第45話 自分の中の常識が世間の常識とは限らない
45話です。
今回、久々に出てくる登場人物が出てきますが、幕間Ⅳあたりを確認してもらえると思い出せると思います。
施設の近くまで来ると、数台のロボットが施設の周りを警備していた。
「…佳奈ちゃん、聞こえる?今、研究所の周りがどうなってるか教えてもらってもいい。」
『…はい。今は心さんにも見えてると思いますが、数台のロボットが心さんの近くをうろついています。今は動かない方がいいと思います。』
…ふむ。
どうやら、まだロボットは研究所から出発はしていないみたいだな。
なら、来るべき時が来るまで待つか。
それから30分くらいの時間が過ぎた時、施設の中から3台のトラックが出ていくのが見えた。
「佳奈ちゃん、さっきのトラックってもしかして…。」
『…はい。先ほどあのトラックの中にたくさんのロボットが入っていくのが確認できました。…今なら心さんの周りにロボットもいません。行くなら今だと思います。』
よし、なら行くか。
念のために周りを確認してから僕は動き出す。
今ならトラックが出ていった出入口がまだ開いている。
僕はその出入り口が閉まる前にそこに飛び込み、地下の研究所に入っていった。
『心さん…。…入れましたか?』
「うん。」
『なら、近くにある監視カメラに私が渡した機械を取り付けてもらっても良いですか?』
「了解。」
僕は監視カメラに姿が写らないように細心の注意を払いながら小型の機械をカメラに取り付けた。
『…施設内の機械をハッキングするので、暫く待っていてください。』
ハッキングって…佳奈ちゃんって凄すぎでしょ…。
『…お待たせしました。ハッキングはできたのでこれからは監視カメラには気を使わなくても大丈夫ですよ。それと、地下の3階に人がたくさんいるみたいですから、とりあえず3階を目指しましょう。』
「はーい。」
待ったとは言っても10分もかかってないんだが…。
とりあえず佳奈ちゃんがいてくれて良かった。
『次を左です。』
佳奈ちゃんのナビに従いながら、研究所内を突き進んでいく。
佳奈ちゃんは敵に遭遇しないようにルートを選んで教えてくれてるみたいだった。
…全然、誰にも会わないなぁ…。
いや、いいことなんだけどね。でも、なんていうか…刀もっと使いたかったなぁ…。
『……さん。心さん!』
「ん?ああ、ごめん、どうしたの?」
『あの、そこの階段を下りてください。』
「ああ、オッケー。」
『それと、その下の階から3階です。3階は今までより警備もたくさんいるので、もしかしたら敵と遭遇するかもしれませんが、頑張ってください…。』
「了解!…そういえば、東京はどうなってる?異能力者たちとロボットの戦いは?」
『……異能力者たちが押されてます…。』
「ふーん。そっか。そっちの情報も大きな変化があったら教えてね。」
『はい。』
異能力者が押されてるねぇ…。仮にも対異能力者用のロボットってことか。
もしも、状況がかなり悪くなるようならこの施設を潰してロボットに指示を出せなくする必要があるかもな…。
様々な想像をしながら僕は3階に続く階段を下りていった。
***
<side 優理>
それは突然のことだった、嫌、一応犯行予告の様な文書は届いていたけれどそれを本気にしていた人はほとんどいなかったと思う。
でも、実際に今たくさんのロボットたちによってスカイツリーや東京タワー付近が襲撃にあっていた。
その情報を入手してからすぐに、私や神崎君は現場に向かっていた。
なんでこのタイミングで…。
まだ、美雷の行方だって掴めることが出来ていないのに…。
そう、私は、リバーシの襲撃事件があった日から行方不明になっている美雷を探すために色々と活動していた。
それに最近は心君とも連絡が取れてないし、美月さんが捕まったことだって気になる…。
「着きました。すいません、それでは後はお願いします。」
「はい。」
「任せてください!」
とにかく今はあのロボットたちを止めるのが先だよね…。
私たちで皆の生活を守らなくちゃ。
私たちが向かったスカイツリーでは、既に自衛隊が戦っていた。
しかし、銃弾すら効かない様子のロボットたちに自衛隊は決定打を打つことが出来ず、苦戦しているみたいだった。
「お待たせしました!」
「おお!来てくださいましたか。我々では、被害を抑えることしかできませんでした…。すでに一般人は非難させています。お願いします。あのロボットを壊してください!」
「分かりました!優理、俺があのロボットを倒してくる、優理は負傷者の治癒を頼んだ。」
「うん。」
元気よく返事をして神崎君はロボットに向かっていった。
神崎君と別れた私は素早く負傷者のもとに移動して治癒していく。
「…他に負傷者はいませんか?」
「俺たちは大丈夫だ………それより、あんたと一緒に来た異能力者の人が…。」
え?神崎君が…?
