第十九話 主催者は煽る
「あらら。はぁ……。どうして貴方方は、言われた通り、素直に座っているのでしょうか。ばれないようにスタッフを追跡するとかやってみようと思わないのですか? いい子ちゃんでは、金は、得られませんよ。私を見つけられませんよ」
二人はあっけにとられていた。そんなことを言われても、とでも言いたげに、互いの顔を見合って、ぼけっとしている。
「はぁ……。駄目駄目ですね。いいですか? かくれんぼはスタッフが部屋から出た瞬間から始まっていたのですよ。残り時間を見てみなさい。あと15分。半分なのですよ。わざわざ、持ち時間は30分、とヒントをあげたというのに。ほら、早く立ち上がるのです。そうしないと、貴方方は、額面のバイト代すら受け取れませんのよ! あんだけ苦労して、何も得られず、参加者の中で最も惨めな敗北者になるんですのよ!」
二人は、互いの顔を見合って、そんなことを言われても、という風に困惑している。それは極当然のことだ。
スピーカー越しのその存在の言い分は余りに勝手で一方的で、これでは到底、ゲームとして成立しない。金を掛けたゲームとして。
「そんなだから、貴方方は、そんなに高い能力を持っているというのに、貴方方の人生は低層に燻っているのですよ。割に合わない、ドブさらいのような仕事しかありつけていないのですよ。そうして、貧困でいるので――……」
バン! バキキキキキ、ガラララララ……。
突如響いた、机が砕ける音。それによって、主催者の説教は途切れる。
それをやったのは、当然、男だった。ピエロではない。ピエロは横で、ただびっくりしているだけだ。
「ふっ、やはり、か。これ、双方向スピーカーかそれに類するものだろう? 誰か知らんが、そこの偉そうなあんた。俺たちを舐め腐るのはもう止めろ。そこまで言われる筋合いはない。確かに、俺に関してはそうだ。あんたの言う通りだ。だが、隣のこのピエロ野郎までそうだとは限らんだろう。ほら、ピエロ。お前も何か言ってやれ」
「そう言われあしても、旦那ぁ……。そうですねぇ。とりあえず、旦那ぁ。ありがとうごあじあす。俺なんかのことをかばってくれて」
「いや、お前さ、貧乏ゆすり凄かったじゃないの。机の下で。我慢してたんだろ、このアナウンス越しの奴の一方的な言いようによぉ。それに、俺は本来、ここが暗室であった段階で脱落している筈だった。俺から誰かを引き入れて徒党を作るのはあの状況では到底無理だった。俺は一人で何でも何とかしようとしてしまう。お前があのとき声を掛けてくれたから俺はここまで残れた。だからお前はいい奴だ。そんなお前を莫迦にするこいつの発言はもう黙って聞いていられる段階を過ぎた。ただそんだけさ」




