第46話 次から次へと…!
46話です。
落ち着きを取り戻した僕は、有本さんの拘束を解いた。
「ありがとう、心君。…ところで、さっきのは一体…?」
「気にしないでください。それより随分と焦っていたみたいですけど、どうしたんですか?」
引き戸と開き戸を間違えたなんて有本さんに知られたら100%からかわれる。
ここはさっさと話題を変えておこう。
「そうだ!急いで、東京にいるロボットたちを止めないと…!心君、申し訳ないが手伝ってくれないか?」
有本さんの焦り具合から本当に不味い状況だということだけは理解できた。
「分かりました。」
「ありがとう。説明はロボットを制御している管制室に向かう途中にしよう。とにかく今は管制室に急ごう!」
『ち、ちょっと待ってください!』
僕と有本さんは部屋を出て、管制室という場所を目指そうとしたとき、無線機から佳奈ちゃんの声が響いた。
『心さん……あの、お父さんに会えたんですか?』
「うん。佳奈ちゃんの予想通りこの部屋にいたのは有本さんだったよ。怪我はしていないし、元気そうだよ。」
『…本当ですか…?…良かった……。』
無線機からは若干、涙ぐんだ様子の佳奈ちゃんの声が聞こえた。
「その声は…もしかして佳奈か…?」
「そうですよ。有本さんを助けるために僕に協力してくれていたんです。」
「…そうなんだな。…ありがとう佳奈…。…でも、今はそれどころじゃないんだ。とにかく、心君、走りながら説明するから、僕についてきてくれ。」
「分かりました。……佳奈ちゃん、申し訳ないんだけど…。」
『…大丈夫です。何か不味いことが起きてるんですよね?…私にもできることがあれば手伝わせてもらいます。』
「ありがとう、佳奈ちゃん。」
佳奈ちゃんにお礼を言って、僕は有本さんに付いて行った。
「それで、今はどういう状況なんですか?」
「ああ、簡単に言うと、このまま東京で暴れているロボットを止めないと東京にいるたくさんの人々が犠牲になってしまうんだ。」
「…なぜですか?」
「この研究所はリバーシと繋がっていたんだ。そして、リバーシの連中によってあのロボットたちの中には正体不明のウイルスが詰まった袋が入っている。だから、早くロボットを止めないと……。」
「ウイルスが東京にまき散らされる。」
僕の言葉に有本さんは頷いた。
「なら、今の東京の様子を知る必要がありますよね?」
「…そうなんだけど、僕らには外の様子を知る手段がない…。」
「それなら、任せてください。」
僕はそう言うと、佳奈ちゃんに無線を繋いだ。
「佳奈ちゃん、今の東京の状況はどうなっているか教えてもらってもいい?」
『はい。話は私にも聞こえていたので、今ちょうど確認してたところです。…そうですね…どうやら異能力者側がかなり巻き返してるみたいです…。お父さんの言っていたウイルスがまき散らされた様子はまだありません…。』
「分かった、ありがとうね。」
佳奈ちゃんから聞いた情報をすぐに有本さんに伝える。
「…そうか。なら、まだ間に合うかもしれない。とにかく急ごう。」
僕と有本さんは更にペースを上げて、管制室へと急いだ。
***
<side 優理>
身体が震える、神崎君でさえ勝てない相手に私が叶うわけがない。
「お、おい…異能力者がやられたぞ…。」
「嘘だろ…。じゃあ、もうお終いじゃないか…。」
神崎君が倒されたことで周りに不安の声が広がる。
このままじゃダメだ。
私程度の力じゃ勝てないかもしれない、でも、それでも…私が立ち向かわなくてはいけない。
「ひ、ひいい!!」
私の近くで逃げ遅れた人をロボットが襲おうとする。
させない。
「やあっ!!」
思いっきり勢いをつけてロボットに体当たりする。
ロボットを倒すとまでは行かなくても、逃げ遅れた人からロボットを離すことはできた。
「…いたた…。大丈夫ですか?…ここは危険ですから早く逃げてください。」
「で、でも君はどうするんだ…。君の異能は戦闘向きじゃないだろ!…あの少年がやられた時点で僕らはお終いなんだ…。」
「…そうですね。…でも、守りたいものがあるから、私はこの身体が動く限り戦います。さあ、あなたは早くここから離れてください。」
痛む身体を治癒しつつロボットの前に立つ。
流石に自分より大きなロボットへの体当たりは身体への負担も大きい、それに、私はロボットに対する決定打を持っていない…。それでも、やるんだ。
私は覚悟を決めてロボットに向かい合った。
私の構えを見て、1台のロボットが私の方に向かってくる。
大丈夫…。落ち着けば攻撃は避けれる。
ロボットの動きを見ながらギリギリで攻撃を躱していく、でも、それしかできなかった。
隙を見てロボットに掌底を当てたり、蹴りを当てたりはするけど傷つくのはむしろ私の身体の方だった。
…っ。で、でも、このまま時間を稼げば全員が避難できるはず…。
私が時間を稼ぐことに集中しようとした時、死角からロボットの腕のようなものが私を捕らえた。
「えっ!?きゃあ!」
「…あ…うぅ。いつも間に…?」
私を捕らえたロボットは私が相手をしていたロボットは別のロボットだった。
完全に油断してた…そうだ、ロボットは全部で3台いたんだ…。
皆さん、ごめんなさい…。
私が諦めかけたその時だった。
ドオンッ!!
