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第36話 抱き枕は意外と置き場に困る

この度、「ハーレム王に俺はなる!!」という短編を投稿しました。

ハーレムをテーマにしながらハーレム要素がほとんどありませんが、8000字程度ですぐ読み終わるような内容になっているので、是非、一度読んでみてください!!


36話です!

 会場の熱気は最高潮に達していた。


「…!?」


さっきまで俯いて静かになっていた佳奈ちゃんも、流石に会場の変な雰囲気に気付いたようだった。


佳奈ちゃんは一瞬、会場の雰囲気に驚きの表情を見せたがその後、決心したのかポッキーを少しずつ食べ始めた。



『おーっと!!5番のカップルがついに動き出しました!彼女が少しずつですがポッキーを食べ進めていく!』


佳奈ちゃん……。


佳奈ちゃんは顔を赤くしながらも必死にポッキーを食べ進めていた。


本当なら、僕もポッキーを食べ進めていかなくちゃいけない。


でも……。


『5番はキスする方を選びましたか…。いや、いずれはそうなってしまいますから遅いか早いかという話なんですが…私個人としては少し寂しさを感じてしまいますね…。』


「や、やめてくれ!!君たちは!君たちだけは純粋でいてくれ!!!」


『審査員の独御さんが叫びますが、その願いは叶わないでしょう。さあ!いよいよ5番のカップルの唇が触れ合いそうです!』



会場の注目が僕らに集まり、そのボルテージが最高潮になった時だった。



ガリッ



僕は思いっきりポッキーをかみ砕いた。


『あ、あー!!何ということでしょう!あと一歩というところでポッキーが折れてしまった!!いや、さっきの感じだと彼氏が自らポッキーを折ったのか!?』



Booooo!!


会場から僕に対する非難の声が沸き上がる。



「ふざけるな!!」


僕がそう叫ぶと、会場が静まる。


「…佳奈ちゃんはファーストキスなんだ…。僕だってそうだ。僕だけならまだいい…。でも、佳奈ちゃんのファーストキスがこんな形になっていいわけがない。こんな、好きでもない相手とほとんど強制的にやらされていいわけがないんだ!!」


『ど、どういうことでしょうか…?好きではないというのは一体…?』


佳奈ちゃんには申し訳ないけど、正直に言おう…。


「そのままの意味です。僕と佳奈ちゃんはカップルじゃありません…。景品がどうしても欲しくてカップルだと嘘をついていました。本当にすいませんでした。」



『な、なんということでしょう!?5番の二人はカップルではなかったー!!こ、これはどうなるのでしょうか?』


会場がざわついている…。


僕の発言に驚いているようだった。


『あ、今大会委員会から連絡が入りました!続行です!5番はカップルとみなすことにするようです!そして、このまま結果発表に入るようです!!』



失格じゃないのか…。


でも、僕らの優勝は恐らくないだろう…。


「ごめんね、佳奈ちゃん…。」


「…いえ、いいんです。」


そう言った佳奈ちゃんは笑顔を浮かべていたが少し寂しそうだった。



『さあ、どうやら審査員の皆さんの準備が整ったようです!それでは、順番に発表してもらいましょう!まずは独御さんから!』


「はい。…5番です。迷うことはありません。5番はカップルではなかった。ですが、私は5番に私たちが忘れていた本当の愛を見た気がするのです。」


「やれやれ、5番はカップルではないんですよ?独御さんはどうもロマンチストなところがあるのが良くない。だから、未だに独身なんじゃないですか?」


「何を!」


『では、そういう独田さんに発表していただきましょう!』


「はい。私が選んだのは…5番です。」


『おーっと!!まさかの独田さんも5番だ!!!』


「独田さん…何で…?」


「はあ…。独御さん。忘れたんですか?私も未だに独身なんですよ。貴方と同じです。あの少年のような頃が私にもあった。ただそれだけのことです。」


「独田さん……!」



『これは予想外!!まさかの二人続けて5番です!続いては独川さん!お願いします!』


「はい。私は4番ですね。羨ましくて血涙を流しそうでした。」


「私もです。やっぱり大人のお姉さんの色気こそ最高にして至高ですよ。」


『独川さんは4番!そして、独木さんも4番です!!』


『さあ!最後は審査員にして今大会の運営委員長、独神さん!お願いします!!』


「今回は第一回に相応しい非常に素晴らしい大会でした。5番はカップルではありませんでしたが、少年と少女の純粋に相手を思う愛という、私たちが普段中々目にできない尊いものを見せてくれた。また、4番は大人の色気というまさしく5番とは対極にある愛を私たちに見せてくれた。そのうえで発表させていただきます。第一回ベストカップルは………4番です!!!」


『け、決着!!!見事、第一回ベストカップルに選ばれたのは…4番です!!』


うおおおおおお!!!


