第十話 徒党
「なぁ、あんた。俺と組まないか?」
そう言ったのは主人公たる男ではない。男はまさかの、誘いを受けたのだ。話しかけられたのだ。それは、部屋の外から来た、ピエロのような恰好をした、ふざけた青年だった。
「……。理由を聞かせてくれ。それに依る」
「当然だよなぁ。はは。あんたさぁ、すんげえ話題になってんぜぇ」
ピエロは男にそう、真面目に言っているのかふざけているのか分からないような口調で、言葉を紡ぐ。
「というと?」
男は面倒そうにそう尋ねた。きっとこいつは莫迦なのだ、と。情報だけ絞り出して、後は気晴らしにのすことにでもしようと男は心中で決めていた。
「あんたは、賢い。そして、一騎当千の暴を持っている。勝つべくして勝つ奴だ。コンセントぶち抜きで大量失格者、あんたが出したって、外でうるせぇ負け犬らが話してたぜ。だからあんたは警戒されている。今はこの部屋、あんたと俺だけだ。この部屋で今のところまだ脱落してない奴らは、どうやら徒党を組んだらしいぜ。あんたをハブってさぁ」
「面白いことを言うな、ピエロ」
「名前も聞かず、それかい? 旦那ぁ」
「別に構わないだろう。名など別に意味無いだろう。呼び名だけあれば十分。なぁ、ピエロ。組もうじゃないか」
「ははは。やっと殺気が消えたなぁ、旦那ぁ。なら、作戦会議といこう。戻ってくる奴らをどうやって仕留めるか、なぁ」
片目を大きく開けて道化のように嗤うピエロのその言葉に対し、男は唯、頷いた。えげつない巌のような険しく筋立った笑顔を浮かべて。
「だ、旦那ぁ、こんなん、アリなんですかい? あんたはもうちょい脳筋だと俺ぁ、思ってたよ」
ピエロが驚くのも当然のことだった。男が提案し、取った作戦は、非常にスマートで知的で、無駄のないものだったからだ。
「これが一番手っ取り早い。そして、気付かれても問題ない手口だろう? なぁ」
PCには一切のアカウントロックが掛かっていなかったこと、全PCにネットが繋がっていたことを利用し、男は自身のものを除く全PCにおいて、ウイルスを流し込んだのだ。
「確かにそうですが、それって、ある意味、旦那のストックが無くなったってことでもある訳でしょう?」
「いや、違う。お前の話を聞いて、大体想像がついた。ここと同じような部屋があるんだろう、大量に? で、どれもシステムは同じ。だから幾らでもストックはある。で、結局、どれを使おうが問題ないだろう。主催者たちが見たいのは恐らく、何でもありの泥沼ゲーム。なら、色々無茶がやりやすい方向にルールは設定されているということは容易に分かる」
「まあ、分かりあしたが、それで旦那ぁ、これじゃあ、旦那が犯人だとばれ、面倒ですぜぇ」
「ばれはしない。こうすればいいだけの話だ」
男は自身のPCのモニターの線をブチチィィイ! 引き千切った。
「更に、こうして、こうする」
引き続き、自身のマウスを粉々にし、自身のキーボードをたたき割った。
「こうしておけば、俺が一番ひどい目に合っているように見える。それに加え、これは、俺の分のPCの自衛でもある。ああ、ついでだから、PCの画面に罅を入れておくとしよう。そうすれば、PCモニターを奪われる心配も消える」
バキバキバキぃぃ!
「あんたすげぇよ、やっぱり! で、頼みがあるんだけどさぁ」
「いいぞ。お前のとこで同じことやればいいんだろう?」




