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第70話 加入

昨日は諸事情で更新できませんでした。

今回もよろしくお願いします。

<side ジャンヌ>


 シンという男が私たちの前に現れ、私たちの運命は大きく変わった。シンに引っ張られ、私たちはリバーシと戦い、勝利した。 勝利した日の夜はお祭りのような騒ぎだった。一人一人がもう今までの様に隅に追いやられることがないと喜んでいた。

 戦えない子供や老人たちもシンの仲間が助けてくれたようだ。本当に何から何までお世話になった。

 本当は恩を返したい。それに、彼について行けば諦めかけていた私の願いを叶えることが出来るかもしれない。だが、私はこの仲間を見捨てることなどできない。


「姉御!!あのシンって人はどこへ行ったんすか?」

「そうだ!あの人にお礼を言わないと!」


「あいつならもうどこかへ行ったよ。また、やらなきゃいけないことがあるってさ」


 私の言葉に仲間たちは残念そうな顔を浮かべていた。彼らにとって、シンという男は恩人だから仕方ないだろう。


「さて、あんたたち……明日は街の連中と話し合いに行くよ。もう、街にリバーシの連中はほとんどいない。だからこそ、これからについてしっかりと話さないとね」


「「「はーい」」」


 全員の返事を聞いた後、私は部屋に戻りゆっくりと眠りについた。



 次の日、仲間たち全員で街に向かった。街にはまだリバーシの残党は少し残っていたが、主力を失った彼らは今の私たちの敵ではなかった。


 街の牢獄で囚われていたかつての仲間たちを解放し、街に残った人たちと話をした。

 リバーシとの関わりを強く持っていた人たちは街を出て行っており、街に残ったのはリバーシの支配からの解放を願う人々だけだった。

 更に、昨日共に戦ったイギリスの騎士団員の人が街の警備に力を貸してくれることになった。


 問題点はまだまだ残ってはいるが、ひとまず私たちはようやく安全に暮らせる場所を手に入れることができた。



「ふぅ……。あんたたち、私はもう寝るから」


 昨日に続き、お祭り騒ぎをしている仲間たちに声をかけ、私は眠りについた。



「皆、聞いてくれ……。姉御についてなんだが……」


***


 目を覚ますと、街の人たちが騒がしくしていた。


「あんたら、こんな朝からどうしたんだい?」

「姉御!大変だ!!メアリーが連れ去られちまったんだ!?」

「何だって!?」


 メアリーは8歳の女の子だ。メアリーが何故連れ去られたのか、誰が連れ去ったのか……謎は多いが、とにかく探さなくてはならない。



「姉御!最後に見たやつの情報だとメアリーは街の外れの洞窟の近くに連れてかれたらしい!」


 洞窟……?まさか、シンが……?いや、でも……。


 間違いであって欲しいと願いながら私は洞窟へと急いだ。



 洞窟につくと、そこには見慣れた黒いコートに身を包んだ男とその男のそばにいるメアリーの姿があった。


「メアリー!シン……あんた、どういうつもりだい?」


「どうもこうもない。貴様が付いてこないと言うなら、嫌でも付いていくと言うように仕向ける。それだけのことだ」

「狙いは私ってことか……」


 この男は何がなんでも私を連れて行きたいらしい。だが、昨日までは無理やり連れて行くという雰囲気は全くなかった。何故、突然こんなことを?


 私がシンの変化について考えていると、メアリーが口を開いた。


「わ、わー。捕まっちゃったー。コワイヨータスケテー」


 ……ん?