神崎君は実力は確かなはずだ…。
ドゴオンッ!!
近くで轟音が鳴り響いたと思えば、そこにはロボットたちと戦っていたはずの神崎君が倒れていた。
「神崎君!?」
「ぐはっ…。すまない、優理。少し油断しちゃってね…。でも、大丈夫だから…。」
私の治癒を受けると神崎君はすぐさま起き上がりロボットたちのもとに向かっていった。
神崎君がロボットたちにパンチやキックを放つ、その威力は常人に耐えられるものではないし、その辺の機械なんか簡単に壊せるくらいだ。
だが、ロボットたちはそんな攻撃を受けてもびくともしていなかった。
嘘でしょ…。
信じられない光景に衝撃を受けているうちに神崎君が再び吹き飛ばされる。
まずい…。神崎君の攻撃が効かない相手に私の異能は意味を持たない…。
どうすればいいの…?
絶望的な状況に私たちは追い詰められていくのだった。
<side end>
***
『…心さん、その突き当りを曲がった先の部屋に行ってもらっていいですか?』
「いいけど、そこに何かあるの?」
『はい。そこの部屋の監視カメラの映像は部屋が暗いせいか良く見えないんですけど、人が一人倒れているみたいなんです…。ほかの監視カメラの映像にお父さんがまだ映り込んでないので……もしかしたらと思って…。』
「分かった。その部屋に行くまでのルートに警備はある?」
『…一台だけ警備用のロボットが部屋の前にいます。』
一台か…。なら、ばれないように倒せるかな…。
「了解。ロボットを倒して部屋に入ってからまた連絡するね。」
『はい。』
さて、じゃあ行こうか。
僕はその部屋のある通りを走る。幸いなことにロボットは僕に背を向けている。
このまま、仲間を呼ばれる前に斬る!!
僕は腰に下げた刀に手を置き、いつでも斬れる体制を作ってロボットに接近する。
もう少しで間合いに入る、その時ロボットがこちらを振り向いた。
僕に気付いたロボットは急いで迎撃してこようとするが、遅い。
ここはもう、僕の間合いだ!
霹〇一閃!!
心の中で某人気漫画の技名を言いながら、僕はロボットの首を斬り落とした。
…ふぅ。
あー、切れて良かったあああ!!
いや、本当にこの刀でロボットを斬れるか不安だったんだよね…。
でも、これで無事に斬れることも証明できたし良かった良かった。
じゃあ、早速部屋に入りますか!
僕は意気揚々と、ドアノブに手をかけて扉を開けようとしたが、その扉は全く動かなかった。
ま、まじか…。
『心さん、大丈夫ですか?』
「佳奈ちゃん、なんかハッキングして扉を開けることってできない…?」
『…え?あ、あの心さん…その扉鍵なんてかかってませんよ…。』
「いやいや、何言ってるのさ。ほら、こうやって押しても開こうとしてもびくともしないでしょ?」
僕はドアノブを掴んで扉を開こうとする仕草を見せた。
うん。確かに開かない。
『…あの…凄く言いにくいんですけど…そのドア、引き戸です…。』
…え?…引き戸…?
「何言ってるのさ、佳奈ちゃん。引き戸にドアノブが付いているわけが……あ。」
佳奈ちゃんの言うことを否定するためにドアを横に引くとドアが開き、中には有本さんがいた。
「…ん?君は…シン君か!?助かった!この紐をほどいてくれないか?」
「なんでだよ!!」
「ええ!?」
普通、引き戸にドアノブはつけないだろうがあああ!!!
ここから戦いが激化していく……かもしれない…。




