表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/91

第59話 戦いの後

 主人公視点が一つもないので幕間にしようかと思いましたが、本編で行きます。

 今回は優理、美月、戦鬼の3人の視点での話です。

<side 優理>


バン!!!


「ん……何の音……?」


 大きな音で目を覚ますと、さっきまで全身を襲っていたダルさが無くなっていた。そして、私の目に動かなくなったロボットとロボットの前でゆっくりと崩れ落ちていく心君の姿が見えた。


「心君!!」


 声を掛けるものの心君の意識はないようで、そのまま地面に倒れこんでしまった。

 身体を起こして急いで心君のもとに向かう。


「心君……しっかりして!!」


 声を掛けるものの反応はない。


「そ、そんな……死んじゃいや……。起きて……起きてよ……。」


 溢れてくる涙を止めることは出来なくて、私は心君の胸に縋りながら声を潜めて泣いていた。


トクン……。


「え……?」


 僅かだが、心君の心音が聞えた気がした。息を抑えて、心君の胸に耳を当てる。


トクン……トクン……。


 弱弱しかったけど、間違いなく心君の心臓は動いていた。


「……良かった……!!良かった!!」


 そうだ、早く心君の身体を治癒しないと。急いで異能を使って心君の身体を治癒する。私自身、身体はボロボロだったけど、そんなことを気にしている場合じゃない。


 何でこんなところにいるのか、とか、異能が無いのになんで戦ってたのか、とか、助けに来てくれてありがとう、とか……言いたいことがいっぱいあるの……。だから、早く元気になって……。


 必死に心君を治癒していると、扉から誰かが入ってきた。


「シン君!?……あなたは聖園さん?」


「え……?金富さん?」



<side end>

***


<side 美月>


 動けるようになった私と戦鬼はシン君が戦っているであろう奥の部屋に急いでいた。既に、F.Cの人たちに応援要請は送っている。もうしばらくすれば、きっと応援がくるだろう。


「……あー、悪い。ちと用事が出来た。」


 そう言うと、戦鬼はその場を離れていった。


「ちょっと!……必ず戻ってきなさいよ!!」


 戦鬼は右手を振りながらその場から離れていった。

 全く、あの男は……。いや、そんなことより今はシン君の方に急がないと……。


 暫くして、奥の方に扉が開いた部屋を見つけた。

 シン君がいる場所は恐らくあそこだろう。


 急いで、部屋の中に入る。中には、穏やかな表情で眠っているシン君と……そのシン君を膝枕している聖園さんがいた。


「聖園さん……。そこで膝枕している人はあなたの知り合いかしら?」


「え、ええ……。彼が以前話していた私の幼馴染です。」


 シン君が……。私の記憶が正しければ、聖園さんは自身の幼馴染に惚れていたはず……。


「あの、金富さんは心君を知っているのですか?」


「ええ。心君は私の初恋の相手だもの。」


「なっ……!?」


 聖園さんが驚いた顔を見せる。聖園さんは現時点で私のライバルだ。ここは強気に出て牽制しておいた方がいいだろう。


「今回、心君と私たちは協力関係にあるわ。聖園さん、後は私に任せて頂戴。」


 動揺している聖園さんの隙をつき、心君の身体を私の方に引き寄せる。私だって心君を膝枕したい。


「あ……!……美月さん、私は治癒の異能力者ですし心君は私の幼馴染なので私が心君はお世話しますよ。」


「いやいや……。」


 大丈夫だよと言おうとした時には私の膝にいた心君の頭は聖園さんの膝の上に移動していた。


 は、速い……少しも見えなかった……。そう……あなたの思いもかなりのものということね……。でも、私だって負けられないの!!


「あ……!!」


 聖園さんの膝から心君を奪い返す。

 今、ここで私と聖園さんの心君争奪戦が開戦した。


「あ、心君の寝顔可愛い……。」


「え……?」


 言われてから心君の寝顔を見ると、そこにはとても可愛らしい心君の顔があった。

 あー、もう好きだなぁ……。


 一瞬の気の緩み、それを見逃すほど聖園さんは甘い相手ではなかった。


「な……!?」


「残念でしたね。私は!幼馴染なので心君の寝顔は見慣れているんです。」


 私から心君を奪っていった聖園さんが自慢げにこっちを見てくる。

 く……ここで幼馴染かそうでないかの差が出るなんて……。でも、私だって心君との思い出は負けてない!!


