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第58話 決着

 ブックマークを付けてくださった方々、ありがとうございます!

「ひひひ……僕を倒す?そのボロボロの身体で?」


 疫鬼は最初こそ動揺していたものの、未だに完全回復はしていない僕を見て余裕の笑みを浮かべていた。


「それは、やってみなきゃ分からないだろ。」


「確かに、油断は良くないね。」


 疫鬼は項垂れている優理を僕に見せつけるようにしてきた。


「さて、この女を助けたければ動かないことだね……。」


 ニヤニヤと笑いながら疫鬼はロボットの方に歩いて行く。


「さっさと乗れよ。僕は元からロボットに乗ったお前を倒すつもりだ。」


「へえ……。余裕じゃないか……ひひ!」


 ロボットに近くまで来ると、疫鬼は優理をその辺に放り投げてロボットに乗り込んだ。


『ああ……そういえばシンの唯一の武器はここにあったね……ひひひ!』


 ロボットの胸に突き刺さっている刀を抜き取ると、疫鬼はその刀を後ろの方に放り投げた。


『ひひひひひ!!これで、君には武器もない!身体もボロボロ!その状態で!どうやってこの僕に勝つつもりなのかなぁ!!』


「弱い犬ほどよく吠える。御託はいいから、かかってこい。」


 安い挑発だったが、疫鬼には意外ときいたようですぐにこっちに突っ込んできた。


『なら、さっさとぶち殺してやるよおおお!!』


 身体はボロボロ、正直、意識だってさっきから朦朧としていてまともな思考は出来そうもない。だが、直感が働いて、身体が動くならそれでいい。


 右のおお振り。こちらが動けないと思っている舐めた動きだ。


『……なに!?』


 僕はロボットの股の下をくぐりぬけ、一直線で刀のもとに向かう。あれがないと戦いにはならない。


『させるかあああ!!』


 後ろからロケットランチャーのようなものが放たれた気がする。恐らくは追尾型だろう。

 刀に向かって走りながらロケットランチャーを躱す。来る場所、タイミングが分かれば、追尾型とは言え避けることはそう難しくない。


『くそ、くそ、くそおおおお!!』


 やけくそになったのか疫鬼がロケットランチャーを更に3発追加で撃ってくる。

 だが、今の僕には行動の最適解が分かる。


 迫りくるロケットランチャーを躱しながら、刀を拾う。刀があれば、ぶんぶん飛び回るロケットランチャーを斬り落とせる。

 動きを止めて、刀を構え、手に力を込める。ロケットランチャーを躱すだけでも身体は悲鳴を上げていた。

 ここから、刀を振って疫鬼を斬ろうと思ったらしばらくは入院生活かもしれないな……。まあ、別にいいか。ここでこいつをぶっ飛ばせるなら、後はどうでもいい。


 向かってくるロケットランチャーの心臓部、というより追尾するためのシステムが搭載されているであろう部分を斬る。

 4発全てを斬り落とし、一気に疫鬼との距離を詰める。


『……こ、このお!!』


 右ストレート、からの毒ガス。


 戦鬼と戦った時と同様に、相手の次の行動が手に取る様に分かる。毒ガスを吸えば、今の僕ではすぐに行動不能に追い込まれるだろう。

 だが、僕の直感が告げている。


(突っ込め!!)


 右ストレートを躱し、ロボットの懐に潜り込む。


『……ふひ。ばあああか!!』


 ロボットの全身から毒ガスが噴射される。


『ふひひひひ!!……ボロボロの君じゃ、このガスを食らえば死んじゃうかも……ひっ!?』


 疫鬼の乗るロボットに空いた穴、さっき僕が貫いたことでできた穴に再び刀を突き差す。


「随分、嬉しそうだな……。ゴフッ……その顔、すぐに歪めてやるよ。」


 刀を下に振り下ろすように力を込める。

 ロボットの装甲は内側からの力に弱かったのか、刀は徐々に下にめり込んでいく。


『いぎゃああああ!!か、肩がああああ!!』


 僕の刀はきっちりと疫鬼の肩に食い込んでいるようで、疫鬼が苦しそうに悲鳴を上げる。


『く、くっそおおお!!死ねよおおお!!』


 疫鬼が僕を殴ろうとする。僕はその攻撃を避けるため、刀から手を放しその場に屈む。屈むのと同時に、ポケットから、注射器を取り出し注射器の中身を身体に打ち込む。そして、銃を手に取り、その時を待つ。


『ひ、ひひひひ!!刀から手を放したな!!』


 疫鬼はロボットに刺さっている刀を抜き取り、後ろに放り投げる。


『刀さえなければ……お前なん……て……。』


 疫鬼の声が弱弱しくなる。それはそうだ。いつの間にか、銃口を頭に向けられていたら誰だってそうなるだろう。

 初めから、僕の狙いはこれだった。刀で疫鬼の意識を落とせるならそれが一番だったが、そう上手くはいかない。

 だから、ロボットに細い銃口が入る程度の穴を空けた。そして、疫鬼が刀を抜いた直後に、その穴に銃口を差し込んだ。


「何か、言い残すことはあるか?」


『ふひひひ……お前からは僕の姿は見えていないはずだ……そ、その状態で当てられる……ぎゃああああ……!?』


 ごたごたわめく疫鬼の左耳に銃弾を撃ち込む。


「次は額を狙う。」


 額があると思われる場所に銃口を向ける。もう、疫鬼に余裕は少しもなかった。


『く、くそくそくそ!!……な、何故だ!お前は僕の毒ガスを食らって、ウイルスだって食らっている。なのに、なのに!!』


 悔しそうにわめく、疫鬼にさっき使った注射器を見せる。それは、佳奈ちゃんが出発前に僕に渡してくれたワクチンだった。


「僕もすっかり忘れていたけれど、これが僕を救った。」


『は……?な、何だよそれ……僕のウイルスに抗体があるわけないだろ!?』


「ないなら、作る。それだけだろ。そうやって昔からたくさんの恐ろしいウイルスを人間は攻略してきたんだ。お前のウイルスがどれだけ凄かろうと関係ない。科学者は必ず、お前を超えていく。」


『は……?な、何だよそれ……。て、低能な科学者に僕が負けるわけないだろ……!!』


「これで終わりだ。5カウント目でお前を撃つ。」


「1」


『ま、待て……た、助けよう!!ウイルスは解除するから……!!』


 疫鬼が助けを求めてくるが無視だ。


「2」


『も、もうシンにもシンの関係者にも手を出さない……!だから、やめてくれ……!!』


「3」


『そ、そうだ!!お前の望むものをやる!だから、だからあ!!』


「4」


『嫌だああああ!!死にたくない!死にたくない!!』


「5」


『うあああ!!ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさーーー』




バン!!!




 ロボットからの反応は消えた。それと同時に周りに立ち込めていた毒ガスが消えていく。どうやら、疫鬼は予想通り気を失ったようだ。


「ふう……。良かったな、ちょうど玉切れで。まあ、気絶してて聞こえていないみたいだけど。」


 疫鬼を倒したことで僕の身体の中にあった毒やウイルスも消えていく感覚がある。だが、純粋に身体に残っているダメージは予想以上に大きく、立っているのがやっとの状態だった。


 あー……優理は大丈夫かな……美月さんと戦鬼はどうなっただろうか?まあ、今はいいか……。

 佳奈ちゃん、ありがとう。約束は守ったよ……。


 消えゆく意識の中で、誰かが僕を呼ぶ声が聞えた気がした。




 佳奈ちゃんのワクチン云々が思い出せない人は、第50話を読み返して見てください!

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