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幕間Ⅲ (美月視点)

幕間です。

今日はもう1話幕間を投稿しようと思っています。

港に鳴り響く轟音と、シン君からの通信が切れたことから、シン君のことが心配になった私たちはすぐに港に向かった。


「シン君……無事でいて…。」


シン君は強い。


それでも、嫌な予感は拭いきれなかった。


「シン君!!」


シン君は沖の方を呆然と見つめていた。


よく見ると、その姿はボロボロでコートも無くなっていた。


「どうしたの?ここで一体何があったというの?」


私はシン君にそう聞くが、シン君からは曖昧な返事しか返ってこなかった。


そのあと、シン君を自宅に送り届けた後私は家に帰った。


何か、私の知らないところで嫌なことが起きてるような気がして私はその日はよく眠れなかった。


私の嫌な予感が最悪の形で当たってしまったのは次の日、心君が私の家を訪れた時だった。



「美月さん、もうシンとはあまり関わらないでください。」


心君は、シン君の言葉を代弁するかのように私に向けてはっきりとそう言った。



***



私が心君のことを意識しだしたのは、やっぱりあの夜だろう。


心君がシン君として私をリバーシの異能力者から守ってくれた夜。


最初、見たときは冴えない少年だった。


でも、次に見た時の彼の姿はすごく頼もしくて…かっこよかった。


警察署から出た後、心君と話した時、心君は、大切なものを守らなくちゃいけない。そう思ったから、私を助けたと言った。


その時に、私は心君はきっと私のことが好きなんだと思った。


そうでなくては、あの時に無能力者の心君が異能力者に立ち向かうことなんてできない、そう思ったからだ。


思えば、この時から少しずつ心君に惹かれていたのかもしれない。



私が心君を明確に意識しだしたのは、心君を初めて家に読んだ時だった。


演技とはいえ、私を貶すおじいちゃんを心君は私のために殴ろうとしてくれた。


私にとって、それはすごく嬉しくて心君を見ると心が温かくなった。



ただ、私は一つだけ心君に怒ってしまったことがあった。


心君は私にメールを送ると約束したのに一週間以上メールを送ってこなかったのだ。


自分でもよく分からないけど、すごくイライラしてしまって、久々の心君との再会の時でもついつい心君を責めてしまっていた。


そんな時、心君は怒ってる私に一通のメールを送ってきた。




件名:ごめんなさい。


本文:美月さん、メールを送るのを忘れていたこと本当にすいませんでした。


 こんな形で、初めてのメールを送るのもどうかと思ったのですがメールで僕の思いを伝えさせていただきます。


僕は美月さんの笑顔が好きです。


美月さんのおじいさんと話しているときに見せるような自然な笑顔が凄く好きです。


だから、怒らせてしまった僕がこんなことを言うのはおかしいとは思っているのですが、美月さんの本当の笑顔が見たいです。


怒りが収まらないのであれば、僕にできることなら何でもします。


ですから、もう一度僕に美月さんの自然な笑顔を見せてくれませんか?



悔しいけど、好きの二文字を見た瞬間に心君を許す気になってしまった。


私はこんな好きと言われただけで何でも許しちゃうような、チョロい女ではなかったはずなのに…それなのに、どうしようもなく胸がときめいてしまったのだ。


この時、私はようやく自覚した。


心君のことが好きなんだって。


***



だからこそ、シン君を支えるんだと意気込んでいたし、おじいちゃんと同じように私もリバーシと戦うんだって思ってた。


だから、ショックだった。


シン君の私への一言は、異能力者になる前の私におじいちゃんがよく言っていたみたいに「お前じゃ力不足だ。」そう言っているように聞こえたから。


「ど、どうしてかしら…?」


声の震えが止まらない。


「美月さん、僕は無能力者です。だから、きっとこれからの戦いについてはいけない…。悔しいけど、港でリバーシの異能力者と戦った時にそれを痛感しました。ですから、美月さんは僕を気にせずに前へ進んでください。」


違った。


私が力不足なわけではなかった。


心君が自分の無力さを痛感してしまったのだ。


それは、私がずっと目をそらし続けたことでもあったのかもしれない。


心君は強いと、そう思っていたけど…心君はやっぱり無能力者で、異能力者には敵わないのだ。


きっと、心君は港で出会った異能力者と戦って嫌というほどそれを痛感したのだろう。


悲しそうな顔でそう語る心君に、異能力者である私がかけられる言葉なんてなかった。


「それでは、美月さん。今までお世話になりました。また、街中で出会ったら声をかけてもらえると嬉しいです。」


心君はそう言って部屋から出ようとする。


「あっ……。」


待って!


行かないで!力がなくてもいい、私を傍で支えて!


そう言いたかった。


でも、力がなくてもいいなんて言葉、心君に言えるわけなかった。


私は部屋から立ち去る心君の後ろ姿を見つめることしかできなかった。




暫くして、おじいちゃんが私の部屋に入ってきた。


「美月、田中君が貴重な情報をくれた。」


そう言って、おじいちゃんはリバーシが一年後に白銀学園を襲撃しようとしていること、シン君はボロボロになりながらもその情報を入手してくれたということを教えてくれた。


「美月、辛いのは分かる。だが、美月たち異能力者は田中君がつないでくれたバトンを引き継いでいかなくてはならない。」


おじいちゃんは私を鼓舞するようにそう言った。


「儂はこの情報を国に提供し、あることを提案しようと思っとる。」


「提案って?」


「一年間、国中の異能力者を定期的に集め白銀学園で異能力者同士の戦闘を想定した特殊な訓練をしてもらう。それにより、異能力者の実力を向上させていこうというものだ。美月、お前にも金の異能力者としてその訓練に参加してもらう。」


おじいちゃんは私に向けてそう言った。


おじいちゃんはもう前を向いてる……。


「田中君たちを守るためにも美月たちは力を付けなくてはいけない。金の異能力者としてこの日本を守り抜いてみせろ!」



おじいちゃんの言う通りだ…。


私たちで守ってみせる。


そして、平和な世界にするんだ。



そうすれば、もう一度心君と仲良くやっていける。


私は、おじいちゃんの言葉を受けて立ち上がるのだった。



それから、白銀学園で驚く出会いがあるのだけれどそれはまた別の話。




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