「そう。でも、私は心君を助手席に乗せてドライブに行ったことがあるわ。そう言えば、心君もドライブデートは初めてって言ってたわね……。私が心君の初めて貰っちゃったわ。」


「じ、助手席でドライブデート!?わ、私が大人になったらしたかったのに……!!」


 悔しさに震えている聖園さんから心君を再び奪い返す。


「あ……!……金富さんはどうやら私のライバルの様ですね。」


「そうみたいね。でも、譲る気はないわよ。」


「当然ですよね。」


 ふふふ。と二人で笑いあう。やっぱり、この子には負けられない!!

 私が心君の右腕、聖園さんが心君の左腕を掴んで私たちの思いでのぶつけ合いが始まった。


「私は小さい頃、心君と一緒の布団で眠ったことがあります!!幼馴染なので!!」

「それなら私は家族公認で心君との仲は認められているわ!!むしろ、おじいちゃんも心君と家族になりたがっているし!!」


「私は小さい頃に心君に助けられたことがあります!!」

「それなら、私だって心君に2回も助けられたわ!!」


「私はーーー!!」

「私だってーーー!!」



「いい加減にしてください!!シン君は私たちが回収します!!お二人も怪我人なのですから、早く病院に行きますよ!!」



「「あう……。」」


 いつの間にか来ていたF.Cの救護班の人たちに頭を叩かれて、ようやく私たちは言い合いをやめたのだった。


 それにしても……聖園さん。強敵ね……。


 その後は心君を連れて、私たちは病院へと運ばれていった。あ、戦鬼はいつの間にか車に乗っており、呑気にいびきをかいて寝ていた。


<side end>

***


<side 戦鬼>


 金のやつと別れ、たまたま目に入ったあの男を探しに行く。その男は割とすぐに見つかった。


「よお……久しぶりじゃねえか。」


「ん……?ああ、久しぶりだね戦鬼。」


 俺が見つけた男、贋鬼はいつもの様な嘘くさい笑顔を浮かべていた。


「てめえが何でこんなところにいるんだ?」


「んー特に理由はないかなぁ……。強いて言えばシンの戦いでも見学しようと思ってね。まあ、僕の予想通り疫鬼はやられちゃったみたいだけど。」


 味方のはずの疫鬼がやられたことを心底可笑しそうに贋鬼は笑った。

 元々、俺たち八鬼神に仲間意識なんてものはないが、それにしても自分の味方がやられたことを可笑しそうに笑うこいつはどこかいかれている。


「けっ。そうかよ……。ところで、てめえらのボスは元気にしてんのかよ?」


「ああ、すこぶる調子はよさそうだね。君の武器の異能もよく馴染んでるみたいだよ。」


 どうやら、今回の戦いでまた戦力が減ったことはこいつらにとって大した問題ではないみたいだ。


「なら、これからも世界のために頑張るこったな。あばよ。」


 なんとなく昔のよしみで話しかけてはみたが、やっぱりこいつは掴みどころのねえ気持ち悪いやつだ。特に用事もない以上、さっさと立ち去るとしよう。

 だが、背を向けた贋鬼は俺に意味深なことを言ってきた。

「ああ……そうだ、戦鬼。僕は君には期待しているんだ。もしかすると、君も本物になれるかもしれないからね……。」


「ああ……?てめえ、何わけわかんねえこと言って……ちっ……もういねえか。」


 贋鬼の方を向いたが、既に姿は無くなっていた。

 本物だとかなんとか、わけわかんねえ……。まあ、いいか。

 ちっ……。この戦いが終わればまたしばらく牢屋の中か……つまんねえなぁ……。


 逃げようかとも思ったが、いろんな奴から追われるのもめんどくさいと思った俺は大人しくF.Cの奴らがいるであろう方向に向かっていった。


<side end>


 

次回は主人公と有本一家の話です!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