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第57話 覚醒

 本当に、本当にお待たせしました!!

 かなり久しぶりの更新ですが、よろしくお願いします!!

 ドスッ


『……ひぃ!!……は、ははは……ビビらせやがって……。』


 僕の手から伸びた刀はロボットの装甲を貫通したものの、疫鬼には届いていなかったようだった。


 くそ……。意識が朦朧としてきた。とどめがさせていない以上、倒れるわけにはいかない……。


 刀の鞘を支えにふらふらとしながら立ち上がる。

 だが、毒が全身に回った状態で、隙だらけの僕を疫鬼が見逃すわけがない。



ドゴオンッ!!


 ロボットの太い腕から放たれた一撃が脇腹に突き刺さる。


「……げほっ……。」


 壁に全身を打ち付けられ、口からは血が出ていた。


『……ひひひ!ようやく、くたばったみたいだねぇ……。これから、じっくりと嬲り殺してあげるよ……。』


 疫鬼が乗ったロボットが少しづつ近づいてくる。


 くっそ……。早くたたないと……。


 何とか立ち上がろうとするものの、脇腹に響く激痛と、全身を襲う倦怠感から身体を上手く動かせない。


『……ほうら、捕まえた。』


 僕の近くまできたロボットに腕を掴まれる。


『簡単に死なないでね……。』


 そう言うと、ロボットは僕の身体を床にたたきつけ始めた。


 一回、二回、三回と全身が床に叩きつけられる。三回目を過ぎたあたりで、僕の身体は完全に動かなくなっていた。



『……あれ?……もう終わりか。……最後くらいは君の顔を生で拝んでおこうか……。』


 朦朧とした意識の中、疫鬼が近くに歩いてきたのだけは分かった。


「……ひひ!所詮は無能力者……大したことはなかったね……。」


「……疫……鬼…………。」


 疫鬼はロボットから降りていた。


「……どうしようか。君をこのまま殺してもいいけど……無能力者でありながら、戦鬼を倒したその身体はすごく興味深いなぁ……。……そうだ、モルモットにしよう。」


 動け……今なら、疫鬼の顔面をぶん殴れる……。


 だが、僕の身体は言うことを聞いてくれなかった。


「……ひひひ。この毒を使えば、君は脳死状態になる。……安心してよ……痛くはないからさ……。」


 くそ……ダメだ、諦めたらダメだ……!何か、何かないのか……!?



 まさしく絶体絶命。追い詰められたその時だった。


「心君!?」


 閉まっていた扉から光が差し込み、懐かしい幼馴染の声が聞えてきたところで僕の意識は消えていった。



******


<side 優理>


 目を開けると、そこは薄暗い研究所のような場所だった。


 あれ……私、何でこんなところに……。それに……何だか全身が寒い……。


 異能を使って全身を治癒しながらゆっくりと考える。


 そうだ……私は何者かに連れ去られて……それで、誰かに助けられたような……。

 その時、私の身体に被せられていたものに気が付いた。


 何だろう、これ……。


 私の身体に被せられていたのは、どこか見覚えのある黒いコートだった。


 そうだ……。これ、この間私と神崎君を助けてくれた人が身に付けていたコートと一緒だ。確か、名前は……シン……だったような気がする。


ドゴオンッ!!


