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第63話 弱者がいるからこそ始まる物語

ここから話が徐々に動き出していく予定です。

 突如現れた男に対して、僕を囲んでいた人たちは一歩後ずさる。


「今すぐ俺の目の前から姿を消すなら命だけは助けてやるよ」


 警官のような男がそう言うと、囲んでいた人々は撃たれた男を連れてその場から逃げていく。必死に逃げていくその男たちを銃弾が襲い掛かる。


「「ぐあ!!」」


 銃弾を浴びた男たちが地面に転がりうずくまる。


「ははは!!本当に逃げられると思ってんのかよ……滑稽だなぁ」


 銃弾を放ったのは逃がすといった張本人だった。


「や、約束と違うじゃねえかよ!!」

「約束?てめえらみたいなゴミ屑との約束を誰が守ると思ってんだ?」


 叫ぶ男たちにゆっくりと近づきながら警官がそう言う。その警官が引金を引こうとする瞬間、僕は警官の腕を掴んだ。


「それくらいでいいんじゃないですか?彼らも反省してるみたいですし」


 できるだけ柔らかい口調で警官をなだめるようそう告げる。


「ああ?俺はあんたを助けてあげようとしてるんだぜ?感謝こそされても、あんたに止められる筋合いはねえ」

「ですが、とどめを刺すのはやりすぎじゃないですか?」

「……ははは!!おいおい、寝ぼけてんのか?こいつらはリバーシの支配に最後まで抵抗してた愚かな連中だ。リバーシに負け、尻尾巻いて隅に逃げていった弱者であるこいつらにこの国で人権なんてもんはねえんだよ」


 警官の言葉に地面にうずくまる男たちの悔しそうなうめき声が聞こえる。この街が賑わっていた理由が分かった。街にいた人は皆、リバーシに対して服従を誓った人々なんだろう。逆に、リバーシの考えに賛同できない人はこうして隅に追いやられているというわけだ。


「兄ちゃん、もしかしてこの国の人間じゃねえのか?なら、覚えとけ。この国では強者こそがルールだ。強い奴が弱い奴を支配し奪い取る。弱い奴は全て、強い奴の奴隷なんだよ」

「なるほど……」

「理解できたようで何よりだ」


 ああ、よく分かった。


「なら、この国ではお前は僕の奴隷だな」

「はあ?」


 僕の言葉を理解できていない男の腕を引き隙だらけの腹にボディブローを食らわせる。


「ぐはっ……てめええ!!」


 そして、警官が顔を上げたところに回し蹴りを食らわせた。

 しっかりと僕の蹴りは警官の頭を揺らしたようで警官はゆっくりとその場に崩れ落ちていった。


「おい、そこのあんたら」


 呆然と一連の流れを見ていた男たちに声をかける。


「は、はい……」


「あんたらの暮らしている場所に僕も連れていけ」


「え……あ、はい……」


 今回の僕がやることがたった今決まった。今回、僕は苦しむ民衆を導く革命軍のリーダー的な役割を目指す!!


「あ、でもちょっと待って」

「え……はい」


 その場に数人の男たちを置いておいて僕は宿泊する予定のホテルに戻って部屋にギリアムさん宛の置手紙をしてから元の場所に戻った。

 しかし、その場には誰もいなくなっていた。


「ちくしょおおお!!あいつらああああ!!!」


 夜空に僕の叫び声が響き渡った。


***

<side ???>


「はあ、あんたら何やってるのさ」

「す、すいません姉御」


 いつもの場所にいないバカ三人組を探しに来てみれば、街の住民を襲おうとしたところを逆に警官に狙われてしまったらしい。


「あんたらの気持ちはよく分かるよ。あの街の連中の中には私たちを裏切ったやつも多い。でも、基本的にあそこに近づいたらダメだ。あそこにいる警官やリバーシの構成員に見つかれば私たちは十中八九殺される」


