第八話 争奪戦
男の予想通りの展開となった。
一部の参加者がとうとう気付き始めたのだ。アナウンスが終わって数分で。
初めから壊れているキーボード、マウス、そしてPC事態がイカれている場合のものがあるということに。
彼らは他の空席へと移動しようとする。
すると、一部のちゃんと勝負できるだけの席に運よく座っていた参加者が、自身の周りの空席のPCセットを物理的にぶっ壊し始めたのだ。
移動を始めようとした者たちは、それを見て、怒り狂う。
卑怯だぞ、と。
それを見て破壊側、不平言う側にフォロワーが現れ始める。
なら、後はもう簡単に予想できる展開がくり広げられることとなる。喧嘩だ、喧嘩。部屋の色々なものを使っての激しい喧嘩が繰り広げられる。
きっとこの喧嘩は、争いは、運営の次のアナウンス、ちゃんと刻限の時間に戦える条件の席についているかのアナウンスまで続くだろう。
男はそう考えていた。
そして、自身は巻き込まれることはない、と男は判断していた。
というのも、男は端の方の席を選び、近くの空席の机と椅子とPCで自身の周りにバリケードを作りつつ、PCの電源のタコ足配線の根元コンセントが壁にある場所に陣取っていたからだ。
つまり、男は、自身の防衛権と、周囲の者たちの生殺与奪権を持っていたからだ。
男の方まで向かってくる者はいなかった。そして男は、アナウンス直前の、放送直前前の電子機器のノイズ音に反応し、自分のPC以外のコンセントを引き抜いた。
部屋に残っていた約半分の挑戦者はそうして、戦いが始まる前に、消えたのだった。