 よく見ればメアリーの顔に悲壮感は全く無かった。


「うわー!メアリーを助けるためには姉御がシンの兄貴に付いて行かないといけないだって!?」

「くそー!仕方ない。姉御、シンの兄貴に付いて行ってください!」


 私についてきた仲間たちが棒読みでそう言ってくる。


「あんたらねえ……。そんな下手な演技までしてどういうつもり?」


 流石にここまで下手な演技をされればいくら何でもこいつらが何かを企んでいることに気付く。


「……姉御は、シンの兄貴に付いて行くべきだ」

「はあ……何を言っているのさ。これからリバーシの連中がまたあんたらを襲いに来たらどうするつもりなんだい?私はあんたらを置いてなんていけないよ。シンも悪かったね。こんな茶番に突き合わせてしまって……」


 シンに謝罪して、メアリーを預かろうとする。だが、シンはメアリーを手放そうとしなかった。


「あんた……どういうつもり?」

「貴様は聞くべきだ。貴様の仲間たちの心の声をな」


 シンがそう言った直後に、私の仲間が私を囲んできた。


「……俺たちは知っているんだ。姉御が元々フランスでリバーシと戦っていたことを……そして、その戦いで多くの仲間をリバーシの連中に奪われたことも知っている」

「姉御が俺たちを助けてくれている理由がかつて失った仲間と俺たちを重ねているからだってことも知っている。……その姉御に俺たちは救われた。だから、姉御が次に助けるべきは姉御のかつての仲間たちだろ?」


 かつてのフランスでのリバーシとの戦い。その中で、私は多くの仲間たちを失い、多くの仲間たちをリバーシに奪われた。

 優秀な異能力者は一人の頃らず連れ去られ、有望な若者も奪われた。私は仲間に庇われ続け一人生き残ってしまった。


「奪われたなら取り返せばいい。ジャンヌ、お前が失ったと思ったものはまだ手の届く位置にあるんじゃないのか?」


 シンの言葉が胸に響く。


「姉御!俺たちはもう大丈夫だ!イギリスの騎士団員の人と話した。この街を今後のリバーシと戦うための拠点にすることになったんだ。だから、イギリスの騎士団員の方々が守ってくれるって言ってくれた。それに、俺たちも自分の身は自分で守る。姉御に頼るのは……もうやめる」


 たった一回の勝利が知らぬ間に彼らを成長させたのかもしれない。彼らの目からは強い覚悟が感じられた。


「……馬鹿だね。シン、私があんたについて行けばメアリーを解放してくれるんだよね」

「ああ。約束しよう」


 目頭が熱くなる。今も昔も私は本当にいい仲間に恵まれた。


「分かった。私はあんたについて行くよ」


 シンの下からメアリーが駆け寄ってくる。その目からは涙が溢れそうになっていた。

 メアリーに「またね」と告げ、シンのもとに向かう。


 ここで皆とは一旦お別れだ。振り返り、仲間たちに手を振る。


「ありがとう!少しの間だけ、自分勝手に生きてくるよ!!」


 シンに連れられ、車に乗り込む。


 仲間のために生きてきた。だから、これからは私の我儘で勝手に仲間を助けるとしよう。


 

<side end>

***


 ジャンヌが仲間に加わった僕らは車を走らせ、ある場所へと向かっていた。


「ジャンヌさん、助手席に座っているのが戦鬼、運転席にいるのは陰鬼で後ろで寝転がってるのが雪鬼だ。彼らは元リバーシの人たちだけど、僕の仲間だ」

「そうかい……ジャンヌだ。よろしく」


 元々、リバーシと対立していたジャンヌさんだから元リバーシの人たちが仲間になることには抵抗があるかと思ったが、そんなことは無かったようだ。


「私の国を襲った奴はこの中にはいないしね。それに、今が仲間ならそれでいいさ……ところでそれがあんたの素かい?」


 そうだ。と言って改めてジャンヌさんに自己紹介する。あの口調はいつまでもやるのは疲れるしね。


「そんでよ……今から目指すとこはどこなんだよ?」


 戦鬼の言葉に全員がこちらに目を向ける。そろそろこいつらにもこれからの目的を伝える必要がある。


「僕らが目指す場所はポーランドにある……アウシュビッツ強制収容所跡だ」


 僕の言葉にジャンヌさんは少なからず驚いていた。逆に戦鬼は面白そうに笑みを浮かべた。


「僕らの目的は一つだ。アウシュビッツ強制収容所跡からリバーシに捕らわれた人々を解放する」



次回は優理やら美月さんサイドを描く予定です。

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