 私の言葉に三人組は息をのんでいた。


「で、でも……俺たちはいつまでこうしてればいいんだよ!!たくさんの仲間たちがリバーシの連中にやられたんだ……このまま黙ってられるか!」

「だからってあんたに、私たちに何ができる?力もない、武器もほとんど奪われた。数少ない私たちの仲間の異能力者は一人残らずリバーシに連れていかれた!!」


 まだ状況を理解できていない三人組に現実を突きつける。


「私たちは敗者なんだ……リバーシの勢力はどんどん拡大している。つい最近も各国が襲撃されたらしい。もう、お終いなんだよ。世界はリバーシに支配される。私たちはそれを眺めることしかできないんだ……」


 昔は私もリバーシに勝てると信じていた。だが、その目でリバーシの戦力を目の当たりにした。私たちの近辺の国を含め、簡単にヨーロッパの半分の国が落とされる様子をこの目で見てしまったのだ。助けてくれるヒーローはいない……私たち弱者は何もできずに死んでいくのだ。


「本当にそうか?」


 私たちの住処に聞いたことのない男の声が響く。


「誰だ!?」


 声のした方を向くと、そこには漆黒のコートを身に纏った怪しい男がいた。


「牙を抜かれた猛獣は怖くないと言うが……果たして本当にそうか?」


 全く気付くことが出来なかった。この男はかなりの手練れだ。放たれるプレッシャーは凄まじく、この場にいる私たちでは敵わないということは一瞬で分かった。


「何が言いたい?」


 私の問いかけに対して男は饒舌に語りだした。


「牙が無いなら、爪で、爪も無いなら腕や足で、全身を使ってでも生きるために食らいつこうとする猛獣に人は恐怖を感じないと言うのか?……答えは否だ。人は何としても自分を打倒するという意志に恐怖する」


 なるほど、どうやらこの男は私たちの在り方に文句を言いたいらしい。


「確かに……あんたの言う通りかもしれないね。でも、その結果どうなる?打倒しようとする意志があったって力がなければ死ぬ!力を持っているあんたに私たちの何が分かる!!」


 この男の言っていることは所詮、力を持っているからこそ言えることだ。力の無い私たちにはその言葉は響かない。


「愚かだな……このまま黙っていたところでいずれ奪われる。それは他でもない貴様ら自身が理解していることだろう?」

「……っ!!」

「私は貴様らの救世主ではない……だが、貴様らが力を求めるならば、今の状況を変えたいと願うならば導こう。一日後、また来る。他の仲間にも伝えておけ。我が名はシン……この世界を変えるものだ」


 そう言い残して男はその場を後にした。


「ふざけた男だね……あんたら、あいつの言っていることなんて無視しなよ」


 すぐ後ろにいた三人に声を掛ける。三人から返事は帰ってこなかった。


<side end>

***


 いやー、なんか思ってたのと違ったなぁ……。

 三人組の血の跡を辿って、リバーシに追いやられている人々の住処を見つけることが出来た僕は、ウキウキで謎の実力者っぽく『仲間になりませんか?』と勧誘したもののあまり良い反応は得られなかった。仕方ないので出直すことにしたけど……大丈夫かなぁ。まあ、彼らを信じて待つとしよう。


 それより、明日はどうやって過ごそうか……。ギリアムさんには『探さないでください。三日後には戻ります』って手紙書いちゃってるしなあ……。

 警官を殴っちゃったから街にも戻りにくいしなあ……。仕方ない、明日は森の中をうろうろするかー。


 あ、寝る場所どうしよう……ご飯も食べてないわ……。


 泣く泣く僕は街に戻り、自腹を切って寝袋と食べ物を購入するのだった。


 ドイツの冬は寒かった……。


***

<side ギリアム>


 ホテルに戻ると、シン君の姿はなく。置手紙が一枚置いてあるだけだった。


「探さないでください……ですか。流石は女王様が呼んできた人物ですね。彼らに連絡しておきますか」


 シン君は恐らくかなりの実力者だ。こんなところであんな日本人一人に私の計画を邪魔されるわけにはいかない。


「やれやれ……私の目の届くところに置いておきたかったのですがねぇ」


 まあ、いい。彼が何をするつもりかは知らないが。準備は整った。最早、私の計画は誰にも止められない。


***

お読みいただきありがとうございます!

次回もよろしければまた読んでください!!

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