月が大好きな君へ
・・・・・死のう。
そう思った。僕にはもう、この世界で生きる理由が無くなったからだ。僕には元々生きようと思う気持ちは無かった。ずっといじめられて、傷つけられて、・・・・・死にたいと思ったことが何回もあった。でも、ある人が僕を助けてくれて、生きる理由をくれた。嬉しかった。救ってくれて。嬉しかった。生きる理由をくれて。彼女は僕にとって大切な存在だった。彼女がいれば、生きていこうと思えた。なら、なぜ今、僕は死のうと思っているのか。
・・・・・死んだのだ。彼女は。
原因は病死。僕は彼女が病気だったことは知らなかった。ずっと元気で、笑っていた彼女は僕に隠していたのだ。自分が病気だったことを。
生きる理由は無い。もう死のう。
僕はビルの屋上へ行き、靴を脱ぐ。脱いだ靴を揃え、空を見上げる。時刻は午後11時。月が輝いている。
・・・・・そう言えば彼女、月大好きだったな・・・・・僕も大好きだけど。死ぬ前に月が見れてよかった。
そう思い、僕は屋上から飛び降りた。
目の前には、白い天井。
病院の一室で僕は目を覚ました。・・・・・生きている。あの時、死ねなかったのか。
「・・・・・なんでだよ・・・・・」
どうして死なせてくれなかったのだ。僕にはもう生きる理由は無いのだ。生きていても意味は無いのだ。死んでも別にいいだろ。
「・・・・・はぁ」
僕は窓から外を見る。月がのぼっていて、空は暗い。どうやら今は夜のようだ。
ここにいる意味もない。もう僕は死ぬんだ。さっさと死ににいこう。・・・・・今度はちゃんと死ねるかな。
そう思い、立ち上がり、窓の方へ向かおうとしたのだが
「・・・・・なんだこれ」
病室のテーブルに1枚の紙と1通の手紙があった。紙には、一緒にある手紙が、僕宛ての手紙であると書いてあった。
・・・・・一応読んでおくか。読まずに死ぬのは、書いてくれた人に失礼だし。
僕はテーブルにある手紙を手に取り、開いた。手紙には、『月が大好きな君へ』と書いてある。下には・・・・・
「・・・・・嘘」
下には死んだ彼女の名前が書いてあった。
「なんで・・・・・手紙を・・・・・」
僕は手紙を読む。彼女がなぜ、こんな手紙を遺していたのか知りたかったから。そして何より、彼女からの手紙だから・・・・・。
数分が経ち、手紙を読み終える。気付けば僕は涙を流していた。
僕は涙で濡れた目で月を見る。
・・・・・あぁ・・・・・なんで・・・・・君は・・・・・。
そう想った時、月が強く輝いたように感じた。
彼女が遺した手紙にはなんて書いてあったのか。手紙の内容自体は存在しますが、あえて本編に出しません。読んでみて、考えてみて欲しいです。