 その時、奥の方から凄い音が聞こえた。


 何の音だろう……。何故か分からないけど、嫌な予感がする……。行ってみよう。もしかしたら、シンって人が戦っているのかもしれない。



 治癒したおかげで本調子とは言い切れないけど、とりあえずは動ける。私は急いで音が聞こえた方に走っていった。



 少し進んだ先に大きめの扉が見えた。


 音が聞こえなくなったけど、確かにここから聞こえていたはず……。


 意を決して扉を開く。



 真っ先に視界に飛び込んできたのは、どこか見覚えのある男性の倒れた姿だった。


 ……え?……うそ……。


 男性の顔がチラッと見える。その顔は私がよく知る幼馴染の顔だった。



「心君!!」



 私の声が聞こえたのか、心君に何かしようとしていた男が動きを止めて私の方を見つめる。


「……ん?ああ、君か……。逃げずにここまで来てくれたのはラッキーだね。ひひっ!シンを始末した後に君の相手をしてあげるから少し待っててよ。」



 私じゃきっと勝てない……。


 私の大切な人を痛めつけたであろう男の不気味な笑みを見て、私は思わず後ずさりしてしまった。


 ……だめ!ここで引いたら心君が殺されてしまう。


「し、心君から離れて!!」


「……んー?どうしようかなぁ?」


 男は不気味な笑みを浮かべ私の方に歩み寄ってくる。


「君が、僕のおもちゃになってくれるなら考えてあげてもいいよ。」


 そう言うと、男は私との距離を一気に詰めてきた。


「くっ……。」


 私はすぐに構えを取り、男の攻撃に備えた。


「ふひひ……。」


 しかし、突如めまいが私を襲った。


「え……?あ、あれ……?」


「ひひひ……。流石の治癒の異能力者でも僕の濃厚な毒ガスの前じゃ……無力だね……。」


 意識が遠のいていく。まただ……。あの時と同じで私はまた大事なところで役に立てない……。

 視界の端で心君の姿が見える。


 ダメだ……!せめて、せめて心君だけはここから逃がしてみせる……。


 再度、治癒の異能を使って全身を治癒する。完全に治癒することはできなかったが、さっきより身体は動く。私は、完全に油断している男に近寄ってお腹を思いっきり蹴りつけた。


「ひひひ……毒で苦しむと……ひ、ひぎゃああ!!」


 男はお腹を抱えて苦しそうにその場に膝を付いた。

 今がチャンスだ。

 すぐに心君のもとに駆け寄り、全力で心君の身体を治癒する。


 心君の治癒をしているときは私の身体を治癒することはできない。毒ガスですぐにでも飛びそうな意識を何とか繋ぎとめて私は心君の身体を治癒する。


「ぐ……。」


 少しではあるが心君に意識が戻っているように思えた。この調子で頑張れば……。そう思った時、突然息が苦しくなる。


「……ゴホ……な、何これ……意識が…………。」


「よ、よくも……やってくれたね……。ひひひ……許さないよ……絶対に殺してやる……。」


 振り向くと、私の背後から男が近寄ってきていた。


 息苦しいのは、あの男のせい……?ダメ、心君の治癒に集中して……。


「無視……するなぁ!!」


「きゃあ!!」


 近づいてきた男に髪を掴まれる。


「ひひひ……今更、治癒してもシンはもうボロボロだよ。無駄無駄……。それより、よくもやってくれたね……?」


「あ……く……苦……しい……。」


「君は僕の特別な毒で……殺してあげるよ。」


 男の手が不気味な色に染まる。そして、その手が私の首に当てられた。


「ああ……ぅああああ……。」


 首に激痛が走り、頭が痛くなる。吐き気と目まいが止まらなかった。あ、ああ……このまま私、殺されるんだ……。心君も守れず、殺されちゃう……。


「ごめん……ね……。」


 頬を涙が伝う。ただただ悔しかった。悲しかった。情けなかった。大好きな人を守れない自分が不甲斐なかった。


「ひひひ!!後悔して死ぬといいよ!!」



<side end>

******



『ごめん……ね……。』


 誰に謝っているんだ?誰が優理を泣かしているんだ?


(お前だよ。)


 僕……なのか……?僕が優理を泣かしている元凶なのか?


(そうだ。弱いお前がこの状況を生み出した。何が最強の無能力者だ。結局、今回も前回もお前は誰かに助けられて戦えている。)


 確かに、そうだ。僕は一人だけでは何も出来ていない……。

 僕は弱い。


(そうだ。お前は弱い。弱いお前に聞く。これからどうする?)


 これからどうするか……だって?そんなもの決まっている。疫鬼を倒す。

 そして、優理を有村さんを、佳奈ちゃんを救う。


(ああ、そうだ。お前はそれでいい。お前という人間の真の強さは異常なほど鋭い直感でも、八鬼神と張り合える戦闘技術でもない。目的を達成するまでの意志の強さだ。)


(さあ、立ち上がれ。お前のその意志の強さに俺たちの直感は反応した。お前こそがこの『異能世界』に終止符を打つことが出来る男だと思った。)


 僕の頭で喋りかけるこいつらが誰かだとか、こいつらの言っている『異能世界』に終止符を打つことが出来る男だとかは……知らない。知る気もない。

 この状況で僕が思うことも僕の直感が告げていることも一つだ。




「おい……。僕の女から手を放せ。」


「ひひひひ?……な、何でお前が……?」


 疫鬼は明らかに動揺していた。当たり前だ。どう考えても動けないはずの男が立っているのだ。


「……お前のせいで、最悪な気分だ。僕は弱かった。だから、今も僕の気に入らない状況になっている。」


「な、何だ?……自分の立場でも自覚したか……?」


「ああ……。痛いほどにな。だから、お前をぶっ倒して僕は強いやつになる。」



 最終ラウンドだ。長く続いたこの戦いを今、ここで終わらせる。



 正直、この作品に関しては作り直すことも考えましたが、今の状態で完結を目指すことに決めました。これからはできるだけ更新していくつもりなので、よろしくお願いします。


 それと、「最大、最高にして最強の一撃を求めて」という小説を新しく書き始めました。こちらの作品の方もよろしければお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2381gj/

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