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第61話 主人公みたい

主人公が目指してるのは主人公?という話です。

 さて、激動の年末を終え、僕は自宅で元旦を迎えていた。


「「「あけましておめでとうございます。」」」


 例年通り、家族とおせちを食べながら談笑する。


「ああ、そういえば優理ちゃんとこのあとお参りに行くんでしょ?ちゃんと準備しときなさいよ。」

「うん。分かってるよ。」


 毎年、僕と優理は二人で初詣に行っている。それは今年も同じで、昨日の夜に優理から一緒に初詣に行こうと連絡があった。


ピンポーン


「はーい。」


 インターホンに反応して母さんが玄関に行く。


「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」

「あらあら。優理ちゃん、また綺麗になって……。心!優理ちゃん来たわよ!早く準備しなさい!!」


 母さんに言われ、僕は急いで準備を整えて玄関に向かった。


「あ、心君。明けましておめでとう!今年もよろしくね!」

「うん。明けましておめでとう。こっちこそ今年もよろしく。」


 母さんたちに行ってきますと伝え、僕と優理は近所の神社に向けて二人で歩き出した。



***


 特に何事もなく、二人で談笑しながら僕らは初詣を終え帰り道を歩いていた。ちなみにおみくじの結果は僕も優理も大吉だった。


「ねえ……心君。私に隠してることない?」


 唐突に優理が僕に話しかけてくる。優理に隠していることか……何だろうか?


「うーん。何のこと?」


「例えば、私の知らないところで異能力者と戦っているとか。」


 何だ、そんなことか。ああ、そういえば優理には言ってなかったっけ。別に隠してるつもりとかはなかったんだけどな。


「ああ、そのことね。それがどうかしたの?」


「……っ。どうして言ってくれなかったの……。」


 優理は表情を強張らせながらそう言った。


「んー。優理も忙しそうだし、無理に言う必要はなかったと思ったんだけど……伝えた方が良かった?」


「当たり前だよ!……私たち、幼馴染でしょ。確かに私じゃ頼りないかもしれないけど、金富さんじゃなくて私に話して欲しかった……。」


 俯いてそう言う優理の目には涙が浮かんでいた。


「そっか……。でも、僕は優理に心配かけたくなくて……。」

「かけてるよ!私を助けに来てくれたのが心君だって知った時、本当に驚いた。すごく嬉しかったけど、それと同じくらい怖かった。心君が死んじゃうんじゃないかって、私が弱いせいで心君が死んじゃうって……。」


 優理の目からは涙が止まることはなかった。


「ごめん……。こんなこと言うつもりなかったのに……分からないの……心君が何を考えているのか全然分からない……。」


「優理……。」


「心君のことは何でも知ってる気でいたのにな……。じゃあね……。」


 そう言い残すと優理はその場を後にした。


 僕は何かを間違えたのだろうか。離れていく優理の後ろ姿をぼんやりと見つめるけど、その答えを返してくれる人はいなかった。


パチパチパチ


『凄いわね。さっきのが日本の昼ドラでよく見ると噂の修羅場ってやつかしら。』

『いえ、先ほどのはどちらかというと痴話げんかというやつかと思われます。』

『あら、そうなのね。』


 ぼーっと立っている僕に近づいてきたのは、やけに豪華な服にサングラスをかけた女性と黒服にサングラスの男性だった。


『どちらさまですか?』


 英語で返事をした僕に二人は目を見開いて驚いていた。

 こう見えて、外国語だけは習得する努力をしていた。将来的に海外に行くつもりだったし。


『驚いたわね……。まあ、話が通じるならありがたいわ。単刀直入に言いましょう。シン君、私の国に来ないかしら?』

『女王様、それでは言葉足らずですよ。』


 女王陛下?この世界でその呼び名を受けているのはただ一人しかいないはずだ。


『あなたはもしかして、エリザード女王ですか……?』


 女性はニヤリと笑みを浮かべると、サングラスを外した。


『ええ、そうよ。もう一度言うわ。シン君、私の国に来ないかしら?』


 サングラスを外したその顔は、テレビでよく目にするイギリスのエリザード女王であった。


『国に来いということは貴方の下で働け……ということですか?』


『それが一番いいのだけれど、貴方がそれを拒否するのであれば自由に動いてもらってもいいわ。ただ一つだけ私たちの依頼を受けてくれるならの話だけど。』


『僕はまだ高校生です。冬休みも2週間後には終わりますが、それについてはどう考えていますか?』


『貴方が我が国に来てくれると言うならイギリスに留学という形にするわ。イギリス側の学校にも話は通しておくつもりよ。』


 悪くない話だ。僕自身、いずれはシンの活動範囲を海外まで広げたいと考えていたしその時であればこの話は受けるべきだったろう。だが、今の僕にそのつもりはなかった。


『申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。』


『あら、そうなの。理由はさっき貴方の下を離れた彼女のことかしら?それとも、F.Cの令嬢?まあ、いいわ。でも言っておくわ。貴方がもし力を望むならこっちに来るべきよ。まあ、今の漫画やアニメの主人公みたいな生活を続けたいならそこにいればいいと思うわ。気が変わったらいつでも連絡してちょうだい。』


