第50話 お久しぶりです2
ここ最近、色々忙しくて更新するのが遅くなりました。
また、皆さんに楽しんで読んでいただけるとありがたいです。
贋鬼に出会った次の日、僕は戦鬼に会うために収容所に来ていた。
「金富様の使いですね。お話は伺っております。私に着いてきてください。」
収容所の看守に着いて奥の方へと突き進み、戦鬼の収容されているという部屋へと向かった。
「こちらになります。それでは、私は外の方で待っていますので。」
戦鬼のいる部屋に着くと、看守はそう言って部屋から出ていった。
「あぁ?…てめえか。」
戦鬼は僕に気付いたのか、少し驚いた様子を見せていた。
それにしても、相変わらずの鋭い目付きだな…。
異能を失ったって話だけど、威圧感は全然変わってない。
「…ふっ。」
「あん?何がおかしい?」
「いや、その様子だと闘志は無くなってないみたいだと思ってね。安心したよ。」
「…あん?それがどうかしたかよ。」
「戦鬼、お前を一時的に解放させてやる。だから僕らに協力しろ。」
戦鬼は僕の言葉を聞いた後、少し驚いたような顔を見せた後笑い出した。
「はははは!!俺が敵だったお前らに力を貸すと思ってんのか?どうせお前らに協力した後すぐにここに戻されるんだろ?なら、俺にメリットがねえな。」
「メリットならある。」
これで会話は終わりだといった様子で僕に背を向ける戦鬼に声をかける。
「メリットならある。戦鬼、今回お前に協力してもらうことは八鬼神との戦闘だ。僕らと一緒に戦ってくれ。」
僕の言葉に戦鬼が足を止める。
戦鬼は恐らく手強い敵と戦うことに喜びを感じるタイプの戦闘狂だ。
その戦鬼にとって八鬼神との戦闘はかなり嬉しいはずだ。
「…俺はもう異能を失っているが、それでもいいのか?」
異能ねぇ…。
「お前を倒したのは無能力者の僕だろ?」
「くくく……はははは!!…違いねぇ。いいぜ、シンてめえの手助けしてやるよ。」
よし…!これで戦鬼の協力を得られた。
これで戦力としても奴らと十分に戦えるはずだ。
その後、収容所から戦鬼を連れていく手続きをして僕と戦鬼はF.Cへと戻っていった。
***
<side 有本佳奈>
お母さんから受け取ったUSBの中にはお父さんが解析したであろう、疫鬼という男がまき散らしたウイルスの情報と思われるデータが入っていた。
このデータを解析することが出来ればウイルスによる影響を弱められるかもしれない…。
私はUSBを受取った日から寝る間も惜しんでウイルスの解析に時間をかけていた。
このウイルスさえなんとかできれば、お父さんも、心さんも助けられる…。
その一心でウイルスを解析し続けて、4日が過ぎた。
「…できた。」
ついに私はウイルスの活動を弱めるワクチンを開発した。
完治させることはできないし、活動を弱めるだけだからただの延命措置にしかならないけど…それでも意味はあるはずだ。
「あ……今日は心さんたちが敵のアジトに乗り込む日なんだ…。」
研究室のメールにF.Cの会長さんから連絡が来てたんだった…。
このワクチンを心さんに届けなきゃ…。
あと、これも…。
私は二つの箱を手に取ってふらふらの身体に鞭を打ってF.Cに急いだ。
<side end>
***
戦鬼を連れだした翌日、準備を整え、疫鬼たちの居場所も分かった僕らは美月さんのおじいさんに呼ばれ、朝早くにF.Cの前に集まっていた。
「全員、集まってるようだな。」
「早く車に乗って目的地に行こうぜ。寒くてしょうがねえ。」
「戦鬼…あなた口の利き方に気を付けなさいよ。あなたはお爺ちゃんのおかげでこうして外に出れているってことを忘れないことね。」
戦鬼の態度が気に障ったのか、美月さんが戦鬼を睨みつける。
「へぇ…。俺にやられたくせに随分と言ってくれるじゃねえか。」
「今やれば私が勝つわ。あなたに異能があったとしてもね。」
「…あん?」
「…何よ、やるき?」
あーあー、どうもこの二人の相性はあまり良くないらしい。
まあ、そもそもは昨日の戦鬼の紹介の所で戦鬼が美月さんに『ん?ああ、俺に負けた金の異能力者じゃねえか。精々足は引っ張んなよ。』って言ったのが原因なんだけど…。
「戦鬼、美月さんの言うことにも一理ある。それに、F.Cには武器の件でも世話になっているんだ。もう少し失礼のないようにしろよ。」
「美月もだ。そんなに感情を向き出しにして噛みつくなんてお前らしくもない。」
僕とおじいさんにそれぞれ注意を受けたことで二人の一触即発という空気はなくなった。
「…はいよ。」
「…そうね。ごめんなさいお爺ちゃん。」
うんうん。やっぱり一時的とはいえ供に戦う仲間だ。
仲はいい方がいいよな。
「…どうやら来たみたいだな。」
お爺さんがそう言った直後、僕らの方に誰かが走ってくるのが見えた。
ん?あれは……佳奈ちゃん?
