第十六話 額面通りのバイト
それからは、急に、これまでのおかしな流れは途切れるかのように、チラシに書かれていた通りのバイト内容へと変わる。
男とピエロは、車に乗せられ、今度は目隠しもされず、最初の場所、デスクトップPCがあった暗室に連れてこられた。
カチリ!
そうして電気が付けられる。
多くのスタッフが後片付けをしている。その中で、二人は、チラシの通りのバイト、寝ずにずっと入力バイトをやることとなった。
もう変なギミックは一切ない。
唯、黙々と二人は作業を続ける。どちらかが眠たそうな感じになったら、互いに起こしあったり、エナジードリンクを分け合ったり、食料を分け合ったりして。
普通の時間が続く。まるでそれまでの出来事が嘘だったかのように。意味の無かったものであったかのように。
バイト単価が高い上、希望者が殺到し過ぎたから数を減らすことになったのだと、二人はスタッフから説明を受けていたのもあり、気楽な気持ちでバイトに臨んでいた。
そうして、残り時間が一時間になった頃、男がピエロに向かって口を開く。
「なぁ、ちょっといいか?」
ほぼ全てのスタッフが撤収し、片づけが終わり、もうだいぶ前に日が昇ってきて、時計は正午。だというのに、男の顔は酷く真剣で、思い悩んだ感じのものだった。
「どうしあした? 旦那ぁ。また眠気やばくなってきあしたかい?」
「違う」
「じゃあ何ですかぃ?」
ピエロの返事は男のものと異なり、軽いものだった。この状況を完全に楽観視しているのだから。
「このままあっさり終わるなんて、俺には思えん」
男はキーボードを打ちながら、そう言った。ピエロの手が一瞬止まる。男の言葉が妙に引っ掛かったから。
そして、当然、
ぴぃぃぃぃぃいいいいいい!
二人のPCの画面が、同時にフリーズした。
「えっ、えっ、えっ、えっ……!」
狼狽するピエロに向かって、男が言う。
「落ち着け、ほら、アナウンスが、来るぞ」
ガァ、ガァ、ピィィィィ!