 僕に連絡先の書かれた紙を渡すと、イギリス女王とその側近と思われる男は気になる言葉を残してその場を後にした。


***


 優理を泣かし、イギリス女王に出会ったその日の夜。僕はF.Cに来ていた。


「心君?急に来てどうしたの?」


 突然の僕の来訪に美月さんは不思議そうな顔を浮かべていた。


「えっと……戦鬼っていますか?」


 戦鬼の名前を出すと美月さんはあからさまに嫌そうな顔をした後、戦鬼のいる場所に連れて行ってくれた。


「あ?おお、シンか。久しぶりだな。」


 美月さんに頼んで戦鬼と二人きりにしてもらう。戦鬼は与えられた部屋のソファーでくつろいでいた。


「戦鬼……お前から見た僕はどんなやつだ?」


「あ……?あー、そうだな。強い奴。それだけだな。でも、何でそんなこと聞いてきたんだ?」


 僕は戦鬼に今日あったことを話した。


「くくく……なるほどなぁ……。確かにイギリス女王の言った言葉は確かに的を得てるな。」

「おいおい、お前まで僕を主人公みたいだって言うのか?」


「いや、だってそうだろ。大方、金の女と治癒の女がてめえのヒロインって感じだな。」


 戦鬼は心底可笑しそうに笑っていた。

 主人公と言われることは僕にとってあまり嬉しいことではなかった。

 ところで、美月さんと優理が僕のヒロイン?僕は二人に好かれていたのか?今日とか、優理に拒否された感じだったんだが……。


 戦鬼に別れを告げて部屋を出ようとした時、戦鬼に声を掛けられた。


「ああ、そうだ。もしてめえがヨーロッパに行くって言うなら俺が協力してやるぜ。リバーシがひっくり返そうとしている世界を俺らがもう一回ひっくり返すとか面白いと思わねえか?」


 

 考えとくとだけ告げて僕はその場を後にした。

 用事も済んだので、最後に美月さんに挨拶をして僕は家に戻ることにした。


「もう帰るのかしら?折角だし、泊っていけばいいと思うんだけど……。」


 なんとなく、さっき戦鬼が言っていたことが気になったので美月さんに思い切って聞いてみることにした。


「さっき、戦鬼が僕が主人公で美月さんは僕のヒロインみたいだって言ってたんですけど……美月さんはどう思いますか?」


「え!?……えっと、わ、私は嬉しいわよ!あ、でも私は一緒に戦いたいから守られるヒロインは嫌よ。」


 顔を赤くしながらも美月さんは答えてくれた。


「そうなんですね……。僕が主人公みたいってことはどう思いますか。」


「そうね……。ピッタリだと思うわ。」


 美月さんは僕が主人公だと言い切った。


「そうですか……。ありがとうございました。それでは。」


「あ、心君……行っちゃった……。」


 美月さんから返事を聞くと僕は足早に自宅へ帰った。


***


 自宅で考える。

 美月さん、戦鬼、エリザード女王は僕を主人公と評した。


 なんでだよ!?僕は!強い奴を目指してるんだ!!主人公の敵か味方か分かんないけどめっちゃ強い。そんな人物に僕はなりたいんだ!!


 最近の僕の戦いを思い返す。どれもこれもボロボロになりながらの勝利だ。なんなら、一度倒されかけてから復活しての勝利。しかも、美月さんとか優理に支えられての勝利だ。


 言われてみれば確かに主人公みたいだ……。

 これではダメだ……!一人で戦い敵を圧倒する。それこそが僕が目指す理想の強キャラ。


 最近忘れていたが、もしかするとこれはいい機会かもしれない。ここで、美月さんと優理との関係を切り、ヨーロッパに武者修行しに行く。


 そうだ。そうしよう。美月さんは僕のことが好きみたいな雰囲気出してるけど、きっと一時の気の迷いだろう。あれだ、吊り橋効果というやつだ。美月さんの気持ちを落ち着かせるためにも、改めて一人で八鬼神相手でも圧倒できるだけの力を手に入れるためにも、僕はイギリスに行く……!!






 



ということで主人公は美月さんや優理から離れていくみたいです。

優理が病みそうなんだけどどうしよう……。


てか、ヒロインと呼ばれた後に自分の下から離れていく主人公見たら美月さんショック受けそう……。


主人公に修羅場が近づいていくなぁ。

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