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第42話 オタクに恋(現実)は…何とも言えないね!

42話です。

「はい、心君。コーヒーでも大丈夫だったかしら?」


「あ、すいません。ありがとうございます。」


リビングに入り、椅子に座ってしばらくすると、佳奈ちゃんのお母さんがコーヒーを2つ淹れて、僕と自分の前に置いた。


「すいません。いただきます。」


「はい、どうぞ。」


淹れてもらったコーヒーに砂糖とミルクを入れてゆっくりと飲み始める。

外が寒かったこともあり、淹れたてのコーヒーは身体の隅々まで染み渡った。


うまい…。中々に良い豆を使っている気がする。


「…ところで、心君は佳奈とはどういった関係なのかしら?」


ん!?


「ごほっ!ごほっ!……げほ…。き、急にどうしたんですか?」


予想外の質問に思わずせき込んでしまった。


「あらあら、大丈夫?でも、気になるじゃない?」


「…どうもこうもありませんよ。友達…はちょっと違うか。…可愛い後輩ってところですかね。」


「ふ~ん。でも、ただの後輩とキスしそうになったりするかしら?」


「な、なんでそれを!?」


佳奈ちゃんのお母さんは僕にある画像を見せてきた。

その画像はこの間の駅前であったイベントでの写真で、そこには今にもキスしそうな僕と佳奈ちゃんの姿が写っていた。


「え?あ、いや…その、それはですね…。誤解というかなんというか…。」


「…ふふ。ごめんなさい、からかいすぎたわね。そんなに必死にならなくても大丈夫よ。心君が佳奈とキスしていないことも、佳奈のことを大事に思ってくれているってことも分っているわ。」

「…佳奈はお父さん子だったから、今の状況はかなり苦しかったと思うの…それでも、佳奈がまた笑ってくれたり、何かに一生懸命に打ち込み始めたのは心君のおかげなのよね。本当にありがとう。私じゃ、夫が行方不明になった悲しみを紛らわすことはできなかったから…。」


佳奈ちゃんのお母さんは少し自嘲気味に笑った。


「…それは違いますよ。」


「え…?」


「佳奈ちゃんは自分の足で立ち上がったんです。有本さんがいなくなった理由を自分で探して、もう一度楽しかった家庭を取り戻すために頑張っています。僕が出来たことは精々、背中を押すことくらいでしたから。…それに、佳奈ちゃんは言ってましたよ。お母さんは凄く頑張ってくれてる、お父さんがいなくなってから、また働き始めたって。だから、私も頑張るんだって言ってました。」


「…そう。まだ子供って思っていたけれど…知らない間に成長してるのね…。心君、これからも佳奈のことをよろしくお願いします。」


佳奈ちゃんのお母さんは涙ぐんでから僕に頭を下げてきた。


「有本さんにもお願いされてますからね、任せてください。」



僕がそう言い終わると同時に、リビングの扉が開いた。


「…うう。…お母さん。朝ごはんは…?」


リビングの中にだぼだぼの服を着て、ぼさぼさの髪型の佳奈ちゃんが入ってきた。


「…え!?…何で、心さんが…?…あ…今日、約束の日でしたね…。」


「はあ…。佳奈、せめて服はちゃんと着なさい。それと、私は今から出かけるから後はよろしくね。」


「…え?あ、うん…。」


「そういうことだから、心君。今の佳奈の格好見て、興奮して襲い掛かったりしても私はいないから安心してね。」


ぶっ!!


思わず、口に含んでいたコーヒーを吹き出してしまった。


「な、何言ってるんですか!?そんなこと、しませんから!」


「あら、そうなの…?まあ、とりあえず私は行くから。」


じゃあねー。と手を振りながら、佳奈ちゃんのお母さんは家から出ていった。



……気まずい。


先ほどの佳奈ちゃんのお母さんの発言を聞いてから佳奈ちゃんは顔を真っ赤にして俯いているし…僕はどうすればいいんだ…?


「か、佳奈ちゃん…?お母さんが言ってたのは冗談だからね?ほら、僕って無害そうな顔してるでしょ?大丈夫だよー。」


「……顔を洗ってきます…。」


「あ、うん…。」


佳奈ちゃんはそう言うと、リビングから出ていった。


うーん。あの反応はどういう反応なのだろうか。

とりあえず、僕が無害だということを証明しておく必要があるよな…。


そうだ!いい方法が一つある!

