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第49話 お久しぶりです。

49話です。

 有本さんの病室を出て、疫鬼たちの居場所を探し回ってから3日が過ぎた。

僕は、未だに疫鬼たちの居場所を突き止めることが出来ていなかった。


速水に連絡をしてみたりもしたが、速水からの返事はなかった。


どうすればいい…。

あてもないまま探したところで意味はない…。


いつもの公園のベンチに座って考える。


もしかしたら、疫鬼たちは日本にはもういないのかもしれない。


絶望…その二文字が僕の中に重くのしかかる。



くそ…。折れるな…折れたらその瞬間お終いだ。



「一人で戦うって、しんどいなぁ…。」


思わず口から漏れ出た声は、とても物語に出てくる強キャラが言うようなセリフではなかった。



「それなら、私を頼りなさいよ。」


聞えた声はここ数日聞くことのなかった声で…そして、頼りになる女性の声だった。


「美月…さん…?」


「ええ。久しぶりね、心君。」


「何で…?捕まっていたはずじゃ…?」


「そうね。でも、リバーシによって今の日本はかつてない危機に瀕してる。だから、政府は一か八か私に依頼してきたのよ。リバーシの連中を倒してくるようにって。…また、一人で戦わせちゃったわね…。でも、これからは私も戦うわ。…心君、取り返しましょう。私たちの平穏な日々を。」


久々にあった美月さんは相変わらず綺麗で、そして、その目は諦めかけていた僕の心に勇気を与えてくれた。


「…ええ。美月さんがいれば100人力です。一緒に戦いましょう。」



「じゃあ、心君。今からF.Cに行くわよ。」


「え?でも、もう夜も遅いし…。」


「時間がもうないわ…。今は一刻を争う状況なの。」


「そうですね…。」


「大丈夫、心君の両親には私たちから伝えておくわ。さあ、行きましょう。」



美月さんの言葉に頷き、僕らはF.Cへと向かった。



F.Cに着いた後は、美月さんと同様に解放されたお爺さんがいた。


「久しぶりだな、心君。早速だが、事情については君も理解しているだろう?改めて今の状況を確認しておこう。」


「はい。」



僕らは互いが持つ情報を共有し、再確認した。

残念ながらお爺さんたちも疫鬼たちの居場所についてはまだ分からないらしいが、疫鬼たちは日本をまだ出ていないということは調べがついているらしい。



そうか…。日本にいるならまだ何とかできる可能性は十分ある…。


「だが、見つかっていないことには依然変わりはない。とにかく今は見つけることを最優先で動くぞ。」


「はい。」


「それと、見つかり次第行動を開始しようと思っているから、心君はF.Cにいてもらうけどいいかね?」


「はい、大丈夫です。」



こうして話し合いも終わり、僕はF.Cに泊まることになった。



***


客室で一人、考える。


美月さんとお爺さんが解放されたことは本当に良かった。

美月さんがいれば、戦闘でも八鬼神の3人にかなり渡り合えるようになるだろう。


だが、足りない。

美月さんは強いが、一対一で八鬼神を相手に勝てるかと言われたら微妙なところだ。

だからこそ、せめてあと一人…八鬼神相手でも戦える人が欲しい…。


でも、そんなに上手くいかないよな。


僕がそう思った時、携帯が鳴った。


速水かな…?と思ったが、携帯の画面に表示されていたのは知らない番号だった。


「…はい。」


『やっほー、シン。』


「……。」


『あれ?もう忘れちゃった?僕だよ僕。』


「…その声、贋鬼か?」


『何だ、ちゃんと覚えてんじゃん。そうだよ、久しぶりだね。』


「何のつもりだ?」


『おいおい、そんな怖い声出すなよ。今回の事件はあんまり僕は関わってないんだよ?』


「…用事がないなら切るぞ。」


『…F.Cの屋上に来てよ。来てくれたらいい情報を上げるよ?』


贋鬼はそう言うと電話を切った。


どういうつもりだ…?