轟音が鳴り響き、私を捕らえていたロボットがよろめく。
それと同時に私の身体が解放された。
な、何が起きたの…?
私が周りを見ると、そこには先ほど撤退したはずの自衛隊の人たちがいた。
「よし!命中!!この調子でロボットにどんどん打ち込んでいけ!異能力者の嬢ちゃんがあんだけ戦ってるんだ!俺たちがここで踏ん張らばなくてどうする!!」
「「「おう!!」」」
「皆さん…。」
「すまない。お嬢ちゃんの言葉を聞いて俺たちは目が覚めたぜ。異能力者が倒されたとしても、それが戦いを諦める理由にはならないよな。」
自衛隊の方たちが用意していた巨大なバズーカ砲のようなものをどんどんロボットに打ち込んでいく。
それは決定打になりはしなかったが、確かにロボットたちの足止めをすることが出来ていた。
あと少し…せめて、神崎君の力があれば…。
そうだ…。神崎君だ。
私は急いで神崎君のもとへ向かう。
神崎君は吹き飛ばされた衝撃からようやく意識を取り戻していたところだった。
「神崎君!」
「…ん?優理か…?…俺は確かロボットに吹き飛ばされて…。」
「神崎君、お願い…。貴方の力であのロボットを倒して!悔しいけど、私じゃ力不足なの…。でも、神崎君ならきっと…。」
「優理…。分かった。俺に任せるんだ!」
神崎君はそう言うと立ち上がってロボットの前に立ちはだかる。
「自衛隊の皆さん!協力感謝します!そして、今僕の声が聞こえている皆さん、皆さんの力を僕に貸してください!僕の絆の異能は、より多くの人の願いを力に変える異能です!だから、僕に力を!!」
神崎君がそう言うと、神崎君の声を聞いた人たちが次々に神崎君のために両手を神崎君に向けて掲げていく。
「皆ありがとう!!」
神崎君が皆の思いを乗せた一撃を放ちに走り出した。
あの一撃を3台のロボット全員にぶつけなくちゃ…。
「自衛隊の皆さん!ロボットを一か所に誘導してください!」
「任せろ!」
私の言葉に自衛隊の方々が、上手くバズーカ砲を当てロボットたちを一か所に集める。
そして、そこに神崎君が走りこんでいった。
「くらええええ!!!」
「「「行っけええええええ!!!」」」
その場の全員の思いを乗せて神崎君の一撃がロボットたちに突き刺さる。
その威力は今までとは比べ物にならないほど強力だった。
ドオオンッッッ!!!
今までに一番大きい音が鳴り響き、辺りを土煙が覆う。
「…倒したの…?」
土煙が晴れると、そこには原型を留めながらもボロボロになったロボットたちが横たわっていた。
「や、やった…。」
「「「やったー!!」」」
異能力者でさえ苦戦してしまうほどの強敵を倒すことが出来て、その場にいる全員が歓喜の声を上げるのであった。
良かった…。
私の守りたいものは守れたんだ…。
私が安心し、完全に気を緩めていた時だった。
「……んん!?」
突然、何者かに口元を抑えられた。
何、この甘い香り…?
だ、だめ…これを…吸っちゃ…いけ…な…い……。
たす…け…て……心君…。
<side end>
***
次回からまた話が動き出すかも…。
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