7話
3日ぶりの投稿。
用事やテスト勉強で遅れました。すみません。
new life onlineから現実に戻ってきた俺はヘッドギアを外してベッドから降りて、腕を回し、肩をほぐして最後に「う~ん」っと言いながら伸びをした。
「のど渇いた」
水を飲むために一階に降りた俺はリビングに行き冷蔵庫を開けてミネラルウォーターをコップに注ぎ、一気に飲み干す。
「ふぅー」
水を飲み干した俺は一息付いてリビングに行きソファーに座ってテレビをなんとなく付けて見た。
『続きまして、次のニュースです。昨日午後四時ごろ、××県◯◯市で刃物を持った不振人物が電柱に向かって「金をこれに積めろ」と叫んでいる姿を近くに住んでいた住民が目撃したと言う情報が入りました。その後、その男性は目撃者が通報したと言うことに気が付き民家の屋根を伝い走って逃げていったとの事です。』
いや、この人は何がしたかったの?銀行強盗の練習か?
しかも◯◯市って俺の住んでいる所だし…俺の地元には変なやつしか居ないのか。
「あ、昨日私が見たことがニュースに出てる」
俺の座っている後ろから母さんの声がして俺は振り向いた。
母さんは買い物から帰って来たところなのか、食材の入ったデパートの袋を両手に持って立っていた。
「昨日見たこと?」
「うん。昨日少し暇だったから公園の近くを散歩していたんだけど、そのときにナイフを持ったマスクとサングラスをして上下黒いジャージをきた人が電柱に向かって「金をこれに積めろ」ってナイフを持っていない方の手を付き出してたの、それで私は可愛そうな物を見る目でその人を見ながら警察に通報したの。そしたらその人は私の方をすごい勢いで見てきて、慌てて塀を上り屋根に上り、走って逃げていったの」
俺は顔がひきつるのが自分でも分かる。
母さんがその目撃者かよ!ビックリしすぎて何も言えないわ。
言葉を失って唖然としたまま固まったオレを見ていた母さんは不思議そうに首を傾げてから何も言わずにキッチンに行き買ってきた食材を冷蔵庫に入れていった。
冷蔵庫に食材を入れ終えた母さんはリビングに戻ってきて俺の座っている横に座った。
俺はその頃には我に帰っていて、ため息を付いてから再びテレビを見ていた。
「そう言えばもうゲームはやめたの?」
「いや、ちょっと休憩中」
「そうなんだ」
俺は母さんの質問にテレビを見たまま答えた。
少しの間母さんと一緒にテレビを見ていた俺は部屋に戻ろうかと立ち上がろうとしたが母さんが俺の肩にもたれ掛かって来て、「スー、スー」と規則正しい寝息を立てていた。
家事とかいろいろして疲れていたのだろう。
俺は立ち上がるのをやめて少しの間母さんに肩を貸すことにした。心の中で「お疲れさま。ありがとう」と言って。
少しの間、俺はリビングで穏やかな時間を過ごした。
一時間たった頃だろうか。母さんが「うん…」と言いながら目をゆっくりと開けていった。
その後、母さんは寝ぼけているのか少しの間周りをキョロキョロと見渡して俺の存在に気が付いたのか、少し俺に顔を近付けてからふんわりと微笑んで、
「おはよう、兄さん」
と、言ってきた。
母さん…まだ寝ぼけているのかな?俺は父さんじゃないし、あなたの息子だ。
あと、顔が近い。
なんか俺って、今日は人の顔が近い事が多いな。
「母さん、おはよう。それと顔が少し近いし、俺は父さんじゃない」
「…っ!」
意識がちゃんとしたのか、俺との顔が近いことに気がつき顔を真っ赤にしながら直ぐに離れた。
離れた母さんは顔を手で覆って俯いていた。
「大丈夫だ、母さん。俺は何も聞いていないし、見ていないから」
「待って冬冴!違うの!」
「大丈夫。ちゃんとわかっているから」
「分かってないよ!だって冬冴の私を見る目が幼子を見守るような目だよ!」
俺は穏やかな顔をして母さんを見ていた。
母さんと父さんは幼馴染みで父さんの方が歳上で母さんがもの心つく頃から良く遊び相手をしていて、母さんは父さんのことを本当の兄だと中学3年生になるまでずっと思っていたらしい。
