第67話 宣戦布告
今回は若干短めです。
目を覚まし、外に出る。日課となりつつある刀を使った素振りを行う。素振りをしながら、昨日ジャンヌさんの仲間たちが捕らえた男の一人との会話を思い出す。
***
「貴様らの知っている情報を教えてもらおうか」
「誰がてめえらに教えるかよ。言っとくが、俺たちの仲間がすぐにてめえらを殺すぜ」
「ギリアムを知っているな?」
「な……!?何でそれを……」
この様子だと、ギリアムのことは知っているらしい。
「貴様らの仲間はギリアムに殺されていた。このままだと貴様らも始末されるだろう。貴様が知っている情報を話すなら身の安全は保障しよう」
「………てめえの言っていることが本当だという保証は?」
ロープで拘束されている男に動画を見せる。それは、ギリアムに男の仲間が殺される姿が写っていた。
「……そうか、俺たちは捨て駒だったのか……」
悲壮な笑みを浮かべた後、男はギリアムの目的と計画について喋りだした。
「ギリアムさんの狙いはイギリスの王様になることだ。そのために、あの人はこれまで遠征のたびにイギリスの騎士団員を殺し、代わりにリバーシの構成員を紛れ込ませてきた。そして、今回の遠征が最後らしい」
「どうして、ここの人たちを殺そうとした?」
「ギリアムさん曰く、今回の遠征には厄介な男がついてきているそうだ。その男に協力者がつくと厄介なことになる。だから、その男の協力者になり得るゴミ屑たちを消したかったらしい」
***
今日、僕たち遠征に来ている騎士団員はギリアムさんに言われたように一度集まる。恐らくだが、ギリアムさんが騎士団員を殺すとするならそのタイミングのはずだ。まずはそこで騎士団員を殺させないようにする。そして、イギリス女王や騎士団長にこのことを何とか伝えたいが……。
考え事をしていると携帯が鳴る。
電話が終わるころに、ジャンヌさんが僕を呼びに来た。
「朝ごはんが出来たから、持ってきてやったよ」
「ありがとう。朝食後、どこでもいいから一か所に集まっておいてくれ」
「分かった」
朝食を置いて、ジャンヌさんは仲間たちのもとに戻っていった。
朝食を食べ終わり、暫くたってから僕は集まってくれたジャンヌさんたちの前に立つ。
「確認だが、皆の目的は街からリバーシの連中を追い出すということでいいのか?」
僕の言葉に全員が静かに頷く。
「そうか……ならば今からその目標を達成するために必要なことを教える」
そして、僕はギリアムさんの計画を潰しこの街をリバーシから奪う作戦を話した。
「この作戦が成功すれば全てが上手くいく。だが、上手くいくかどうかは微妙なところだ。それに、君たちには命がけで戦ってもらうことになる。これが最後の確認だ。戦う覚悟はできているか?」
「「「うおおおおお!!!」」」
一瞬の静寂の後、全員の雄たけびが森に響く。
「リバーシにとっても、世界連合にとっても弱者の僕らの存在はイレギュラーだ。だからこそ、未来を変えられる。行くぞ……敗北者であることは今日で終わりだ」
「「「うおおおお!!!」」」
見てろギリアム、リバーシの連中。強者に相応しい完封勝利を見せてやるよ。
***
日が沈みかけた頃、僕はジャンヌさんたちと別れイギリス騎士団の集合場所に向かっていた。今日がギリアムが言っていた三日目だ。僕の予想ではここでギリアムは騎士団員を全員始末しようとするはずだ。
集合場所には既に騎士団員とギリアムが集まっていた。
「シン君も来たようですし、ご飯でも食べながら話し合いをしましょうか」
ギリアムはそう言いながら全員に食べ物を渡していく。そして、ギリアムさん自身が誰よりも早く食べ物に口を付けた。それを見てから僕を含め騎士団員は全員食べ物を食べ、情報の共有を始めた。
情報の共有もかなり進んできたころ、異変は起きた。
「ぐ……か、身体が……痺れる?」
一人の騎士団員が地面に横たわる。
「お、おい……!な、俺も……?」
すると、次々と騎士団員が地面に倒れていく。僕自身も身体の痺れから地面に倒れていた。
「ふう……ようやく毒が回りましたか。毎度のことですが、副騎士団長の私が渡す食べ物は警戒されないものですね」
やはり、この毒を仕込んだ人物はギリアムだったようだ。
「ギ、ギリアム副騎士団長……?」
騎士団員の一人は信じられないと言った様子で目を見開いている。
「どうしました?まさか副騎士団長の私が皆さんを裏切るとは思っていませんでしたか?だとすれば、残念でしたねぇ」
ギリアムは僕らを馬鹿にしたような笑みを浮かべていた。
「ふざ……けるな……私たちは……誇り高き騎士団の……一員だ!……毒など……効かん!」
騎士団員の中でも一際屈強な男が立ち上がり、剣を構える。その顔には裏切者に対する怒りがにじみ出ていた。
「食らえええ!!」
速い動きとは言い切れないが、男はギリアムを斬るために走り出す。しかし、その男の剣がギリアムに届くことはなかった。
「ぐは……!!」
木の影から放たれた矢が男の肩を貫き、男は地面に倒れた。
「くくく……馬鹿ですねぇ。私に協力者がいないとでも思いましたか?」
ギリアムの言葉と供に木の間から次々と武装した人が現れる。ざっと見た感じ、その数は三十にいくかどうかというところだった。
「さて、この圧倒的不利な状況ですが……どうしますか?降伏して私の手下になると言うなら命だけは助けてあげますよ?」
ギリアムの言葉に騎士団員の面々は歯を食いしばり悔しそうにしていた。
「そうか……それは良かった」
「おや?シン君、命が助かってよかったですか?では、私への忠誠を……「いや、違う」……何ですって?」
どうやらギリアムは僕の言葉を勘違いしているようだ。
「お前の協力者が思ったより少なくてよかったと言ったんだ」
僕はそう言うと、ポケットに隠し持っていた佳奈ちゃん印の解毒薬を飲み込む。疫鬼の毒さえ解毒できるほどの代物だ。ギリアムごときが用意した毒を解毒することなど容易い。
解毒薬を飲み、立ち上がる僕を見て初めてギリアムさんの顔から笑顔が消える。
「……まさか解毒薬を持っているとは思いませんでしたねぇ。ですが、この数が少ない?どうやら、理解していないようですが、この中には異能力者もどきも五人混ざっています。それでも、その余裕が保てますかねえ?」
だが、ギリアムの余裕はまだ崩れ去っていないようだ。どうも、このギリアムという男には考える頭が不足しているようだ。
「賢そうな見た目と喋り方をしているのに、想像力はないんだな……何故、協力者がいるのが自分だけだと思っている?」
「何……!?」
空に向け、発砲する。その音を合図に、僕らを囲む三十人程度の敵を囲むようにジャンヌさんたちが姿を現した。
「さあ、ギリアム始めようか。お前の計画を真っ向から一つ残らず打ち砕いてやるよ」
苛立ちを隠そうともしないギリアムに僕は宣戦布告した。
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