「…ハアハア…心…さん……。」
佳奈ちゃんは僕の方まで来ると僕に身体を預けるようにして倒れこんできた。
「佳奈ちゃん!?」
佳奈ちゃんを支えるようにして佳奈ちゃんに声をかける。
「だ、大丈夫です…。ちょっと寝不足で…。…あの、心さん……これを持って行ってください。」
そう言って佳奈ちゃんは小さな瓶を5つほど渡してきた。
「佳奈ちゃん、これは?」
「…これ…解毒薬です。…きっと役に立つと思うから……持って…いってくだ…さい…。」
そう言い残して佳奈ちゃんは気を失った。
「佳奈ちゃん…?佳奈ちゃん!?」
「…心君、大丈夫だ。恐らく寝ているだけだろう…。有本の娘は我々に預けて君たちは早く目的地へ向かいなさい。」
「…分かりました。」
「心君、行きましょう。私に着いてきてちょうだい。」
車へと向かう美月さんの後ろを僕と戦鬼はついて行った。
**
「美月さん…佳奈ちゃんは何をしていたんですか?」
移動中の車の中で僕は確実に何か知っているであろう美月さんに聞いた。
「…ウイルスに効くワクチンを作っていたらしいわ。」
美月さんはそれだけしか言ってくれなかったが僕には十分だった。
「さっきのガキか…。疫鬼の作るウイルスは異能によるものだ。ワクチンなんてできるのかねぇ…。それに、あのガキ…ウイ「戦鬼、黙れ。」…まあ、気付いてるよな。」
全く、本当に馬鹿だ。
大人しく待っていてくれたらよかったのに…。いや、僕が同じ立場でもそうしていたか…。
先ほどまで佳奈ちゃんの身体を支えていた右手を見る。
佳奈ちゃんの身体はとても熱かった。
「美月さん…戦鬼……勝つぞ。」
「ええ。」
「ああ。」
負けられない理由がまた一つ増えた。
***
<side 雪鬼>
「…ひひ。…綺麗だなぁ…。どうしようか…この娘。このまま氷漬けもいいけどなぁ…。」
うす暗い部屋の中、疫鬼は今日も捕らえた治癒の異能力者を気持ち悪い笑みを浮かべて眺めている。
気持ち悪い。
味方じゃなければ今すぐに氷漬けにしたくなるくらい気持ち悪い。
「…雪鬼。外の様子はどうだい…?誰かに見つかった様子はあるかい…?」
「…ない。」
「ふーん。…ふひっ。どうやら、シンは僕らに辿り着けなかったみたいだね…。ああ…楽しみだなぁ…。もうすぐ僕のウイルスでたくさんの人が死ぬ…最高だ…。」
「…そう。」
恍惚とした笑みを浮かべる疫鬼を置いて私は部屋をでた。
部屋を出ると贋鬼が扉の横にいた。
正直、こいつは苦手だ。
こいつの張り付けたような笑顔は私の大好きなフリピュアの純粋さとは対極に位置している。
そのまま、特に話もせずに贋鬼の前を通る。
「雪鬼。どうして嘘をついたんだい…?」
「…何のこと?」
「とぼけるなよ。ここ最近、何者かがこの辺をかぎつけていたことに、君は気づいていたはずだ。」
こいつ…。
「気付いてたんだ。」
「まあね。それで、どうして嘘なんてついたんだい?」
どうして…?
そんなの一つに決まっている。
「…ふふ。……贋鬼と同じ。」
私はそう言ってまた歩き出した。
後ろから贋鬼の笑い声が聞えたが気にしなくていいだろう。
あの男なら疫鬼に余計なことは言わないはずだ。
「ふふ…。シン…私を楽しませてね?」
次からいよいよ戦うよー!!




