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「いいかげんここも飽きたな」
町中の小さなゲームセンターに入り浸るようになって1か月。
俺はそろそろこの店のゲームに飽きてきていた。新しい種類が増えるでもなく、新しい人間が増えるでもない。
そもそもゲーム自体にそこまで興味もなかった。ただ、いつもつるむ2人と他人の目も金も時間も気にせずたむろしていられるのがゲームセンターであったから、このつまらない場所に1か月もの間、足を運んでいた。
「えーゲンちゃん、おれまだこれクリアできてないー!!」
「あー、逆によく今まで飽きなかったな。お前こういうトコ基本興味ねーだろ。」
頭だけでなく性格もふわふわとしたハル。どこかの金持ちの愛人の子だと言って、いつの間にかつるんでいた。
ハルとは逆に頭も顔も性格もクールなソウ。物心ついたころからずっと一緒にいた。
二人ともつるんでいたのがもっとちゃんとした人間だったら、きっともっといい生活を送れていただろう人間。
「そうなの?! え、じゃあなんでいっつも俺らとつるんでんの? ゲンちゃん全然楽しくないじゃん! ダメじゃん! そういうことはもっと早く言ってよ~」
クリアできないといいながら必死に画面を追いかけていたくせに、ソウの一言で俺のほうを振り返ったりするなよ。ゲームオーバーになってるじゃないか。
「いんだよ。どうせ何したって一緒なんだからよ。」
「そーそー。こいつの趣味って小難しい本読んだり手先使ってアクセとか作ることだから。俺ら大好きだからなー。基本一人の趣味の時間より俺らとの時間が大事だもんな」
「ソウ! てめぇテキトーなこと言ってんじゃねぇ!」
画面向いたまましゃべってても、お前の顔がニヤニヤしてるのはわかってるぞ。ハル、お前はびっくりした顔でこっちを見るな、照れる顔がそんなに珍しいか。
「えー! おれらって実はめっちゃ愛されてる?」
「そーだぜー! ゲンちゃんは俺らのことチョー愛しちゃってるのです」
肩も声も震えてんぞ。笑いが全く隠せてねぇぞ。
「じゃぁさじゃぁさ! ソウちゃんとおそろのリングってもしかしてゲンちゃんが作ったの?!」
「あー、だいぶ前にな。俺がデザインしてゲンが作った。」
そういえばそうだったな。いつもつけたままだから改めて意識することもなくなってた。
「えー! ずるいー! おれも欲しい!」
せっかくだから今度は3人で作るのもいい。今度はもっと手の込んだのを作ろう。
「いいぜ。じゃあ俺がデザインしてやるから、ハルが色とか素材とか決めろよ。んでゲンが作る。」
「やった! じゃあ早速やろう! 今すぐやろう! おれんち行こう!」
ソウも同じことを考えたんだな。それにしてもハルははしゃぎすぎだろう。そんなに欲しいのか。
「わぁったわぁった。この対戦終わらせたら行く。2人は先にコンビニ行って買いだし頼むわ。」
「えー待つよ?」
「後ろでソワソワされたら気が散るわ。ゲン、先にこのでかい犬連れて行っといてくれ。」
「わかった。ほら行くぞ」
ハルはそれこそ飼い主に置いて行かれた犬みたいな顔してソウのことを見ていた。