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最後の朝餐。

 目がさめると、すでに日が暮れかかっていた。

 水を飲み、枕もとに置かれていた冷たい塩辛いスープを流し込み、また水を飲んだ。

 油断すると、また瞼が閉じそうだった。

 結局、今日は眠って過ごすことになりそうだ。

 トイレで用を足し、ベッドに戻る。

 他の4人は今頃なにをしているのだろうか。

 そんなことより自分のことを考えなければ。

 魔竜は死なない。

 どういう理屈かはわからないが、ひき肉のようになっても元に戻るらしい。

 私の贈物ギフトの力なら、魔竜の死を願えば魔竜は死ぬだろうが、支払ギフトは私の命になる可能性が高い。

 ダメだ。

 シェスに必ず生きて帰ると約束した。

 自分は死なず、魔竜を倒す方法を考えなければ。

 いや、そもそも魔竜というのは、どうしても倒さなければならないの存在なのだろうか。


 「ロワさん、起きてください。今日こそあの竜を、われわれで成敗しにいきましょう」

 ビッデが部屋に入ってきた気配で瞼をひらく。

 結局、いろいろと考えるうちに目がさえて眠ることができなかったのだ。

 「おはようございます」

 私はあいさつとともに、飛び起きる。

 予想外の反応にビッデは驚いたようだったが、すぐに笑顔になり、食事にしましょうといって部屋をでていった。

 眠れなかったのがバレかな。恥ずかしいな。などとどうでもいいことを考えながら、朝食の用意された食堂へむかう。

 食卓には、すでに4人がそろっており、私が来るのを待っていたようだった。

 私が椅子に座ると、ビッデが音頭を取る。

 「それでは、今日の糧を与えてくださった、ヴィーネ様に祈りを捧げましょう」

 みな、思い思いの形でヴィーネ神へ黙とうをささげる。

 テシカンは目を閉じて軽く頭を下げ、ウゼは手を組んで深くこうべを垂れていた。

 クデンヤは一瞬だけ手をあわせ、私を見てニヤリと笑った。

 私も笑顔を返し、目を閉じて手をあわせて祈る。


 慈悲深きヴィーネ様、なぜ私のような普通のオッサンが世界を救わなければならないのでしょうか。もっと適任な人がいるんじゃないですか。できるかぎりのことはやってみますが、うまくいかなくても私の責任ではないことはわかってください。私が失敗したからといって、シェスにばちを当てるなんてこともやめてください。シェスにはなんの―――。

 「オホン」

 ビッデの咳払いで、私の祈り愚痴いのりはさえぎられる。

 「それではいただきましょう」

 脂たっぷりの腸詰、煮込んだ豆、それに卵の目玉焼き。

 馬車での強行軍により、まだ胃が本調子ではなかったが、大好物の卵とあっては見逃せない。

 卵は高級品であり、なかなか食べられないものなので、焼き立てのパンといっしょにペロリとたいらげてしまった。

 もう少し食べたいところだったが、このあと魔竜と戦うことを思うと、あまり満腹になるのもよくないと考えて食事の量は抑えておく。

 「それでは、今日の戦いでヴィーネ様の加護があることを祈って、乾杯しましょう」

 高級そうな銀のカップが運び込まれ、5人に渡された。

 「我らにヴィーネ様の加護があらんことを!」

 ビッデのかけ声で、全員が銀のカップを高くさし上げた。

 果実酒を水で割り、蜜を混ぜた甘い飲み物は、それだけで力がわきあがるような気がした。

 朝食会が終わり、それぞれ自分に割り振られた部屋に戻り、出発の最後の準備をする。

 他の4人と違い、私は特別な道具を用意しなかった。

 以前は身を守るために大楯を持たされていたが、今回はそれも持っていかないことにした。

 魔竜は火をふくわけでもないようだし、突進されれば大楯程度では身を守れない。

 さあ、世界を救うためにでかけよう。

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