が開き見慣れたロボットが三台姿を現した。


『『『……侵入者を発見。排除する』』』


 以前に戦ったこともある斉破重工製の対異能力者専用ロボットが僕と雪鬼に襲い掛かってくる。


「……邪魔」


 雪鬼がそう呟くと、ロボットたちを氷が覆う。

 だが、対異能力者専用ロボットがその程度で止まるはずもなかった。


 氷を力づくで破ってきたロボットが雪鬼に襲い掛かる。

 ロボットの拳が雪鬼を捉える直前で、ロボットは雪鬼の出した氷柱で吹き飛ばされる。


「……シン。早くやって」


 雪鬼の強さに感心していると雪鬼に睨みつけられてしまった。


「了解」


 氷柱で吹き飛ばされたロボットの頭部を刀で突く。

 既に倒したことのあるロボットだ。頭部を貫かれたロボットは沈黙した。


「……あと二台もよろしく」


 後ろを振り向くと、ロボットたちの下半身を氷が何重にも覆っていた。

 動けないロボットの頭部を刀で貫き、ロボットが動かなくなったことを確認した僕らは門を通り抜け、更に奥に向かっていった。


***


「……着いたよ。ここが最後の門」


 暫くたつと、雪鬼が足を止めた。

 目の前には一際大きな門がそびえたっている。そして、門の前には二人の男がいた。


「おお!兄者!久々の来客だ!」

「これはまた珍しい」


 青いマスクに青いふんどしを付けた男の胸には大きく弟と書いてある。

 また、赤いマスクに赤いふんどしを付けた男の胸には兄と書いてあった。


「おい、雪鬼。あの二人は日本出身なのか?」

「……違う。あれは贋鬼が二人にお土産で買ってきたものを二人が気に入って使ってるだけ」

「じゃあ、胸に書いてある漢字も贋鬼が?」

「……違う。あれは剛鬼」


 ふんどし買ったり、漢字書いたり、日本のアニメが好きだったり……どうもリバーシの異能力者には親日派が多い気がする。


「……あんなのと一緒にしないで」


 心読まれた!?

 僕が雪鬼と会話していると、男たちは何かに気付き声を上げた。


「やや!!兄者!あそこにいるのは雪鬼嬢ではないか!?」

「何!?おお、弟よ。確かにあれは雪鬼嬢!だが、雪鬼嬢はリバーシを抜けたはず……それに隣にいる得体の知れない男。怪しい!怪しいぞ!!おい、男よ!貴様は誰だ!!」


「人に名乗るときはまず自分からと教わらなかったか?」


「確かにそうだ!弟よ!我らの自己紹介を見せようぞ!!」

「おうよ!兄者!!」


 この兄弟は馬鹿正直なのだろう。

 僕の言葉を聞き、二人は自己紹介を始めた。


「我の名はビガー・サイズ!」

「我の名はスモー・サイズ!」

「「二人合わせて……サイズ兄弟!!」」


 ポーズを決め、どや顔を向けてくるサイズ兄弟。

 兄の方がビガーで、弟の方がスモーと言うようだ。恐らくだが、兄が拡大の異能力者で弟が縮小の異能力者だろう。


「さあさあさあ!我らは名乗ったぞ!」

「貴様の名前を聞かせてもらおうか!」

「「さあ!」」


 サイズ兄弟が名乗りを求めてくる。

 これは僕もできるだけかっこいい名乗りを決めるべきだろう。


「我が名はシン……。最強の無能力者にして、この世界を変えるものだ!!」


 決まった。完璧な名乗りだ。

 サイズ兄弟も僕の名前を聞いて驚いているようだ。


「な、何!?シンだと?」

「最強の無能力者だと!?」

「「誰だ!?」」


 どうやら僕の名はそこまで響き渡っていないようだ。

 僕の斜め後ろで雪鬼がくすくすと笑っている。


「おい。僕は割とお前らに打撃を与えてきたよな?」

「……くすくす。……あの二人は滅多にここから出ないから知らないのも仕方ない」


 く、くそ……。別に誰も悪くないけど、自信満々に名乗った分少しだけ恥ずかしい。


「まあ、いい!貴様らが侵入者であることに変わりなし!」

「侵入者は排除するのみ!いざ尋常に……」

「「勝負!!」」


 副看守長のサイズ兄弟が勝負を仕掛けてきた!!


***


<side ???>


 外が騒がしい。

 一日に二回しかない仮眠の時間を邪魔されたことに苛立ちながら、隣の看守長室に入る。


「どうした?騒がしくて仮眠も取れん」

「ガ、ガンジョウ様!申し訳ありません!どうも、侵入者が現れたようで……」


 この部屋のモニターには広い収容所にいくつも設置してある全ての監視カメラの映像が写っている。

 モニターに目を向けると、いくつかの映像に見覚えのある顔が三人分と知らない顔が二人分写っていた。


「戦鬼に陰鬼に雪鬼……?失踪したはずの奴らが何故ここにいる?」

「わ、分かりません!ですが、恐らく奴らの狙いは捕らわれている者たちを脱獄させることであると考えられます!」

「サイズ兄弟と門番用のロボットはどうした?」

「ビガー副看守長とスモー副看守長は侵入者の二人と戦闘中!門番のロボットたちは既に行動不能にされているようです」


 元八鬼神の三人にはロボットが無意味であることは当然か……。


「俺の異能であいつらを岩の壁に閉じ込める。それと、まだ動かしていないロボットどもがいるだろう。そいつらを動員する準備をしておけ」

「は!!」


 元八鬼神の三人がいたのは驚いたが大した問題ではない。この収容所はほとんど全て岩石でできている。そして、俺の異能はその岩石を操るもの。

 俺が看守長になってから10年がたつが、未だに脱獄者を出したことも、侵入者を外に逃がしたこともない。

 今回もそうなるように侵入者のいるところに大体のあたりをつけ、岩石の壁で侵入者どもを追い詰めようとした時、モニターの内の一つにこの看守長室にもの凄い勢いで近づいてくる一つの影があった。


「な!?お、お前は!?ぐああ!!」


 部屋の外で悲鳴が上がった直後、看守長室の壁に穴が開いた。


「……久しぶりだな」

「はっはっは!!遊びに来たぜ……ガンジョウ」


 穴から姿を見せた男は八鬼神一の戦闘狂であった。

 


<side end>

***

 主人公たち五人組はこの世界でもトップレベルの戦力を持っています。なので、無双状態になっても仕方ない。……仕方ないんです。

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