高速道路と運転とサービスエリアと彼女
高速道路の規則的な振動と、夜闇のオレンジ色の光に惑わされ、皆すっかり寝入っていた。
ちょっと遠出すると、当たり前の状況で、ちゃんと話し相手になると言っていたはずの助手席からも、気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる。
元から期待なんてしてなかったけどさ。
次のサービスエリアで叩き起し、交代してやろうかな、とも考えたけれど、そこまでの距離もない。
まあ、しゃあねぇか。
更にそう考えながら、何か眠気覚ましでも調達しようと本線を外れる。
適当な空きを見つけ、駐車しようと助手席側へ腕を回して後ろを振り向く、と、丁度眠りから覚めたらしい、後部座席に座っていた彼女と目が合った。
焦点の合っていなかった目が、ハッと見開かれる。
売店の光が寝起きには眩し過ぎたのか、少し眉を歪めた。
そんな状態にフッと鼻から抜けるような笑いを漏らし、俺も俺でゆっくりとスペースに車を停める。
ハンドブレーキを掛けながら、周りを起こさないように声を潜め、彼女に「俺、売店寄るけど、飲み物か夜食とか買う?」と問う。
ぱちぱちと目を瞬かせた後、彼女はコクコクと首を縦に振った。
車内から出て、そっと扉を閉めて腕を伸ばすと、背中の辺りで骨が音を立てる。
夜の空気が気持ち良かった。
既に何を食べようか、と悩む彼女を横目で盗み見る。
じゃんけんで見事に一人負けをして運転をさせられ、とんだ災難だと思ったものの、中々に役得だったようだ。
「ソフトクリームとかどうよ」と指差せば、とびきり嬉しそうな笑顔を浮かべた彼女が「うん!」と弾んだ返事を寄越した。