会場から一気に歓声が沸き上がる。



一瞬、もしかしたら景品を手に入れることが出来るかもしれないと思ったけど、やっぱり駄目だった。


でも、これは分かっていたことだ。


こうなることを分かっていて僕はあの行動をしたんだから…。



『さあ、4番さん!前の方にお願いします!!』


4番のカップルが前に出てくる。


『それでは、景品のペア旅行券10万円分とボムボム君の等身大抱き枕です!!』



「あー、その景品ね。そっちの意味わかんない抱き枕の方はいらないわ。こっちの旅行券だけもらっていくわね。」


『え…?4番さん!?いや、せめて一言だけでもコメントを…!!』


焦る司会者を置いて行って4番はどこかへと行ってしまった。



『…えっと、それじゃあどうしましょうか。このボムボム君の抱き枕は…。』


司会者が困っているその時だった。


「5番に渡すのはどうですか?」


「独御さん!いくら何でも…それは…。」


「いいでしょう!」


「独神さんまで!!」


「ただし!この会場の人たちがそれを認めたらです。」


「な…!?独神さん!それは…無茶ですよ!!彼らは観客の期待を裏切ったんですよ!」


「おや?独御さんは5番を信じられないのですか?」


「…く!!」



『どうやら、この景品が誰の手に渡るかは観客の皆さんによって決まるようです!!』



な、なんだ…?よく分からないけど、あの景品がもしかしてもらえるかもしれないのか?



「皆さん!お願いします!!皆さんも彼らの姿を見たでしょう?あの純粋で清らかな二人を!お願いします!!」


そう言って独御さんという人は観客に向けて頭を下げた。


「独御さん。」


「独田さん。止めても無駄ですよ。僕はこの頭を上げる気はありません。」


「独御さん…違います。もう、そんなことしなくてもいいんですよ…。」


「え…?」


観客たちは指で5を示していた。


「み、皆さん……。」


独御さんは感動したのか涙を流していた。



「うむ…。これにて、ボムボム君等身大抱き枕は5番に渡すことに決まりです!!」


うおおおおおお!!!


独神さんという人の言葉と同時に一気に観客が沸き上がった。


『おめでとうございます!!今のお気持ちはどうですか?』


そう言って司会者が僕の前にマイクを持ってきた。


「…えーと、あ、ありがとうございます!」



『これで、第一回ベストカップル決定戦を終わります!!皆さん!次回の開催をお楽しみに!!』



***



僕と佳奈ちゃんは二人で帰り道を歩いていた。


あの後は審査員の独御さんと独田さんという人から話しかけられたり、他の参加者から「応援している。」と激励されたりと大変だった。


結局、何で僕らはあんなに激励されたんだろうか…?


でも、目的のボムボム君を手に入れることが出来たおかげか佳奈ちゃんは嬉しそうだった。


何はともあれ佳奈ちゃんが嬉しそうだからいっか。



「心さん。」


「どうしたの?」


「あの、ありがとうございました。私、ボムボム君欲しさに心さんにキスするところでした…。冷静に考えたら、とんでもないことしようとしてたなって。」


「ああ、それか。気にしないでよ。こんなこと言うのは子供っぽいかも知れないけど、佳奈ちゃんにはファーストキスを大事にして欲しいと思っただけだから。」


「…優しいですね。心さんなら…。」


佳奈ちゃんが話している途中だったが、背後から不穏な気配を感じた僕は立ち止まった。


「ど、どうしたんですか?急に立ち止まって?」



「誰だ?」


「え?」



僕がそう言うと、電柱の後ろからロボットのようなものが出てきて、そのロボットの中から人間の声が聞こえてきた。


『…よく分かったな…。』


「逆に聞くけど、その図体でばれないと思っていたのか?」


実際はほとんど気付いてなかったけど…まあ、こう言った方が格好いい気がするからいっか。


『くくく、確かにな…。』


「お前は誰だ?何が目的で僕らに近づいてきた?」


『僕ら…か…。それは違うな。我々の目的は貴様の隣にいる有本の娘だ。』



有本さんを知っている?こいつら、もしかして…。


「…お前ら、もしかして斉破重工か?」


『…ほう。どこからその情報を手に入れたのか知らないが、それを知っている以上貴様も捕獲対象だな。おっと、抵抗するなんて考えを持つのはやめるんだな。』



そう言って、ロボットがこちらにゆっくりと近づいてくる。


「佳奈ちゃん…ここは僕に任せて逃げて。近くに交番があるはずだから。」


「い、行けません!あのロボットは私を狙っているんですよね…?なら、私が残らないと…。」


佳奈ちゃんはそう言ってその場から動こうとはしなかった。


「行け!約束しただろ、僕の言うことを聞くって。」


僕がそう言うと、佳奈ちゃんは悲しそうな顔をしてから、「…ごめんなさい。」と言ってその場から離れていった。


『くくく、時間でも稼ぐつもりか?』


時間稼ぎ…?


そんなことをするのは弱いキャラのすることだろう?


「違うな…。」


『ほう…?じゃあ、どういうつもりだ?』


「簡単なことだ。佳奈ちゃんがいるとお前を倒せない。それだけのことだ。」


『くくく、はははははは!!!あの女がいなければ俺に勝てると?面白い!やってみるといい!!』



その言葉と同時にロボットがこちらに向かってきた。


ふう…。およそ、2週間ぶりの戦闘か。


まあ、リハビリには丁度いいだろう。


さあ、始めようか!シンの物語の第二章を!!!


遂にベストカップル決定戦終了。長かった……。

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