第51話 来たぜ。
第51話です。
今回は話のきりの良さから若干短めになっています。
「着いたわよ。」
車から降りた僕らの目の前には雪が積もった森が広がっていた。
「お待ちしておりました。美月お嬢様。目的地まで案内させていただきます。」
すぐに僕らより先に来て調査をしていた人たちがやって来た。
僕らはその人たちについて疫鬼たちがいるであろう場所へと向かった。
暫く歩くと、樹海には似つかわしくない大きな建物の姿が見えた。
「すいませんが、私にできる案内はここまでです。くれぐれもお気をつけて…。」
「ありがとう。」
案内してくれた人にお礼を言って僕らは真っすぐ建物へと歩みを進める。
建物の前で一度足を止める。
「美月さん…戦鬼。準備はいいか?」
「ええ。」
「ああ。」
僕らは重い扉を開け、建物の中へと足を踏み入れた。
建物の中は大きな広間のようになっていた。
「戦鬼、ここのことはお前は知っているのか?」
「いや、知らねえな。」
戦鬼でも知らないとなると、リバーシ共通の施設というわけではないのか…?
不自然なほど静かな広間を突き進んでいくと一人の少女が広間の中心に立っているのが分かった。
「…ルミちゃん。」
「…久しぶり、シン。…この時を待ってた。」
「おいおい、誰かと思ったらちびっこじゃねえか。」
「…戦鬼?…異能を失った貴方に興味はない。目障りだからどっか行ってて…。」
「あん?…随分偉くなったじゃねえかよ、クソガキが…。おい、シン…あいつ、貰うぞ。」
戦鬼はそう言うや否やルミちゃんこと雪鬼に斬りかかった。
「…うざい。」
ルミちゃんはめんどくさそうに右手を戦鬼の方に向ける。
その直後に戦鬼がいた場所が氷で包まれる。
「戦鬼!?」
美月さんが叫び、ルミちゃんは戦鬼を倒したと確信したのか再び僕の方に話しかけてきた。
「…さあ、シン。邪魔者はいなくなった。…今度こそ私と…しよ?」
「してやりたいが、どうやらそれは許してもらえなさそうだ。」
僕がそう言った直後、氷結から逃れていた戦鬼がルミちゃんに斬りかかった。
「…っ!?」
ルミちゃんは戦鬼の登場に驚きながらも氷でかろうじて戦鬼の攻撃を防いだようだった。
「…舐められたもんだなぁ。てめえの氷結くらい、異能なしでも避けれるんだよ。」
「…ムカつく。…分かった…あなたから消してあげる。」
どうやら、戦鬼はルミちゃんと戦うようだ。
「美月さん、今のうちに先に進もう。」
「…そうね…って危ない!?」
美月さんと先へ進もうとした時、突如後ろに現れた何者かに斬りかかられる。
…後ろか!?
直感で攻撃を読み取り迎撃しようとしたその時、僕の目の前に金色の壁が現れ、何者かの攻撃を防いだ。
「…間に合ったみたいね。急に現れるなんて…。シン君、こいつは私に任せて頂戴。」
「美月さん、ですが…!」
美月さんよりも、直感で攻撃を予測できる僕の方が戦える…。
そう思ったが…。
「私の金の異能ならちょっとやそっとの攻撃は通らないわ。それに…シン君。あなたが倒すべき相手はもう決まっているでしょ…?」
美月さんの言葉と覚悟の決まった目を見て、気持ちが変わった。
「…すいません。よろしくお願いします。」
その場を美月さんに預けて、僕は奥の部屋に向かって走る。
「…。」
その僕を狙って、先ほどの男が僕に襲い掛かってくるが、その男に向かって美月さんが放った銃弾が向かっていく。
ギインッ!!
結果、男は銃弾の防御のために僕を追うことを諦めて様だった。
「ダメよ。シン君は追わせない。」
「……。」
広間から出た直後に、広間から激しい戦闘の音が聞こえてきた。
美月さん…戦鬼…頼んだ。
僕は二人を信じて、奥へと続く通路を駆けていった。
***
<side 美月>
シン君が私に背を向けて走っていく。
彼は相変わらず、誰かのために戦っている。
「……。」
私の銃弾を防いだ男がいつの間にか目の前に現れ、斬りかかってくる。
だが、私の金の異能のガードの前では男の短剣による攻撃はほとんど意味をなさなかった。
「……。」
男は短剣による攻撃は意味がないと判断したのか、一旦私から距離を置いた。
突然現れたことを考えても、この男は戦鬼が一定いた陰鬼……「影の異能力者」で間違いなさそうね。
先ほど走っていったシン君の顔を思い出す。
どうやら、今回のお姫様は私じゃないみたいだ。
それなら…。
「かかってきなさい。貴方は私が倒す。」
今度こそ、シン君と並んで戦える私になってみせる。
<side end>
***
通路を真っすぐ走り続けて暫くすると、目の前に扉が見えてきた。
あそこだな…。
あそこに間違いなく疫鬼がいる。
有本さんのことに始まり、優理の誘拐、そして多くの人の命を奪うウイルスをばらまく行為。
今まで散々やられてきた。
その借りを今ここで全て返す。
バン!!
「…ん?どうした雪鬼。…何かあったなら連絡をよこせ……ひっ!?」
「よお…約束通り来たぞ。」
こいつを倒して、全てを終わらせる!!
***
<side 優理>
冷たい…。暗い…。
これは夢なんだろうか?
分からない、何も分からない。
何も見えず、真っ暗に覆われた空間の様な場所で私は倒れていた。
そういえば、ロボットの襲撃はどうなったんだろう…?
最後、神崎君がロボットを倒したような気がするんだけど……ってこうしちゃいられない。
けが人もいっぱい出ているはずだ。
早く助けに行かなきゃ…。
その場から動こうとした時、足元から私の身体に何かおぞましいものが這い上がってきた。
「い、いやっ!…来ないで!!」
振り払おうとするが、それはどんどん私の身体を覆っていく。
やだ…やだ…!
誰か…助けて!!
助けを願い手を伸ばすも辺りには光の一筋もなかった。
徐々におぞましい何かは私の身体を包み込んでいく。
もう既に、首元までその何かは私の身体を覆っていた。
ああ……誰か…。
胸元にあるロケットペンダントを握りしめて強く願う。
助けて……心君!!
その思いに応えるように、暗闇の中に一筋の光が差し込んだような気がした。
***
さあ!次回からが本番だ!
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