よし、じゃあ後は行動を起こすために準備しておくか。


***


<side 有本佳奈>


 思わず、リビングから出てしまった…。

いや、でもあれはお母さんが悪いよ…。それに、お母さんは勘違いしてる…私と心さんはそんな関係じゃない…。


…確かに、駅前のイベントの時はキスしそうになったりしたけど、心さんは…きっと私に興味なんてない…。


でも、それでいいの…。

私と心さんの関係は、お父さんを連れ戻すことが出来た時…終わる…。


寂しくないと言ったら嘘になる…。出来ることなら、離れたくない…そう思う自分もいる…。


それくらい心さんとの時間は思ったより楽しくて、心さんの優しさは心地よかった。


だから、これ以上踏み込まない方がいいんだ…。

これ以上、踏み込んでしまえば…きっと私は心さんのことを好きになってしまう…。


たった数日の関係で簡単に好きになるなんてチョロい女だと自分でも思う…。でも、何故だろう…心さんからは、なんとなく懐かしい雰囲気を感じてしまう…。


それこそ、私が小さい頃に出会ったある少年に似ている気がする…。

いや、きっと気のせいだろう。

その子はフリピュアが好きだって言っていたし、将来はフリピュアの様な変身道具を使って世界を渡り歩くって言っていた…今の大人っぽい雰囲気の心さんがそんなこと言っていたとは考えにくいよね…。


…とにかく、今は格好だけ整えてリビングに戻ろう…。

心さんも心配しているだろうし、朝ごはんも食べないと…。


そして、早く心さんとお父さん救出計画について話し合わないと…ね…。



「…心さん。…お待たせしまし……た…。」


「ハーイ!ハイ!ハイハイハイハイ!!超絶可愛い…ヤミー!!」


バタン。


…私は何も見ていない。…心さんが変なダンスを踊りながら、よく分からない掛け声をしている姿なんて見ていない…。…きっとさっきのは見間違いのはず…だよね。


ふう…。


「…心さん。…お待たせしました…。」


恐る恐る入ると、リビングでは心さんが何事もなかったかのように座っていた。


「うん。改めて、おはよう。佳奈ちゃん。あ、これお母さんが佳奈ちゃんにって用意していた朝ごはんだよ。」


「…あ、ありがとうございます…。」


心さんは至って普通だ。…これは、聞いた方がいいのかな…?えっと、さっき心さんが言ってたヤミーって確かフリピュアに出てくるキャラだったはずだよね…。


「…心さんはまさかフリピュアを見てたりなんて…しないですよね…?」


私がそう聞いた瞬間、心さんは突然目を輝かせた。


「え!もしかして、佳奈ちゃんもフリピュア好きなの?僕の推しはヤミー様って人でね?ほら!見てこれ!!この間、たまたまヤミーに似ている子がコスプレしてる姿見つけちゃってさ!いやー、あれは眼福だったね!!」



私の心の中で、心さんの優しくて頼れるお兄さんのイメージが音を立てて崩れ落ちていった。


<side end>

***


よし。

佳奈ちゃんの目が完全に死んでいる。どうやら、僕の作戦は上手くいったようだ。


僕の作戦、その名も…「現実の女など興味はないわ!」作戦だ。

僕がフリピュア好きで現実の女には興味なんてない、ということをアピールすれば。


きっと佳奈ちゃんは安心するはずだ。


ただ、この作戦を使うと今までの僕のイメージが壊れてしまう可能性が高いが、仕方ない…。

この数日で分かったが、佳奈ちゃんは良い子だ。

きっと、僕が重度のオタクだとしても表面上は仲良くしてくれるだろう。


とりあえず、佳奈ちゃんの目が死んだことからも僕の作戦の成功は間違いない。

フリピュアの話は早めに切り上げて、佳奈ちゃんが朝ごはんを食べ終わったらすぐに有本さんを助けるための話し合いに移ろう。


久々の心以外の視点でした。

もっと主人公以外の視点を入れるか迷う…。

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