そして、母さんが中学3年生の夏の頃、母さんは父さんは自分の兄ではなく幼馴染みだったと自分の勘違いと知り、顔を真っ赤にして、部屋に籠ったらしい。
因みに何で知ったかと言うと母さんが「兄さん、何で一緒の家に住んで居ないの?」と父さんに聞き、父さんが「だって、家が違うし」と言ったことからとか。
普通は直ぐに気が付くのだが母さんは気が付かなかったらしい。
「じゃあ、母さん。俺は部屋に戻るから」
「だから冬冴待って!母さんの話を聞いて!」
未だに騒ぐ母さんを軽くスルーして二階に上がる。それと同時に夕食時に母さんの機嫌をどうやって戻すかを考える。
経験上、母さんが絶対に拗ねているのが分かっているから。
だったらスルーしなければいいと思うがそれも駄目だ。
何故なら顔を赤くして必死になって「誤解だよ!」と言っている母さんを見ていると思わず笑ってしまい、母さんが拗ねてそのまま三時間の説教コースだからだ。
だからここは一端引いて後に回した方が良い。まぁ、拗ねられるのは変わり無いのだが、説教されるかされないかの違いだ。
部屋に入るときに「冬冴のバカぁぁぁっ!」と言っているのが聞こえたが気にしない。
部屋に入った俺はベッドに寝転がりヘッドギアを付けて目を閉じた。
次の瞬間、俺の意識が暗転した。
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俺はユウフスベルの噴水の前に立っていた。
なるほど。街の中でログアウトしたら次にログインした時はこの噴水の前に出るのだろう。
俺はアルトに教えて貰った店に行く。調合キットを買うために。
今更だがnew life onlineのお金の単位はリルだ。
そして最初に貰えるのは1500Lだ。調合キットがどれくらいするのか分からないが、多分足りるだろう。
歩くこと10分…やっと目的の店に着いた。
その店の名前は『チャーリーのアトリエ』だ。
…アトリエって錬金術師のイメージが強いんだが、それって俺の偏見だろうか?
それとも俺だけだろうか?
それと、何でこの店はこんなに…アレなんだ?ほんとにやっているのか疑わしいんだが。
アレの意味はここではこの店の名誉の為に言わない。ただ頭文字にボが付く三文字の言葉だ。
入るの止めようかと考えたが、それを頑張って押し込み意を決して扉をノックした。
“合言葉は?”
は?合言葉?
店の中からくぐもった少し渋い男性の声が聞こえてきた。
と言うか、合言葉何て知らねぇよ。どうすればいいんだ?
さんざん悩んだ末、俺の出した答えは…
「そんなの知らん。取り敢えず調合キット売ってくれないか?」
自分の要望だけを突きつけた。
“合言葉に答えずに自分の要望だけを言うとはどんな神経しているんだ……くくく、だが面白い。いいだろう、俺の出した課題にクリアしたなら良い調合キットをやろう”
俺の答えを聞いたこの人は含み笑いのような物をあげて、俺に課題をやるっと言った。
それと同時に俺の所にクエストが来た。
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クエスト
《俺の課題をクリアしてみな》
俺の出した課題にクリアすることができたなら中級調合キットをやろう。
出来るものならやってみな。
クリア条件 ハイポーション五個、ポーション10個の納品。
失敗条件 タイムアップのみ。
クエスト達成報酬 中級調合キット
※期日は4日です。それまでに納品しないとクエスト失敗となります。
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俺はそれを見て少しだけ笑った。
「いいだろう。受けて立つ」
「そうこないとな」
「だが、1つだけいいか?」
「何だ?」
「調合キット貸してくれないか?持っていないんだ」
店の中から人が転ける音が聞こえた。大丈夫だろうか?
まぁ、俺が悪いんだけどな。