第二十一話 リミット12 無人ビル第三層
タッタッタッタッ!
二人は駆ける。長い廊下を。幾つもの同じような部屋が左右に存在している。最初の段階の参加者の人数からしてこの階層だけに留まらないことは明らかだろう。
つまり、探索範囲は非常に広い。
明かりが付けられている為、二人は廊下を走って移動することも、周囲の部屋の調査も、できないなんてことはなかった。
その悉くは空振りであったが。
「いないな」
「旦那ぁ、こっちもいません」
「一旦止まろう。どうやらこの階にいることは無さそうだ。階段のプレートで確認したが、ここは第三層。それで合っているな?」
「えぇ、旦那ぁ。それで間違いないっすよ」
二人とも息は全く上がっていない。ピエロもそれなりに体力がある方だったのだ。
「お前の見立てを聞きたい。俺は他の部屋を見たのはつい今しがた、他の階なんて全く見ていない。だが、恐らくお前は違うだろう? 俺のような奴を見つけてきたんだ。間違いなく、参加者として移動できるこの建物の範囲はほぼ全て網羅している筈だ。それと同時に、その時は通せんぼされていた場所も覚えているだろう?」
「ええ。全部説明しあしょうか?」
「時間がない。それを聞いているだけで時間が来てしまうだろうが。ほら。もう残り6分30秒しかない。俺の時計はまともだ。一応秒カウント取ってずれが生じないかはずっと見て居たから、まあ大丈夫だろう。だからこの残り時間はほぼ確実。もう時間が無いんだ。回れる場所も限られている。お前が絞れ。回る箇所を。怪しかった場所、そうだなぁ、やけにスタッフの数が多かったり、逆に少なかったり、空間の彩色や調度品の感じが変化した場所。そういったものはあったか?」
「あぁああ!」
「あるんだな。それもその感じだと、お前はそれが十中八九答えだと確信している」
「ですが、旦那ぁ、あっしに任せて大丈夫なんですかい? あっしなんかに。あっしは劣っている。駄目なんですよ、あっしは……」
「弱気になったら、あっしになるのか、俺じゃなく。自身を持て、お前はそんなへりくだった言い方せんでいい。お前はピエロだ。それも、俺を上手くのせた、な。サーカス団のピエロとは訳が違う。お前は、ほら、中世の宮廷にいる類のピエロだ。王様手玉にとる類のな。俺が保障しよう。お前ならできる。だから、俺をあの生意気なお嬢ちゃんの元へ連れてけ。別に失敗したらしたらで構わん。まあ、俺はお前が失敗するとは思ってないが」
「だ、旦那ぁ、あ、あっし、いや、俺は! はは、もう大丈夫ですわい。知ってあすか、旦那ぁ、莫迦は高いところがお好き。ここより下にいるなんてこと、あの偉そうな女に限ってあると思いますか? あれは趣味、見下すこと。それも無意識。なら、絶対上ですぜ。それも高ければ高いほどいい。でも、屋上なんてオチはない。そこに行くのは逃げるときだけっしょ? エレベーターなんてもんは使えない。階段で行くべきっしょ。それで到達できる最も高い階層。第七層。そこでしょう、きっと。第七層への階段、途中から赤絨毯引いてあって、立ち入り禁止っぽく、なんかやけに高そうな服来た黒服のガードマンっぽい奴ら、そういやいましたから」
「ふはははは。よし、行くぞ、ピエロぉぉぉおおお! お前が先導しろっ! もし七層への階段について邪魔な奴がいたなら、俺が道を開こう」