正直、贋鬼のことは信用できない。

だが、このままだと進展はない…なら、多少のリスクは背負ってもここは贋鬼の情報にかけるしかないだろう。


僕は客室を出て、F.Cの屋上に向かった。



**


「君なら来てくれると思っていたよ。シン。」


屋上に着くと、既に贋鬼がいた。


「それで、情報っていうのは何なんだ?」


「ははは、僕との話を楽しむ気はなしってわけか。まあ、いいよ、君が知りたがってる情報の話をしようか。」



「シン君。疫鬼たちは富士の樹海にいるよ。」


贋鬼は何でもないようにそう言った。


「…その情報を僕が信じるとでも?」


「いや、君はこの情報を信じるしかないよ。だって、この情報以外に頼りになるものなんてないだろう?」


贋鬼はニヤニヤしながらそう言った。


悔しいがこいつの言う通りだ。

今の僕には贋鬼の言っていることが嘘だとしてもそれに縋りつくしかない。


「…信じるかは別にして、その情報はありがたくいただいとく。」


「それで構わないよ。ああ、あと、戦鬼は強かっただろう?」


「…は?急に何だよ…?まあ、強かったけど…。」


「そうだろう?彼は八鬼神の中でもトップクラスの戦闘力を持っていたからね、異能が無かったとしてもその辺の異能力者と同等の戦闘力は持っているだろうね。」


何なんだ?何でここで戦鬼の話が出てくる…?

同じ八鬼神だった贋鬼が言うくらいだから、本当に異能なしでも戦鬼は強いんだろう…。


…ん?戦鬼は今、刑務所にいるんだよな?じゃあ、交渉したら仲間にできるんじゃね?


「その顔は何かに気付いたって顔だね。じゃあ、僕はここで帰ろうかな。」


そう言って贋鬼は僕に背を向けてどこかへ行こうとする。



「待て。何で、僕にそこまで協力する?お前の狙いは何だ?」



「…僕はね、面白いことと本物が好きなんだよ。シン、君は本物だよね?なら、僕の期待を裏切ってくれるなよ?」


そう言った贋鬼の笑顔は思わずゾッとしてしまうほど狂気に満ちていた。


「じゃあね、シン。楽しみにしてるよ。」


そう言い残して贋鬼はF.Cの屋上から飛び降りた。


まあ、贋鬼のことだ。命の心配をするだけ無駄だろう。


それにしても、贋鬼め…。

僕を超える強キャラ感だった。悔しいがあいつの強キャラ度は僕より上だった…。


負けてられねえよな…。次は必ず勝つ…!!



とりあえず、今はこの情報をすぐにお爺さんや美月さんに伝えるべきだろう。


僕はすぐに屋上から出て、お爺さんのいる部屋に向かった。


***


「お爺さん、今、時間大丈夫ですか?」


「おお、心君か。どうしたんだ?」


お爺さんは部屋の中でまだ何か仕事をしているようだった。


「疫鬼たちの居場所についてなんですが…。」


「何か分かったのか!?」


「富士の樹海の辺りを調べてもらえませんか?」


「富士の樹海…?それは確かな情報なのか?」


「確証は得られてませんが、現状、他に情報はありません。僕を信じてもらえませんか?」


「……そうだな。君には今までにたくさんの恩がある。君を信じてみよう。」


「それと、もう一つお願いがあるんですが…。」


「何かね?」


「戦鬼を刑務所から出すことはできますか?」



「……本気か?」


お爺さんは少しだけ僕を睨んでいた。


「本気です。…確かに戦鬼は敵でした。でも、今は圧倒的に戦える人が足りない。正直、僕と美月さんの二人でもリバーシの異能力者たちを倒せるか分からりません。異能を失ったとはいっても戦鬼の実力は本物です。だから、お願いします…。」



「だが……。」


頭を下げてもお爺さんはまだ戦鬼の解放には否定的だった。


まあ、そうだよな…。

流石にこのお願いは無茶があるか…。



「私からもお願いするわ。」


その時、僕の背後から美月さんの声が聞えた。


「美月…。だが、戦鬼はお前を痛めつけた男だぞ…?」


「あの時は私が弱かっただけよ。それに、戦力が足りないのは事実でしょ?ここは過去のことは置いといて、あの男を多少強引な手を使ってでも連れて行った方がいいわ。それとも、お爺ちゃんは今の日本で戦鬼より強いと言える人を知っているの?」


「美月さん…。」


戦鬼との間に少なからず因縁があるであろうに、美月さんは戦鬼の解放に同意してくれた。


「…そう…だな。分かった…美月も良いというなら、政府に打診してみよう。」


「ありがとうございます!!」


よし!

戦鬼がいれば戦力に関してはほとんど問題ないだろう。

後は、贋鬼の情報が嘘ではないことを祈るだけだ。



「とりあえず、明日のうちに戦鬼の件と富士の樹海の件は解決しておこう。だから、今日はもう休むといい。」


「はい。お爺さん、美月さん、本当にありがとうございます。」


「気にしないで頂戴。さあ、早く寝ましょう。」


こうして、3日目にしてようやく手がかりを得ることが出来たのだった。

美月さん!お久しぶりです!!

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