EXTRA第五話 仕込みは裏設定
※裏話的な説明回です。ですので面倒でしたら読み飛ばしてしまってください(25行下から本文)。
ここから先は推測できない情報である。唯の裏設定か、隠していた事実の暴露とでも思って頂きたい。
第二十四回『24時間耐久バイト』。それが行われた目的というのは、高い賃金を払ってバイトさせることでも、何か面倒な学術実験に参加させる訳でもなかった。
お嬢様のたちの悪い唯の戯れと考えるのは無理がある。(お嬢様が味わうこととなった羞恥を除いたとしても)支払ったものが大き過ぎる。
万単位の正規の職に就いていない者たちの中から、ただ一人の優れし者を選び出すこと。ピエロがいなかったらそれを答えとしても良かっただろう。だが、違うのだ。選んだのは二人。それも一人は仕込み。
つまり、本来の目的は、ピエロ自体にあるということだ。
ピエロに万単位の参加者の中から、これは、と思う者を選ばせ、ピエロが選んだ選別者が、ピエロの選別眼通り、突き抜けた知と暴を持っているか調べる。
つまり、ピエロのパートナーを探す為。
今回の場合、それがほぼ、答えだ。
だが、そもそも、ピエロのパートナー。そんなものがどうして必要なのだろう。運営側の人材であるピエロ。運営の中での名は、クラウン。宮廷道化師という意味の言葉である。
他の運営の者たちとは違い、ピエロとあと、ここにいるもう一人の運営側の人間、ガードマン。彼も、運営の中での名、鉄壁、というのを持ち、事情を知っている。
それがほぼそのまま答え。二人は幹部。側近なのだ。
お嬢様は、こんなではあるが、非凡なビジネスの才能があった。24時間耐久バイトなんてものを用意し、その裏側で毎回、企業側から、人を集めにくい、形にしにくい依頼というのを果たしつつ、回を重ねるごとに人がより簡単に集まる仕組みを作り上げたのだから。
それは全て、彼女一人の頭脳によるもの。
彼女は異才であった。だが、浮世離れしているせいで将軍・指導者的能力はあっても、下士官的。実働部隊的能力は無い。だから彼女は、側近というか、幹部というか。そういった立場として使える者たちを保持しているのだ。
今回のお話では、彼女が生まれつき元から持っていた人脈の中から選んだ幹部しか出てこないが、24時間バイトの挑戦者の中から引っ張り上げた幹部も存在する。
彼女はこんな性格ではあるが、評価は公正であり、その根は善性であった。
それに加え、自分の役に立つ者、そういった者に対して、ちゃんと褒美を与えるたちであった。いや、与えないと彼女自身がもやもやして、何か嫌だ、というのが実際のところではあるが。
彼女は鉄壁も、クラウンも、優れた人材であると認めている。そして、自分の為に色々やってくれていると。
それが今回の騒動に繋がる訳だ。
彼女は、何故か自身に羞恥を与えることに相乗りしてきた鉄壁をあっさり許している。その主犯の一人であるクラウンもあっさり許している。
彼女は権力者だ。そして二人の雇い主だ。だから彼女は二人を何とでもできる。でも彼女はそうしなかった。
彼女は今回の企みにおいて、二人に対して、何か良いものを、お礼といえるものを返したかったのだ。
鉄壁に対して、男という強敵を宛がうという、これまでの貢献に対するお礼を彼女はした。
クラウンに対しては、その欠点である臆病なたち、自身の選択への自信の無さ。つまり、自己への過小評価。それを改めさせてやろうとしたのだ。
で、今回こんな形になったのは、クラウンにそれをさせるのは非常に難しいと彼女は分かっていたからだ。鉄壁は、名のある格闘家でも招聘して対決させてやればそれであっさり済んだのだから別にどうとでもなった。
クラウンの、自己への過小評価。それは、彼がこれまでに積み重ねてきた過去の問題。それを変えることは、彼が彼の持つ素晴らしい何かを崩すことになるのではないかと彼女は思い至っており、直接的な方法で彼のその欠点を直すことはできないと結論を出した。
彼に自信を持たせる。彼自身一人だけではそれは無理。彼女の今持つどの人材を使ってもそれは無理。
なら、第三者に自身を持たせて貰えばいい。だが、その第三者がいなくなるだけで崩れる自信であってはならない。
他者によって、クラウンが矮小な存在ではないと証明され、クラウンがそれを受け入れる。そういう形で解決するのは間違いなかった。それでいて、その他者がいなくなっても大丈夫でなくてはならない。
なら、答えは一つ。経験。経験だ。その他者とクラウンが共に経験し、何か成果を出させればいい。それは、他者だけで何とかできることであってはならない。クラウンだけで何とかできることにはまあならない。二人が共に頑張って、やり遂げられれば、残る! 記憶として。クラウンのマイナスの過去の上に大きな大きなプラスを置くのだ。それできっと、クラウンはそれを根拠として、自分に自身を持てるようになる。
それがどれだけかは分からない。だが、クラウンが持つ才能を潰すことなく、クラウンが良い方向に変わっていけるきっかけくらいにはなる。
こんな一方的な形での種明かし。それもこんな長文でぐだぐだ説明され続けるのもそろそろ嫌になってきた頃合いだろう。
なので、続きは、お嬢様がクラウンを第二十四回『24時間耐久バイト』に混ぜ込む際の場面を提示することで伝えるとしよう。




